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【特集】電動車100%時代の旗手、「充電インフラ関連株」に熱視線 <株探トップ特集>

EVの普及に不可欠なのが充電インフラの整備で、充電器の設置拡大はもはや国策となっている。また、足もとで活発化するワイヤレス給電の実用化に向けた取り組みにも注目しておきたい。

―EVシフトで高まる充電器ニーズ、ワイヤレス給電の実用化も視野に―

 自動車業界に大きな変化をもたらしている潮流として、世界共通の課題となっている「カーボンニュートラル」を目指す動きが挙げられる。これは気候変動問題を解決するため、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を全体としてゼロにしようというもので、日本も2050年までに達成する目標を表明している。こうしたなか、自動車メーカーは環境負荷の少ない電気自動車(EV)へのシフトを加速させている。ただ、EVの普及に向けては充電インフラの整備が不可欠で、改めて充電器関連株にスポットを当てるとともに、実用化への期待が高まっているワイヤレス給電関連株にも注目してみた。

●補助金増額で設置拡大狙う

 政府は35年までに乗用車の新車販売に占める電動車の比率を100%とする目標を掲げ、それにあわせて公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラの数を30年までに15万基(22年3月時点は約3万基)まで拡大し、ガソリン車並みの利便性を実現するとしている。

 これを踏まえて経済産業省は23年度からEV用充電器向けの補助金制度を新しくしており、急速充電器の高出力化や複数口化を促すために補助上限額を引き上げた。例えば、高速道路のサービスエリアなどに1基6口タイプの急速充電器を設置する場合、工事費の上限額をそれまでの3100万円から6200万円に倍増。また、公共用の高出力充電器(90キロワット以上)に関しても初期投資に係る補助率・上限額を引き上げ、EVバスなど多数の商用車の充電環境を計画的に整備できるように高圧受電設備に対する補助額を350キロワット以上で上限600万円(250キロワット以上は上限500万円)まで増やした。

 加えて、経産省と国土交通省は3月29日に「高速道路における電動化インフラ整備加速化パッケージ」を公表している。高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで高出力の充電器整備を求める声が多くなっていることが背景にあり、補助金の増額や政府の積極的な支援により、25年度までに高速道路の急速充電器の口数を20年度末比で約2.7倍となる1100口に増設するとしている。

●エネチェンジ、日東工など注目

 充電インフラを巡る企業の取り組みも活発化しており、直近では日東工業 <6651> [東証P]のEV充電器「Pit-2G(ピット・ツージー)シリーズ」と、アークエルテクノロジーズ(福岡市中央区)のEV充電ソリューション「AAKEL eFleet」が連携した。また、「Pit-2Gシリーズ」はTerra Motors(テラモーターズ、東京都港区)のEV充電サービスを含む充電インフラ事業「Terra Charge」に対応するEV充電器として採用されている。

 日本リビング保証 <7320> [東証G]は3月、「Terra Charge」が提供するEV充電設備への保証サービスの提供を開始すると発表した。同社はメーカー・販売事業者などと連携のうえ、EV充電設備に対する最長10年間の長期保証サービスを提供することで普及を後押ししたい考えで、テラモーターズとの連携を強化することで、同技術分野の更なる普及推進につなげる構えだ。

 ENECHANGE <4169> [東証G]は3月、EV用の6キロワット普通充電器の累計受注台数が3000台を突破したことを明らかにした。21年11月のサービス開始から1年4ヵ月での達成で、強みはEVドライバーの利便性の高さとオールインワンサービス。6キロワット普通充電器は同じ電力量を充電するのに3キロワット普通充電器に比べ半分の時間で済むほか、大手EV充電ネットワークのe-Mobility Power(東京都港区)との提携で、今年4月下旬から自動車メーカー各社が発行しているすべてのEV充電カードがEV充電エネチェンジで利用可能となる。また、設置工事、補助金申請、決済アプリや管理システムの提供、集客サポート、故障やエラーによる問い合わせ対応まで、すべてエネチェンジが行っていることも長所となっている。

 このほかでは、EV用充電器を展開するモリテック スチール <5986> [東証S]、東光高岳 <6617> [東証P]、ダイヘン <6622> [東証P]、新電元工業 <6844> [東証P]、ニチコン <6996> [東証P]などが関連株として挙げられる。

●実証相次ぐワイヤレス給電

 EVの推進はもはや国策となっているが、普及を妨げる大きな要因となっているのが搭載する大容量のバッテリーに起因する高い車両価格や長い充電時間だ。そこで期待されているのが、非接触でEVに充電できるワイヤレス給電技術で、実用化に向けた研究開発が相次いで実施されている。

 双日 <2768> [東証P]、ダイヘン、大日本印刷 <7912> [東証P]は3月、ワイヤレス充電機能を搭載した商用EVでは国内初となる登録の認可を軽自動車検査協会から取得し、公道での実証を開始したと発表。また、同月には大日印と島田理化工業(東京都調布市)がEV用ワイヤレス給電の実用化に向けた実証実験装置を共同開発したことを明らかにしている。

 東京大学は1月、ブリヂストン <5108> [東証P]、日本精工 <6471> [東証P]、デンソー <6902> [東証P]、ローム <6963> [東証P]と共同で、走行中給電を支える技術として、今までにないタイヤ内に電力を給電し、更に車体に給電するシステムを開発したと発表している。タイヤに組み込むコイルの配置を工夫することで、電力の伝送効率を高め、従来よりも大きな電力を送れるようになったという。

 また、ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]にも注目したい。同社は3月、高性能ワイヤレス製品に特化したファブレス半導体企業のパントロニクス(オーストリア・グラーツ)を買収すると発表した。これにより、同社はコネクティビティのポートフォリオを広げ、フィンテックIoT、アセットトラッキング、ワイヤレス給電、更に自動車向けで需要が拡大するNFC(近距離無線通信)への対応が可能になるとしている。

 これ以外では、非接触給電用フェライトシートを手掛ける戸田工業 <4100> [東証P]、ワイヤレス給電に関連するさまざまな製品を取り扱うTDK <6762> [東証P]、ワイヤレス給電対応の銅コイル基板の技術を持つキョウデン <6881> [東証S]、パーソナルモビリティ向けワイヤレス給電の実証実験を行った実績があるアイシン <7259> [東証P]などにも目を配っておきたい。

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