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【特集】「医療AI」に米巨大テックが資金投下、上昇機運到来の銘柄リスト <株探トップ特集>

米巨大テック企業が医療AI領域での事業強化に動いている。日本国内では診療報酬改定を機に、AI画像診断支援システムの導入拡大に向けた期待も高まっている。

―エヌビディアは事業拡大に躍起、国内でも画像診断支援システムの導入機運が上昇中―

  AIに関するニュースを目にしない日はないと言っていい。AI技術の活躍が期待される領域は多岐にわたるが、なかでも急成長が期待されるのが医療分野である。米巨大テック企業が医療AIの成長に向けて積極的な投資に動くなか、国内外で研究開発が一段と活発化しており、株式市場においても関連銘柄への注目度が高まりつつある。

●ダボス会議は「AI一色」

 1月19日まで開かれた2024年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)は、まさに「AI一色」だった。 生成AIサービス「チャットGPT」を開発したオープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)が、解任を巡る騒動の後に初めて公に姿を現したのも話題となったが、多くの参加者の注目を集めたセッションの一つとなったのが、マイクロソフト<MSFT>のサティア・ナデラCEOとWEFのクラウス・シュワブ会長の対談だった。ナデラ氏はAIがもたらす「予期せぬ結果」について触れながらも、AIの将来については楽観的な見方を示し、24年はAIサービスが拡大し、定着する年になるとの考えを表明したという。

 ダボス会議にとどまらない。1月12日まで開かれた世界最大のテクノロジー見本市「CES」では、AIを活用した新時代の製品・サービスに関する企業の発表が相次いだ。更に、米メタ・プラットフォームズ<META>のマーク・ザッカーバーグCEOは18日、AIを活用した製品の開発加速を実現するため、今年末までにエヌビディア<NVDA>からGPU(画像処理半導体)を大量調達する方針を明らかにし、半導体株の急騰の一因となった。エヌビディアの株価は過去最高値圏で更に上昇指向を強めている。

●医療AIの成長見込むエヌビディア

 AI半導体で確固たる地位を築いたエヌビディアが、更なる成長に向けて攻めの姿勢を鮮明にしているのが、医療AI分野である。今月開催された製薬業界における世界最大級の国際会議「JPモルガン・ヘルスケアカンファレンス」において、エヌビディアはアムジェン<AMGN>との提携を通じた創薬向けAI事業の今後の展望について発表。関連業界の幹部はもちろん、金融市場参加者の注目も集めることとなった。

 米巨大テック企業では、オープンAIに出資するマイクロソフトも、スイス製薬大手ノバルティス<NVS>と手を組み、生成AIなどを活用した医薬品設計に向けた研究開発を進めている。ヘルスケア領域における各社の攻勢は今後も一段と強まることが予想される。

 日本国内でも、AIを活用した医療機器の導入機運が徐々に高まりつつある。24年度の診療報酬改定に関連して、医療技術の評価を目的とする分科会(1月15日開催)で提示された資料にその形跡がある。資料のなかでは「人工知能を用いた画像診断」について、対象医療機関の拡大を求める日本医学放射線学会からの提案に対し、対応優先度の高い項目として評価されたことが明らかとなっている。診療報酬の枠組みを通じ、AIを活用した医療機器の導入にインセンティブの付与を求める動きが医学界から出てきた意味は大きい。

 AIによる画像診断支援システムを手掛ける日本企業としては、富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]やコニカミノルタ <4902> [東証P]、キヤノン <7751> [東証P]グループのキヤノンメディカルシステムズ、オリンパス <7733> [東証P]などの名が挙がる。医療AIという括りでは、日立製作所 <6501> [東証P]やNEC <6701> [東証P]といった電機大手はもちろん、「医療AIプラットフォーム技術研究組合」に参画するソフトバンク <9434> [東証P]やBIPROGY <8056> [東証P]も、新たな収益源となると期待できるだろう。もちろん、医療AI向けで成長が期待できる銘柄群はこれら大手企業ばかりではない。

●医療AI関連銘柄にフロンテオなど

 FRONTEO <2158> [東証G]はAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」を展開。同社が開発したAIエンジンを活用し、論文情報や遺伝子ネットワーク情報をもとに創薬標的の選定や評価を行い、新薬開発の効率化とスピードアップを促す。また、認知症診断を支援するAIプログラムについては25~26年の発売を計画。うつ病診断支援AIプログラムでは昨年9月に慶應義塾大学医学部と商業化へのライセンス契約を締結したほか、統合失調症診断支援向けなど、開発パイプラインの拡充に動いている。

 東北大学発創薬ベンチャーのレナサイエンス <4889> [東証G]は、昨年6月にNECと医療分野でのAIの応用に関する共同研究契約の締結を発表。インスリン投与量を予測するAIによる糖尿病治療支援のSaMD(プログラム医療機器)は今期の臨床試験開始を予定する。ニプロ <8086> [東証P]を導出先とする透析医療支援のSaMDのほか、嚥下機能低下診断用のSaMDの開発も進めており、最新の開発状況に関する情報発信が注目される。

 モルフォ <3653> [東証G]は千葉大学医学部附属病院などとともに、AIを活用して大腸がんの深達度診断を支援するシステムを共同で構築した過去を持つ。同社は資本・業務提携先のデンソー <6902> [東証P]と自動運転の技術開発を進めている。画像処理やAI関連で蓄積した技術力は、医療機器領域でのモルフォのプレゼンスを拡大させる原動力にもなりそうだ。

●フォーカスなども要マーク

 フォーカスシステムズ <4662> [東証P]は26年3月期までの中期経営計画で、将来に向けた重点的な取り組みの一つとして、医療系大学などの外部研究機関とのヘルステック分野のAIに関する研究開発の推進を掲げている。21年9月には、認知症やパーキンソン病などの診断に用いるSPECT装置で生成された画像をAIで高精度化するため、横浜市立大学放射線診断学教室との共同研究の開始を発表。資本・業務提携関係にあるフロンテオとの医療AI関連での相乗効果も期待したい。

 オプティム <3694> [東証P]は、包括的な連携協定を結ぶ佐賀大学内に「佐賀本店」を構える。同大医学部と眼底画像の診断支援AIの開発を推進。さまざまな医療画像診断支援AIプログラムと病院内のシステムを連携して利用できるようにする統合オープンプラットフォーム「AMIAS」を展開する。数々の産業・業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化へのニーズが事業の追い風となる同社にとって、医療AI分野が新たな成長のエンジンとなるか注視される。

 エクサウィザーズ <4259> [東証G]は1月23日に、健康・医療領域のAIプロダクト・サービスを展開する新会社の設立を発表した。AIプラットフォーム事業の売り上げ構成比率は、金融・保険が21%、消費財が20%と上位になっているが、ヘルスケアも13%と一定の比率を占める。第一三共 <4568> [東証P]による、健康促進から予防・治療・予後ケアまでにわたる「トータルケアエコシステム」構想にコアパートナー企業として参画。同構想ではがん領域を皮切りとして、臨床研究で活用する医療従事者・患者向けアプリの開発や、エクサWizのAIプラットフォーム「exaBase」を活用した予測アルゴリズムの構築を進めている。

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