SBSHD Research Memo(4):物流事業は減収減益となるも、施設売却により不動産事業は増収増益に
■SBSホールディングス<2384>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) 物流事業
物流事業の売上高は前期比5.7%減の408,684百万円、営業利益は同25.4%減の11,501百万円となった。売上高の増減要因を見ると、国内物流の物量増加や新規顧客獲得などで1,314百万円、国内物流の料金適正化で1,510百万円、為替の円安効果で2,138百万円の増収要因となった一方で、海外物流の運賃下落及び物量減で29,572百万円の減収要因となった。海外物流については、2020年初から2022年前半まで5倍以上に急騰していたコンテナ海上運賃が世界景気の減速もあって急低下したことや、物量についても半導体や家電製品、事務機などを中心に低迷したことが影響し、同35%減の562億円となった。海上コンテナ運賃の参考指標として、横浜-ロサンゼルス航路の運賃(40フィートコンテナ)※は期中平均で同72%減の2,839米ドルとなり、2023年12月は2,230米ドルと2020年前半の水準まで低下した。期初計画では海外物流だけで200億円程度の減収を見込んでいたが、運賃下落と物量減により計画を上回る減収となった。そのほか、同社が注力分野と位置付けている3PL事業の売上高は同2%減の2,234億円、EC物流の売上高は同3%増の672億円となった。
※(公財)日本海事センターの発表資料。
一方、営業利益の増減要因を見ると、前期に計上した一過性費用(本社移転及び制服刷新費用)がなくなったことで632百万円、為替変動で89百万円、その他コスト圧縮で358百万円の増益要因となったが、国内物流の新拠点立ち上げコスト増などで2,800百万円、海外物流運賃下落及び物量減で2,006百万円、光熱費の上昇で195百万円の減益要因となった。国内物流の新拠点としては、2023年2月に「東北低温DC」(宮城県、SBSフレック)、同年3月に丸岡営業所(福井県、SBSリコーロジスティクス)、同年4月に「物流センター一宮」(愛知県、SBSリコーロジスティクス)、「大阪住之江物流センター」(大阪府、SBS東芝ロジスティクス)、同年10月に柏崎倉庫(新潟県、SBS東芝ロジスティクス)をオープンするなど前期よりも新設拠点が増えたこともあり、立ち上げに伴う人件費や広告費などが増加した。
主要グループ会社別の業績動向について見ると、SBS東芝ロジスティクスグループは海上運賃の下落や半導体・家電製品の物量減が響いて、売上高で前期比10.9%減の115,140百万円、営業利益で同43.3%減の4,347百万円となった。なお、2020年11月にグループ入りして以降、取り組んできたPMI※については、本社機能の移転や情報システムの統合など完了し、今後は事業拡大に向けた新規顧客獲得のための専門チームの強化や全国に点在する物流拠点の更新投資並びに新設などを進めていくことになる。
※M&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスのこと。基幹システムの入れ替えなども含む。
SBSリコーロジスティクスグループについても海上運賃の下落や物量減の影響により、売上高で同8.9%減の101,311百万円、営業利益で同14.6%減の3,496百万円となった。ただ、国内物流に関しては新設した「物流センター一宮」(運営面積1.74万坪)がフル稼働するなど新規および既存顧客の拡大により堅調に推移した。同センターではグループ最大規模となる176台の棚搬送ロボットを導入・運用しており、省人化に寄与している。
SBSロジコムグループは新規顧客の獲得が順調に進んだことで、売上高は同3.2%増の71,017百万円となったが、賃料収入の減少により営業利益は同3.0%減の5,347百万円となった。そのほか、SBSフレックは食品物流が堅調に推移したほか、2022年12月期は「阿見第二物流センター」(茨城県、5,300坪)の全焼火災で収益が悪化していた反動もあって増収増益となった。なお、「阿見第二物流センター」に隣接していた「阿見物流センター」(3,000坪)についても現在はまだ休業中で、再開に向けた準備を進めている段階にある。SBS即配サポートは主力顧客の大手EC事業者だけでなく新規顧客の獲得が進んだことで売上高は増収となったものの、コスト増により利益は微減益となった。SBSゼンツウについては生協向け物流が堅調に推移し、若干の増収増益となった。
(2) 不動産事業
不動産事業の売上高は前期比3.5%増の13,899百万円、営業利益は同26.7%増の7,962百万円となった。第1四半期に「横浜金沢物流センター」(神奈川県)、「東扇島倉庫」(神奈川県)の2件の流動化を実施し、合計約69億円の売却益を計上し、開発事業の売上高が同232百万円増、営業利益が同1,538百万円増となった。一方、賃貸事業についても賃貸施設の稼働率が高水準で推移したことにより、売上高で同243百万円増、営業利益で同141百万円増となった。
(3) その他事業
その他事業の売上高は前期比6.5%増の9,328百万円、営業利益は同10.7%減の359百万円となった。売上高は人材、マーケティング、環境事業でそれぞれ増収となったが、利益面では人材及びマーケティング事業でコストが増加したことにより減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ