富士ソフト Research Memo(2):コンピュータの可能性を徹底追及。ICT先端を目指すイノベーション企業
■会社概要
1. 会社概要
富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。2023年12月期において連結子会社31社(うち4社が上場企業)、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数17,000人超となっている。
セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコールセンター等を行っている。
また、セグメントを横断する技術戦略として、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。こうした成長分野で技術を蓄積し磨き上げることは容易ではないものの、「AIS-CRM」領域の単体売上高が、2018年12月期の618億円から2022年12月期に1,122億円と順調に成長し、技術戦略に対する手応えと自信が一段と深まった。
2. ICT先端を目指すイノベーション企業
同社は、自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと、幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力、顧客に寄り添った拠点網(国内42拠点+グローバルネットワーク)の構築に裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとしている。また同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出とともに、様々な企業活動をとおして社会の発展につなげることが重要な使命と考えており、中期方針として「ICTの発展」を目指している。同社が発信しているメッセージから読み取れるのは、「ICT利活用の有効性・将来性への確信、その推進への使命感」と「顧客本位かつCSV型(Creating Shared Value:事業を通じた社会貢献により企業価値を増大させる企業)の経営方針」だろう。
IT (information technology)技術を利用したサービスが登場し、世界は大きく様変わりした。IT技術がさらに進化し、それを包括した技術にICT(Information and Communication Technology)がある。ICTとは情報通信技術を指す用語で、情報処理技術と通信技術の融合によって生まれる技術の総称である。コンピュータと通信機器を統合し、データの収集・処理・伝送・共有を効率的に行うことを可能にする。つまり、現在と未来の技術で、社会生活やビジネスに再び大きな変化をもたらすテクノロジーである。
同社は代表が「ICTの専門プロ集団として、社是である【挑戦と創造】を続け、中期方針であるICTの発展をお客様価値向上に結びつけるイノベーション企業グループ」を目指すと宣言していることから、同社グループにおいてとても重要な概念であると理解できる。
なおCSVとは、通常の利益追求だけでなく、社会的な課題や環境問題などにも対処しながら新たな市場機会や競争力を見出すアプローチだ。従来の慈善活動や社会的責任(CSR)とは異なり、CSV経営は、社会的課題をビジネスの中核に位置付け、新たなビジネスモデルやイノベーションを通じて社会的・環境的な価値と経済的な価値を同時に創出することが重要になる。このCSV取り組みが、1990年から継続的に開催し国内最大規模のロボット競技大会に育った「全日本ロボット相撲大会」である。
3. 沿革
野澤宏氏が、1970年当時創業した富士ソフトウエア研究所が前身であり、創業時のコンピュータ・オペレーターの派遣業務事業で基盤を築いた同社は、その後、ソフトウェア開発やシステム構築の事業領域に進出、コンピュータ産業の爆発的拡大を追い風に飛躍的な発展を遂げたが、その成長要因は「新たな分野に挑戦し、事業を創造し、企業としての成長・革新を目指す攻めの経営姿勢」を創業来継続していることにある。創業者を含む経営トップがコンピュータ社会の到来と発展を確信し、大きなリスクを背負いながら、積極的な人材採用・技術者育成と自社にない技術や顧客基盤を取り込む補完的M&A戦略を推進してきた。こういった取り組みが奏効し、独立系ながら売上高2,500億円超、連結従業員数17,000人規模の企業グループにまで発展した。
実際、コンピュータ社会が現実化し国内ITサービス市場が6兆円規模に拡大するなかにあっても、売上高1,000億円の大台を超える大手ITサービス企業は、メーカー系(富士通<6702>など)やユーザー系(NTTデータ<9613>など)、商社系(SCSK<9719>など)、外資系(日本IBM(株)など)がほぼすべてを占めており、創業来一貫して独立系と呼べる企業は同社を含めて3社に過ぎない。
4. 受賞実績
事業パートナー等からも高く評価されている。事業パートナーによる2019年以来の具体的な実績は以下のとおりである。加えて、2022年7月に経済産業省が選定する「DX認定事業者」に認定されている。
「Microsoft Japan Partner of the Year2023」においては、3年連続の「Converged Communications Award」及び2年連続の「Modern Workplace for Frontline Workers Award」を受賞した。
Amazon Web Services(AWS)からは「AWS Well-Architectedパートナープログラム」、「Oracleコンピテンシー」の認定を取得し、続けて「AWS Ambassadors/Japan AWS Top Engineers」に選出されている。
IT仮想化市場で世界一のシェアを誇るVMwareからは、最上位認定の「Principal」を取得、VMware 2020パートナーオブザイヤー賞(アジアパシフィック及び日本地域のクラウドプラットフォームトランスフォーメーション部門)、2021 VMware APJ Partner Innovation Award、VMware APJ 2022 Partner Lifecycle Services Awardを相次いで受賞している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清野克純)
《SO》
提供:フィスコ