日本ヒューム Research Memo(7):中期経営計画を策定。2028年3月期に売上高400億円を目指す
■成長戦略
1. 中期経営計画「23-27計画R」
日本ヒューム<5262>は2023年5月に、2024年3月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画「23-27計画R」を策定した。今後予想される事業変化に対応して200年企業に向けた成長軌道を創るべく、改革の期間と位置付け推進する。ミッションには「継承と進化」を掲げた。
2023年4月1日付で社長に就任した増渕智之新社長は、中期経営計画にあたり次のように述べた。「激動の時代にあっても、社会資本形成に貢献するという創業精神のNHイムズや良き企業風土を「継承」しつつ、次の100年に向けて経営基盤を「新化」させていきたい。長寿企業の伝統は現状維持に傾きかねないため、業務執行の決断と実行の強化に向けてコーポレート・ガバナンスを強化する。経営と現場をつなぐコミュニケーションの円滑化を図るため拡大経営会議も設置した。ICTツールの「Pile-ViMSys(R)」「ウェルマン貯留槽(R)」、合成鋼管、EMC壁高欄、さらに環境にやさしい素材「e-CON(R)」など、当社の強みを生かした高付加価値で有望な戦略製品も揃ってきた。さらに、100周年の次を担う人材育成にも取り組むなど、持続的成長に向けた改革や基盤づくりを進めていきたい。」
(1) 経営目標
2026年3月期の売上高365億円、営業利益17億円、経常利益25.5億円、当期純利益18.8億円、ROE4.5%~5.0%、2028年3月期の売上高400億円、営業利益22億円、経常利益30.5億円、当期純利益22.7億円、ROE5.0%以上を掲げた。同計画期間の前半は将来に向けた研究開発や設備投資を強化して成長の土台を創り、後半に利益水準を回復するとともに、さらなる成長軌道に乗せる方針だ。
(2) 基盤構築の改革戦略
200年企業に向けた基盤構築の改革戦略として、営業部門では事業拡大を目指して組織営業体制の強化、情報化武装の強化、マーケティング部門への新化を推進する。技術部門では、新たな事業創出も目指して事業開発体制の強化、設計提案営業力の強化、BIM/CIMの推進、生産部門では事業環境に対応したFX(Factory transformation)の基盤構築を目指して品質・安全の強化、設備投資(市場、労働力、CN対応)、間接業務のIT化推進に取り組む。工事部門ではプレキャスト工事体制の確立を目指して品質・安全の強化、工事体制の増強、ICT施工管理の推進、管理部門では企業価値の向上を目指して人財戦略の強化(2023年4月より新人事制度スタート)、IT・デジタル戦略の強化、IR戦略の強化を推進する。
高付加価値のプレキャスト製品群が成長ドライバー
2. 事業別戦略
事業別戦略としては、主力事業の振興軌道強化と戦略事業の強化により、成長基盤を構築する。事業別の計画数値は次のとおり。2028年3月期の売上高は、基礎事業227.5億円、下水道関連事業77.5億円、プレキャスト製品事業80億円、その他15億円としている。営業利益は、基礎事業9億円、下水道関連事業16億円、プレキャスト製品事業10億円、その他8.7億円、全社費用等による損失は21.7億円としている。計画数値達成に向け、主力事業は従来の基礎事業及び下水道関連事業のうちの既存ヒューム管分野、戦略事業は下水道関連事業のうちの新しいプレキャスト製品群(一般的な意味でのプレキャスト製品と異なる)及びその他事業(新規事業など)と位置付けている。決算短信で開示するセグメント区分は2024年3月期以降も従来どおり(基礎事業、下水道関連事業、太陽光発電・不動産事業、その他)である。
基礎事業では、採算改善と安定化を目指し、同社が強みを持つ排出残土の少ない中掘工法の販売拡大、α値ダントツ化を目指した新工法の開発、ICTツール「Pile-ViMSys(R)」のさらなる改良による施工効率化、コスト増に対する価格転嫁継続、再開発や大型工場案件など大型案件の確実な取り込みを推進する。
下水道関連事業では、トータルソリューション増強を目指し、ヒューム管市場のさらなるシェア拡大、耐震化や管路メンテナンスを軸とする下水道工事の提供エリア拡大、1種~6種にラインナップ拡充した合成鋼管の拡販、下水道工事における建設従事者の積極採用、脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」の下水道管への普及を推進する。
プレキャスト製品事業では、新たな成長ドライバーと位置付けるコンクリート製品テクノロジーによる高付加価値製品の増強を目指し、都市部再開発案件への「PCウェル」製品等の拡販、脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」のプレキャスト事業化、道路分野での「EMC壁高欄」の拡販、生産性向上のBIM/CIM、技術開発強化による新製品開発を推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ