【特集】田部井美彦氏【東京市場は反乱の週明け、リスクオフ相場再来か】(1) <相場観特集>
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
―中東の地政学リスクと米長期金利の動向などに不透明感―
週明け16日の東京株式市場は大きく売り優勢に傾き、日経平均株価は一時700円を超える下落に見舞われフシ目の3万2000円台を大きく割り込んだ。中東でイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争が激化するなか、地政学リスクによってマーケットの先行き不透明感が増している。米長期金利の動向なども横目に、足もとで日米株式市場ともに不安定な値動きを強いられているが、ここからの展望はどうか。10月後半以降の下期相場の見通しについてベテラン市場関係者2人に見解を聞いた。
●「相場の上昇基調変わらず、中東情勢のヘッジで石油関連株など注目」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
全体相場の上昇基調は変わっていないとみている。市場で警戒されていた米金利もピークアウト感が出ている。米経済の景況感も徐々に良くなくなっており、賃金上昇も続くとは想定しづらい。10月31日~11月1日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利は据え置かれそうだ。ハロウィンの商戦などを含め年末に向けての米国の経済状況を注視するべきだろう。
米国企業に続き、今月下旬からは日本企業の決算発表も本格化する。日本企業は円安の追い風もあり、今中間決算では業績の上方修正の発表も期待できそうだ。日銀が金融政策を変更するのには、まだ時間があるとみられ、円安傾向が続くなか企業決算を好感する動きが見込める。
中東情勢を巡るリスクは気になるが、戦争は始まってしまえば相場は落ち着くということはよくあることだ。ただ、原油高が続くことは想定しておいた方がよいだろう。
日経平均株価の予想レンジは、下値は3万1000円前後で、年内を視野にいれれば3万4000円も見込めそうだ。個別銘柄では、中東情勢に対するリスクヘッジの意味も込めINPEX <1605> [東証P]やENEOSホールディングス <5020> [東証P]などの 石油関連株に注目したい。原油高は追い風となるほか、ともに資本効率性を意識した経営を進めているが、株価は連結PBR1倍割れで配当利回りも高く、投資妙味は大きい。
また、トヨタ自動車 <7203> [東証P]の挽回生産が追い風となるほか、為替の円安効果が期待できるデンソー <6902> [東証P]や、半導体関連の設備投資の恩恵が期待できるTOWA <6315> [東証P]などにも注目したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース