【特集】健康寿命の延伸は国策の一つ、「ヘルスケア関連株」春風に舞う6銘柄 <株探トップ特集>
少子高齢化社会が進むなか、ヘルスケア分野への人々の関心も年々高まっている。「健康」の担い手となる銘柄群に改めて注目したい。
―日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」が話題、躍進続く「chocoZAP」にも注目―
足もとで小林製薬 <4967> [東証P]に絡んで「紅麹(べにこうじ)」に関する報道が盛んだ。想定していない成分が含まれている可能性がある商品の製造番号を公表し、同社が自主回収を進めているが、食品に限らず、あらゆる領域で今や「安心と安全」に対する企業側の取り組みが欠かせないことを改めて痛感させられる。それでも我々人間は「健康」を希求してやまない。拡大が続くヘルスケア市場における有望株にスポットライトを当てた。
●脂肪の約25%を体外に排出する「アライ」
3月4日は「世界肥満デー(World Obesity Day)」だった。そんなタイミングで、日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」が4月に大正製薬から発売されるという発表が耳目を驚かせた。体内に入った脂肪は、すい臓から分泌される脂肪分解酵素によって「脂肪酸」と「グリセロール」に加水分解(消化)され、小腸に吸収されることで肥満へとつながるのだが、今回発売される「アライ」は、有効成分「オルリスタット」が脂肪の体内分解を防ぎ、食べた脂肪の約25%を体外に排出することが期待できるという。
臨床試験のデータは公式サイトで公開されているが、端的にまとめれば、1年間服用すると内臓脂肪面積が約20%減、腹囲については約5センチメートル減という効果が得られたという。ただし、情報解禁当初からSNSなどでも話題になっていた通り、油状の便が出るなど、服用に当たっては条件や注意点もある。これについては、しっかりと会社側も情報を掲載しているが、購入条件の一つには「生活習慣改善の取り組み(食事・運動)を行っている」ことが挙げられている。単なる痩せ薬とは、根本的に立ち位置が異なる点は理解しておく必要がある。
サプリメントなどを通じて健康をサポートする動き自体は昔からあったビジネスだが、今回の「アライ」は、ただ摂取するだけでなく、我々の生活習慣(食事・運動)自体の改善を促し、相乗効果的に身体の状態も変化させていくものだ。その意味で、健康に関するアプローチが今後更に深化していくことになる一つの契機ともなり得る。現代人の健康に対する意識の高まりは、約1年半という短期間で会員数100万人を突破したRIZAPグループ <2928> [札証A]が運営するコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」の躍進からも見て取れる。
●ヘルスケア・介護市場77兆円の時代へ
「健康」という概念は私たち一人ひとりが意識しているだけでなく、我々を包摂している「国家」も強く関心を持っている領域である。安定した経済活動の持続はもちろん、医療を含めた社会保障関連のコスト抑制という意味でも重要視されるのは当然と言えば当然である。特に、日本は少子高齢化社会に突入して久しい。海外では甘味飲料に「ソーダ税」を課すことで、健康を政策的に実現させるといった取り組みも話題になったことがあるが、さすがに今の日本ではそこまで狙い撃ち的に踏み込む政策的な動きは難しいものの、経済産業省がまとめたアクションプランでは、「健康寿命を2040年に75歳以上に」「公的保険外のヘルスケア・介護に係る国内市場を2050年に77兆円に」といった目標が明確に掲げられている。
スマートフォン、スマートウォッチ、スマートリングなど、さまざまな健康・医療などに関するデータ「PHR(Personal Health Record)」を集めることができる媒体も浸透し、そうした情報を活用したサービスも数多く昨今は登場している。投資テーマとして中長期的に色褪せることのない「ヘルスケア」には足もとで関心が一段と高まっていることは確かだ。今回のトップ特集では同分野の有望株に焦点を当てた。ヘルスケア市場自体は非常に広範にわたる。トレーニングに関連するサービスのほか、身体的・精神的に支援するサービス、健康食品、健康状態を細かく可視化できるギアなどを手掛けている銘柄などにも注目だ。
●ヘルスケア分野で存在感高める6銘柄
◆RIZAPグループ <2928> [札証A]~地方自治体との連携により、遊休施設などの余剰スペースを活用した「官民連携コンビニジム」としてのchocoZAPの出店を積極推進。chocoZAPはDXを活用した無人運営によるローコストオペレーションの健康増進施設として、持続的な運営が可能なビジネスモデルを実現、地域住民の運動習慣の定着のほか、地域コミュニティーの創造にもつながることが期待される。
◆カーブスホールディングス <7085> [東証P]~「女性だけの30分フィットネス カーブス」を全国で運営。40~70代を中心に約80万人(23年11月末現在)の女性会員が利用している。また、同社は「地域密着の健康インフラ」を目指し、ビジネスを通じた地域社会への貢献のみならず、地方行政の健康づくり政策の支援、地域医療機関との連携を通じた医療課題解決への支援など地域の健康課題解決の支援活動を行っている。
◆メンタルヘルステクノロジーズ <9218> [東証G]~「中期的な社員の心身の健康」を保つために打つ施策を「健康経営」と定義しており、「社員の心の健康」に関するメンタルヘルスケアサービスをクラウドで提供。保健師クラウドでは、産業医と連携しながらメンタルヘルスの予防やケアを行うほか、不調を感じる社員への一次面談の実施、休職者の復帰支援の実施や休職中の従業員へのフォローなどに対応する。
◆アドバンテッジリスクマネジメント <8769> [東証S]~従業員のウェルビーイング実現(身体的、精神的、社会的に満たされた状態)を支援し、企業価値の向上につなげるサービスを提供。また、睡眠問題解消アプリ「アドバンテッジ スリープ」は、睡眠障害向け認知行動療法を用いた科学的根拠に基づいたアプリであり、テスト版では高い改善効果とプログラム継続率がみられた。
◆新日本製薬 <4931> [東証P]~スキンケア化粧品及び健康食品・医薬品などの販売を展開する。健康食品では、肥満気味で体脂肪・内臓脂肪・血中中性脂肪、高血圧に働きかける「Wの健康青汁」、植物性の大豆タンパクを使用し、マルチビタミン、鉄、亜鉛、カルシウム、食物繊維、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンを配合した「カラダささえるタンパク」などを手掛けている。
◆JMDC <4483> [東証P]~日本最大規模の医療データベースを有する。また、ウェアラブルデバイス「Fitbit」の法人向け正規販売代理店である。Fitbitは歩数、睡眠、消費カロリー、心拍、ストレス指数を含むバイタルデータをトラッキングすることで従業員の健康維持・増進ができるデバイス。Fitbitで集計した活動データを健康保険組合に提供しているPHRサービス「Pep Up」で紐づけることができる。
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