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【特集】デジタル化で市場拡大、輝き増す「屋外広告」関連株にズームイン <株探トップ特集>

かつては広告効果の検証が難しいとされてきた屋外広告だが、近年デジタル化の進展により、急速に見直しが進んでいる。市場も成長を続けており、関連銘柄の商機も拡大しそうだ。

―人気エリアに“映え”るデジタルサイネージ続々、SNSとのシナジーで想定以上の効果―

 屋外広告が見直されている。かつては効果検証がしづらい広告として敬遠されてきた媒体だが、近年ではデジタル化が進んだことで検証ができるようになったほか、人口が多い都会では、認知度を広げる効果が非常に高い媒体として、積極的に運用されるようになっている。「映え」る屋外広告はX(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSとの相性も良く、想定以上の効果を得ることのできる媒体としても認知されている。市場規模も拡大傾向にあることから、関連銘柄には注目が必要だろう。

●不特定多数の人に訴求しやすい媒体

 屋外広告は、家庭以外の場所で接触する広告メディアの総称で、大型のものはビルの屋上や壁面に設置され、小型のものは商業施設など建物のなかに置かれている。一般的に屋外広告は視認性と視覚効果が高く、広告を不特定多数の人に訴求しやすいというメリットがある一方で、紙媒体の広告以上に効果測定が難しい媒体ともいわれていた。

 しかし近年では、こうした屋外広告を取り巻く状況に変化が起きつつある。キーワードはデジタル化だ。

●デジタルとネットワーク化で効果検証

 屋外広告のデジタル化といえば、ディスプレーなどの電子的な表示機器を使って情報を発信する「デジタルサイネージ」を思い浮かべる人も多いと思うが、近年の屋外広告のデジタル化はデジタルサイネージに置き換わったということにとどまらない。

 現在のデジタル屋外広告は、デジタルサイネージをネットワークでつなぎ、位置情報などを組み合わせることで、リアルな広告であるにもかかわらずインターネット広告のように運用できるようになっており、効果検証も可能になっている。屋外広告には古くからの「看板」も多く残るものの、こうしたデジタル化が市場の拡大を牽引している。

●4年後市場規模は6割増へ

 CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]は昨年12月、デジタルインファクト(東京都文京区)と共同で実施したデジタルサイネージ広告市場に関する調査の結果を発表した。それによると、2023年のデジタルサイネージ広告の市場規模は801億円(前年比18.8%増)と予測され、コロナ禍前の19年(764億円)を上回るもようだ。

 そのうち、交通広告と屋外広告を合わせた市場規模は535億円(前年比15.1%増)となったようだ。コロナ禍における外出の減少で、屋外広告や交通広告への評価が下がった時期があったものの、人流が回復したことで、特に渋谷や原宿、新宿といった人気地区の屋外や、駅構内に設置したデジタルサイネージ広告の需要が集中的に高まっており、これが市場の拡大につながっている。

 また、同調査によると、27年のデジタルサイネージ広告の市場規模予測は、23年比74.3%増の1396億円と見込む。うち交通広告と屋外広告を合わせた市場規模は840億円に膨らむ予想で、23年比では57.0%増を予想している。

●屋外広告関連の注目銘柄

 近年の屋外広告は、設置場所のロケーションオーナー、デジタルサイネージを設置するメディアオーナー、デジタルサイネージをつなぐプラットフォームオーナーなどから構成されており、ネット広告に近い仕組みを持つ。それまでの広告主とメディアオーナーが直接契約していた形態から進化しており、関連銘柄の裾野も広がっている。

 SMN <6185> [東証S]は、ソニーグループ <6758> [東証P]の優れた技術をもとに開発された広告配信最適化プラットフォーム「Logicad」のメニューの一つとして「Logicad DOOH」を展開。NTTドコモの携帯電話ネットワーク運用データをもとにした人口統計「モバイル空間統計」などのデータを活用することで、従来の屋外広告では実現できなかったデモグラフィックベースのインプレッション(推定到達人数)の計測を可能にしていることなどが特徴だ。24年3月期第3四半期累計連結決算は、営業損益が2億2600万円の赤字(前年同期1億9100万円の赤字)だったが、通期では営業利益1億円(前期比5.8倍)を見込む。

 ジーニー <6562> [東証G]は、国産デジタル屋外広告プラットフォーム「GENIEE DOOH」を展開している。ネット広告のようにターゲットやエリアを自由に選定できるほか、インプレッション課金により効率良く配信できることなどが特徴だ。24年3月期第3四半期累計連結決算は、営業利益が12億3600万円(前年同期比54.1%増)と大幅増益で着地。通期は同18億円(前期比26.7%減)を見込む。

 トラース・オン・プロダクト <6696> [東証G]は、IoT技術を活用したデジタルサイネージプラットフォーム「CELDIS」を展開しており、全国の3400カ所以上にデジタルサイネージを設置した実績がある。24年1月期は第3四半期累計で単独営業損益7500万円の赤字(前年同期3100万円の赤字)、通期でも同7600万円の赤字(前の期600万円の赤字)予想だが、前の期に受注型Product事業で大型案件の受注があった反動が大きいようだ。

 TBグループ <6775> [東証S]は昨年2月から媒体の持ち主(TBグループ)とロケーション主との間で放映時間枠を応分にシェアする「シェアタイムビジョン GO!VISION Pro」を首都圏中心に展開している。3月6日に24年3月期連結業績予想を営業損益で3000万円の黒字から2億4000万円の赤字(前期2億6100万円の赤字)へと下方修正したが、来期の業績回復が期待されている。

 大日本印刷 <7912> [東証P]は、屋外広告をアドネットワーク化し、複数の屋外サイネージ広告をデジタル上で一元管理する「DNP BookAD DOOH」を展開している。SMN同様にNTTドコモの携帯電話ネットワーク運用データをもとにした人口統計「モバイル空間統計」などのデータを活用しているのが特徴だ。24年3月期第3四半期累計連結決算は、営業利益520億200万円(前年同期比16.6%増)と好調。通期では同670億円(前期比9.4%増)を見込む。

 INFORICH <9338> [東証G]は、モバイルバッテリーのレンタルサービスが主力だが、バッテリースタンドの筐体のデジタルサイネージに広告を映し出すことで広告媒体としての販売も行っている。この広告収入が全体に占める割合は小さいものの、着実に売り上げは拡大している。23年12月期連結決算は、営業利益6億300万円(前の期13億9700万円の赤字)と黒字化を達成。24年12月期は同16億3500万円(前期比2.7倍)と大幅増益を見込む。

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