CAICAD Research Memo(1):2023年10月期は「金融サービス事業」の赤字幅が拡大
■要約
1. 会社概要
CAICA DIGITAL<2315>は、金融業界向けを主としたシステム開発や暗号資産※に関するシステム開発などを行う「ITサービス事業」を軸に、金融商品取引法に基づく第一種金融商品取引業及び暗号資産に関する金融商品の開発・販売、暗号資産交換所運営などを手掛ける「金融サービス事業」を展開してきた。システム開発において長年にわたって蓄積してきた高度な技術やノウハウなどに強みがあり、同社グループ全技術者(約400名)がブロックチェーン技術者となる計画を実行中である。ただ、この数年にわたる暗号資産市場の混乱により、2021年3月期に参入した暗号資産交換所「Zaif」の運営をはじめとする「金融サービス事業」が業績の足を引っ張る状況が続いていることから、「Zaif」を含む連結子会社3社の譲渡により、抜本的な事業再編を決断した。今後は、安定したキャッシュ・フローを生み出すシステム開発の「ITサービス事業」へ集中するとともに、次世代の分散型インターネットとして注目されているWeb3ビジネスの拡大に取り組む方針である。
※暗号資産とは、中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず、インターネットを通じて不特定多数に対して商品やサービスの購入の対価として利用できる財産的価値のことを指す。2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、今まで「仮想通貨」と呼ばれていた名称が「暗号資産」へと変更された。
2. 2023年10月期決算の概要
2023年10月期の連結業績は、売上高が前期比16.0%減の5,408百万円、営業損失が2,378百万円(前期は1,389百万円の損失)と、暗号資産市場全体の取引高低迷に伴う「金融サービス事業」の落ち込みにより、各段階利益ともにマイナス着地となった。売上高は、「ITサービス事業」が堅調に推移した一方、「金融サービス事業」については、前期から続く暗号資産市場の低迷が足かせとなり、業績の足を引っ張る状況から抜け出すことができなかった。利益面でも、「ITサービス事業」の安定した収益貢献に加え、「Zaif」における構造改革(経費圧縮など)を進めたものの、売上高の大幅な落ち込みを補うことはできず営業損失が拡大した。活動面では、「Zaif」を含む連結子会社3社の譲渡により「金融サービス事業」の抜本的な再編に踏み切る一方、クシム<2345>との協業体制の構築などWeb3ビジネスの拡大に向けた動きが活発化してきた。
3. 2024年10月期の業績見通し
2024年10月期の連結業績について同社は、売上高を前期比16.5%増の6,302百万円、営業利益を169百万円と増収並びに大幅な損益改善(黒字転換)を見込んでいる。売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が順調に拡大する見通しである。利益面でも、「金融サービス事業」の再編に伴って販管費約2,200百万円の削減が見込めることや、「ITサービス事業」の伸びにより大幅な損益改善を図り、黒字転換を実現する想定となっている。
4. 新中期経営計画の方向性
同社は「金融サービス事業」の抜本的な再編に伴い、新たに3ヶ年の中期経営計画を公表した。ただし、「2030年に向けた将来ビジョン」の方向性に大きな変更はない。すなわち、安定したキャッシュ・フローを生み出すシステム開発の「ITサービス事業」に集中するとともに、資本業務提携を締結したクシムなどとの協業により、ブロックチェーン技術を活用したWeb3ビジネスの拡大を図る方針である。既存Web3事業の拡大やDXコンサルティングによるSI事業の伸長、M&Aによる事業拡大などを通じて、最終年度の売上高7,813百万円(3年間の年平均成長率は13.0%)、営業利益467百万円(営業利益率6.0%)を目指す。
■Key Points
・2023年10月期は「ITサービス事業」が堅調に推移する一方、前期から続く暗号資産市場の低迷により「金融サービス事業」が大きく落ち込み、営業損失が拡大
・2023年10月31日付けで「Zaif」を含む連結子会社3社の譲渡により、「金融サービス事業」の抜本的な再編を決断
・2024年10月期の業績予想については、「ITサービス事業」の伸びと「金融サービス事業」の再編効果により、増収並びに大幅な損益改善(黒字転換)を見込む
・新たな中期経営計画では、安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」への集中とWeb3ビジネスの拡大を図る方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《HH》
提供:フィスコ