貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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7011 三菱重工業

東証P
2,215.0円
前日比
-44.0
-1.95%
PTS
2,197.5円
02:56 11/28
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
32.4 3.30 0.99 5.01
時価総額 74,726億円
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米中冷戦で変わる世界、「港湾クレーン」急浮上する銘柄群を追え <株探トップ特集>


―海外では中国メーカーが圧倒的シェア、米国で安保上の懸念強まり挽回の好機到来─

 国際情勢の緊迫化が続き、経済安全保障の重要性が声高に叫ばれるようになった。日本国内では半導体の安定調達に向け、新工場の建設を進める動きも相次いでいる。こうしたなか、米国では中国製の港湾クレーン(ガントリークレーン)について、安全保障上のリスクがあるとする見方が新たに広がっている。海外で圧倒的シェアを誇る中国製の港湾クレーンを日本製に置き換える動きが加速すれば、関連企業の業績の追い風となる可能性が高い。

●WSJ「トロイの木馬」報道で新たな波紋

 2018年秋に米系通信社のブルームバーグが配信した「スパイ」半導体を巡る記事を記憶している投資家は多いだろう。特殊な半導体が組み込まれたサーバーを通じ、中国政府がアップル<AAPL>など米企業の知的財産や機密情報にアクセスできる状態になっていたというもので、金融市場でも大きな話題となった。その後は日米欧で経済安保機運が一段と高まり、新たな半導体供給網の構築に向けた動きは、コロナ禍を受けた半導体不足の局面でも変わることがなかった。

 あれから4年半ほど経った今年3月、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道が新たな波紋を広げている。米国内の港湾で操業中の中国製クレーンが、中国政府の偵察ツールになっているとの懸念を米当局者が深めている、という内容だ。

 巨大な木馬に兵を忍ばせたギリシャ神話の「トロイの木馬」さながらに、クレーンに搭載された高度なセンサーを通じて、米軍の作戦を支援するための輸送物資に関する情報を入手している疑いがあるという。4月4日には中国製クレーンの問題を巡り、米議会が公聴会の開催などを求めているとも伝わった。中国政府は、米国側の懸念は「妄想」に過ぎないとする立場をとっている。

●ビジネス現場では「追い風」の声も

 ペンタゴン(米国防総省)が注目したクレーンを製造したのは、中国の上海振華重工(ZPMC)だ。報道によると、同社の世界シェアは70%前後、米国では80%近くに上る。西側諸国や新興国において中国メーカーの設備を排除する流れが強まった場合、貿易大国としての歴史を持ち、技術力にも定評のある日本企業は、代替需要の恩恵を享受することとなりそうだ。

 実際にビジネスの現場からも「クレーンの新設や、既存のクレーンの更新時において中国企業への発注を避けようとする機運が米国などで高まれば、日本企業全体として商機が広がることとなり、事業の追い風となる公算が大きい」(重工メーカー関係者)との声がある。

 加えて、新興国では経済発展に伴い、港湾の整備が今後も一段と進むことが確実視されている状況だ。調査会社グローバルインフォメーションによると、移動式港湾クレーン市場は30年までの間、年平均成長率が約25%に上ると予測されている。

●国内最大手の三井E&S、業績回復のけん引役に

 港湾クレーンの国内最大手となるのが三井E&S <7003> [東証P]だ。造船などの不採算事業の撤退で経営は筋肉質になり、23年3月期は営業黒字に転じる見通しだ。事業再生に一定のメドをつけた同社は26年3月期に売上高2800億円(23年3月期見通しは2400億円)、営業利益率6%(同0.4%)とする目標を掲げる。

 中核となる舶用推進事業とともに、成長のけん引役として位置づけるのが港湾物流事業だ。同社の港湾クレーンの国内シェアは約90%に上る。その国内では老朽化したクレーンの更新需要とともに、遠隔保守や自動化などへのニーズが高まっていると考えられている。昨年9月には港湾クレーン向けの水素燃料電池パワーパックの試運転に成功したことを公表。環境配慮型の設備を求める国内外の需要に対応する布石を打っている。子会社には水素ステーション用圧縮機を手掛ける加地テック <6391> [東証S]もあり、事業展開をするうえでの相乗効果の発揮が期待される。

 住友重機械工業 <6302> [東証P]や、JFEホールディングス <5411> [東証P]傘下のJFEエンジニアリングも、港湾クレーンを手掛ける重要なプレイヤーだ。住友重は15年に三菱重工業 <7011> [東証P]の港湾クレーン事業を取得。21年には同社子会社が名古屋港において、NTTドコモなどと共同で5G技術を生かしてクレーンを遠隔操作する取り組みに、国内でいち早く着手した。蓄積したノウハウを今後のビジネス展開にどう活用するか注目が集まる。

 JFEエンジニアリングは、世界最大級のコンテナ船が接岸可能な横浜市の南本牧ふ頭に港湾クレーンを納入した実績を持つほか、ミャンマーでの港湾工事などにも携わってきた。同社の免震機能を備えた港湾クレーンの引き合いは、地震が頻発する新興国を中心に増える可能性が高い。

●五洋建など海洋土木にも恩恵か

 港湾クレーンの増設を目的に、コンテナターミナルそのものを整備するケースが相次げば、海上土木などを手掛ける建設企業の受注に好影響をもたらしそうだ。前述の南本牧ふ頭の整備工事に携わった企業を例に挙げると、任天堂 <7974> [東証P]創業家の資産運用会社との対決姿勢が鮮明となっている東洋建設 <1890> [東証P]のほか、五洋建設 <1893> [東証P]、東亜建設工業 <1885> [東証P]、若築建設 <1888> [東証P]などがある。

 ゼネコン各社はこれまで、円安や原材料価格の上昇を背景としたコストの負担増が利益の圧迫要因となってきたが、今年に入り急速な円安の動きに一服感が出てきたことは留意すべきだろう。このうち、五洋建は異例にも、今年2月の23年3月期第3四半期累計(22年4-12月)の決算発表時に、24年3月期の売上高が過去最高の6000億円超(23年3月期見通しは4850億円)、最終利益が約220億円(同5億円)になりそうだと公表。好採算の土木工事により、今期は業績が急回復するとみられている。洋上風力発電関連での中期的な成長期待も根強い。

 東亜建と若築建は昨年12月、両社とインドネシアの建設会社3社が組成した共同企業体が、ジャカルタ首都圏東部のパティンバン地区において、同国最大規模の国際貿易拠点となる大型港湾の工事を受注したと発表した。日本政府開発援助(ODA)の円借款により実施される事業だ。業績拡大期待を背景に株価はともに高値圏で推移するが、東亜建のPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っており、株主還元策の拡充を巡る思惑が働きやすい。

●ワイヤーロープやコンサル企業にも注目

 港湾クレーンのサプライヤーに目を転じると、線材加工の日亜鋼業 <5658> [東証S]の連結子会社であるジェイ-ワイテックスが、港湾クレーン用のワイヤーロープを製品群に持つ。同社には住友電気工業 <5802> [東証P]も45%出資している。神戸製鋼所 <5406> [東証P]グループの神鋼鋼線工業 <5660> [東証S]もコンテナクレーン用ロープを手掛けている。

 このほか、関連銘柄としては、道路とともに空港や港湾など幅広く舗装材料を扱うニチレキ <5011> [東証P]や、海外で受注実績を積み重ねている建設コンサルの日本工営 <1954> [東証P]、ベトナムのラックフェン港コンテナターミナルなどの施工実績を持つ不動テトラ <1813> [東証P]、タイやミャンマーといった海外での港湾におけるターミナル運営に携わる上組 <9364> [東証P]などをマークしておきたい。

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