貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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9843 ニトリホールディングス

東証P
18,915円
前日比
+365
+1.97%
PTS
18,925円
13:22 11/27
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
23.2 2.28 0.80 7.11
時価総額 21,647億円
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【株探記者・特別座談会】マーケット記者が見る日経平均4万円時代 今後の相場展望と注目銘柄(後編)


─米商業用不動産問題や円高リスクは要注視か、日経平均4万円時代の花形株の条件を探る─

 日経平均株価が史上最高値を更新し、その後4万円台に乗せた。市場参加者のほとんどが予想できなかった急騰劇となるなか、短期的な調整を警戒する声もあれば、中期的な上昇トレンドの継続を期待する向きもある。AI・半導体株や大型株がけん引する相場のなかでは、出遅れ感が強まった銘柄も散見されるようになってきた。日本株担当の記者有志が、相場観や有望株について語り合う座談会企画の後編では、今後のリスク要因と注目すべき個別銘柄について話し合った。(前編はこちら)

●カギとなるのはやはり「米国」

──日経平均の5年後の水準に関しては、大きく見方が分かれる格好となりましたが、相場を急変させるリスク要因について、それぞれ注目している点を挙げていただければと思います。

キャップ:経済的側面では、米国のCRE(商業用不動産)バブルの崩壊リスクがあります。米国の地銀にデフォルトが相次ぐ形となった場合は、想定以上に株式市場も影響を受け、なおかつ尾を引くと思います。現状はデフォルト率こそ軽微ですが、オフィス中心に担保割れ案件が急増していることが伝わっています。リーマン・ショックの時もそうだったように、欧州の方が米国よりもこうしたネガティブ材料に脆弱性がある点にも注意が必要です。

記者A:生成AIバブルの崩壊やウクライナ戦争におけるロシアの勝利、中国・台湾の緊張激化など相場のリスクは多数あります。ただ、一時的な株価急落はあっても、日本株に割高感はなく遠からず相場は回復すると考えています。日本の株式市場にとっては、急激な円高回帰があれば波乱要因となりそうですが、いまのところは円安の基調は強く、円高はあっても1ドル=130円台程度だと思います。本格的な円高となった場合、日本株買いが続くかどうかの正念場になるんじゃないかな、とも考えています。

記者C:中期的な観点では、大げさかもしれないですが、米国の「内戦リスク」を挙げたいと思います。米政治学者のバーバラ・ウォルター氏の著書が注目を集めましたが、米連邦議会占拠事件から3年経った今、保守層とリベラル層の分断は当時よりも更に深まっています。トランプ氏だけでなくイーロン・マスク氏など、扇動に長けた人物を抱える国ですから、インフレにより生活面での不満が高まった場合は極端な行動を起こす集団も現れかねません。米国の国力低下自体、マーケットにはネガティブな要因となりますが、東アジアにおける地政学リスクの高まりという副作用もあるはずで、日本株からの資金流出を招きそうです。

記者B:やはり重要なのは米国経済の行方ですね。利下げ期待とスタグフレーションの発生リスクを天秤にかけると一方的な楽観論には傾きづらい局面だと言えます。

キャップ:ロシアの核使用のリスクも頭に入れておきたいです。戦術核であっても実際使用に踏み切れば、ウクライナという局地にとどまらず世界は大きく揺れることになります。株式市場は地政学リスクによってトレンドが変わることはないとの見方もありますが、核使用が万が一現実となった場合、人類全体の危機という観点に切り替わるだけに、経験則は通用しないでしょう。

──相場格言には「山高ければ谷深し」とあります。ちなみに、80年代のバブル経済と今と比べて、異なる点や似た点があるのかなと思いますが、AさんとBさんはすでに社会人だったようですね。

記者A:若手記者でしたが、バブル期は怪しい筋が跋扈(ばっこ)していましたよ。今の東京市場は昔に比べたらスマートになったと思います。

記者B:バブル当時は浮かれていましたね。兜町でも札束でパンパンに膨らんだ封筒を、趣味の悪いセカンドバッグに入れて歩いていた人を見かけましたが、今はそんなことはありません。失われた30年を経験して、将来に対する異常なまでの楽観的な見方は鳴りを潜めています。

記者A:市場からダイナミックさが消え失せた点はさみしいですが、個人投資家をみると短期売買が中心なのは変わりがなくて、長期投資が根付いていないのは今も同じかもしれないです。

●日本株担当記者が挙げる注目株

──最後に日経平均が史上最高値圏に突入した後のこれからの株式市場において、花形となる銘柄の条件と、注目している個別銘柄を挙げてください。

記者A:今後、活躍する銘柄は「インフレ対応ができるかどうか」というのが条件になると思います。インフレ時代での活躍セクターとしては、「銀行 」と「 不動産」に注目しています。特に銀行はインフレ下では利ザヤ拡大による業績の伸びが見込めるセクターです。三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]は、配当利回りが3%台にあって長期投資にも向くと思います。更に、実物資産が再評価されるなかでは、不動産は強力なインフレヘッジ手段ともなり得ます。当面は、有利子負債の大きさなど警戒要因はありますが、徐々に資産価値が評価されていくと想定しています。最大手の三井不動産 <8801> [東証P]に投資妙味を感じますが、兜町に思い入れがある身としては平和不動産 <8803> [東証P]に頑張ってほしいです。

記者B:TOWA <6315> [東証P]は、第3四半期の決算短信で「韓国における生成AI向けHBMの増産に向けた投資が堅調であった」との記載がありますが、HBM(広帯域メモリー)関連として注目しています。また、理由として面白味はないかもしれませんが、ニトリホールディングス <9843> [東証P]を挙げます。米国での利下げ期待の高まりが日米金利差の縮小を伴って円高が進行すると予想されるなかで、外すことはできません。もう一つ挙げるとすればサンリオ <8136> [東証P]です。今年は「ハローキティ」が50周年を迎え、記念グッズやコンテンツなどによる収益押し上げ効果が期待できます。

記者C:Bさんと重なる点がありますが、グローバルでみてもブランドや知的財産(IP)など無形資産をもとに成長する企業が増えており、日本でもキャラクタービジネスやアニメ、ゲームといったコンテンツの世界で躍進する企業の存在感が高まっています。アニメ制作のIGポート <3791> [東証S]はかなり株価水準を切り上げましたが、今年は「君に届け」がネットフリックス<NFLX>向けに配信される予定で、グループ会社による「THE ONE PIECE」の制作も決まっています。有力コンテンツに携わった実績をもとに、事業規模を一段と拡大できるのではないかと注目しています。あと、アピリッツ <4174> [東証S]はアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を活用した大規模システム開発サービスや、デジタル人材の派遣事業の成長期待が強い銘柄ですが、オンラインゲームの開発事業も展開しています。ヒット作など新規案件が増加すれば、業績拡大に更なる弾みをつけそうです。締めはキャップ、お願いします。

キャップ:花形となる銘柄は、基本的にその時の相場の流れ・テーマに左右されるもので、今は半導体とAI周辺の銘柄がポールポジションを与えられています。「投資テーマガチャ」で当たりを引いているセクターといっていいでしょう。過去を振り返って、これが電気自動車(EV)であった時もあるし、次世代電池であったり、再生可能エネルギーであったりと、舞台は回り続けますが、今回の半導体とAIのセットはテーマとしてかなり強力で長続きしそうです。

 注目銘柄としては、中期スタンスでソシオネクスト <6526> [東証P]の成長キャパシティーが大きいと考えています。半導体の性能向上の歴史では必ずといっていいほど新技術の登場がありますが、今は一つのチップにさまざまな性能要素を積んで半導体集積回路を作るのではなく、それぞれの性能要素で製造した個別のチップをブロックのように組み合わせて、一つの半導体チップを完成させるという「チップレット集積」が新たな技術領域としてスポットが当たっています。半導体設計・開発で日の丸半導体の急先鋒となるソシオネクストは同分野におけるキーカンパニーとして注目度が高いですし、2ナノ品の設計開発では既に台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>やソフトバンクグループ <9984> [東証P]傘下の英アーム・ホールディングス<ARM>との協業を発表しています。世界的にもソシオネクストに対する注目度が高まっていく時間軸にあると思っています。

 もう一つ、AI関連の有望株としてコムチュア <3844> [東証P]に注目しています。月足チャートでは底値圏に位置していますけど、実態面は極めて良好で株価見直しが中長期タームで進みそうです。独立系システムインテグレーターとして、クラウドサービスで企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)シフトを支援する企業ですが、AI開発でも人材育成などで先駆していて、今後収益面で書き入れ時を迎える公算が大きいと考えます。業績面も長きにわたってトップラインと利益が足並みを揃えて高成長トレンドを継続しており、ビジネスモデルに信頼感が持てますね。

──みなさん、きょうはありがとうございました。

【プロフィール】
▽キャップ:株式専門紙の記者を経てマネー誌の編集長を十数年務めた。バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショックとデフレスパイラルを存分に体験してきたが、個別株のダイナミズムに魅入られ、銘柄発掘では常にポジティブ路線。

▽記者A:バブル初期に業界紙に入社。89年の最高値時を知る。バブル崩壊後も証券記者として株式市場を取材しキャリアを積む。

▽記者B:89年に証券専門紙に入社したバブル経験世代。証券業界以外の経験も多い。大型株より中・小型、IPO株に強みとは本人の談。

▽記者C:業界紙で自動車部品業界を担当。通信社で株式・債券の相場報道に従事し現職。チームの記者として唯一の超氷河期世代。

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