クリレスHD Research Memo(8):グループ連邦経営の進化、DX推進等で成長軌道への回帰を目指す(1)
■今後の方向性
1. 成長戦略の方向性
クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>は、新たに3ヶ年の中期経営計画(ローリングプラン)を公表した。ただ、3つの成長戦略の方向性について大きな変更はない。すなわち、今後の成長戦略として、(1) アフターコロナを見据えたポートフォリオの見直し、(2) グループ連邦経営のさらなる進化、(3) DX推進による生産性の向上・人財不足への対応に取り組む方針である。また、中長期的な経営目標として、「食を通じて、ステークホルダーに対し、『豊かさ』を提供し続ける企業グループ」を掲げている。
2. 成長戦略のポイントとこれまでの進捗
同社は、3つの成長戦略を通じた新たな成長ステージに向けて、2023年2月期を「HOP」、2024年2月期を「STEP」、2025年2月期以降を「JUMP」とするロードマップを描いている。2023年2月期までの進捗については以下のとおりである。
(1) アフターコロナを見据えたポートフォリオの見直し
同社グループの強みである「変化対応力」を最大限に発揮し、「日常」「定番」「地域密着」「低投資」など、アフターコロナ需要に対応したブランド展開に取り組んでおり、2023年2月期はベーカリー業態を展開するサンジェルマン等のグループインを実現した。
(2) グループ連邦経営のさらなる推進
コロナ禍の継続やインフレの進行など外部環境が不安定ななかで「グループ一丸経営」を推進しており、グループ内シナジーの活性化(グループ内業態変更/グループ内FCの実施)、グループ横断的な人員配置、食材共通化・物流見直しなどに取り組んでいる。もっとも、「グループ連邦経営」の要となる各事業会社の個性や自律性が失われることのないようメリハリをつけていく考えである。
(3) DX推進による生産性の向上・人財不足への対応
2021年8月1日に新設したDX推進室を中心として、グループ内ワークフローシステムのほか、経費精算システム、セルフレジ/配膳ロボット、モバイルオーダーの導入などに取り組んでおり、業務の効率化や顧客にとっての利便性向上をはじめ、人財不足というボトルネックの解消に向けて一定の成果や今後の方向性を示すことができた。
3. 今後の取り組み方針
(1) 既存店の更なる質の向上
顧客の生活様式の変化等を踏まえ、これまでのロケーションビジネス(立地重視)からブランドビジネス(ブランド重視)へと転換を図る方針であり、コアブランド(25業態を定義※)におけるコンセプトや専門性のさらなる強化、適正価格の導入によりブランドとしての魅力を高めていく。特に、自店に永く来店いただける理由(コンセプト)の明確化、メニュー・商品アイテムの絞り込み等を実施し、既存店のサービスや料理の質の向上を目指す。
※25のコアブランド:「しゃぶ菜」「デザート王国」「MACCHA HOUSE」「カフェ業態」「雛鮨」「銀座木屋」「沖縄業態」「海南鶏飯食堂」「かごの屋」「あずさ珈琲」「いっちょう」「萬家」「AWkitchen」「Mr.FARMER」「TANTO TANTO」「やさい家めい」「つけめんTETSU」「JEAN FRANCOIS」「遊鶴」「磯丸水産(食堂)」「鳥良」「大衆居酒屋」「サンジェルマン」「レフボン」「サンヴァリエ」
(2) 「守り」から「攻め」への転換
「守り」のスタイルから、投資再開による「攻め」へ転換し、DX投資の拡大やCRM導入、積極的な改装、投資基準の緩和による出店を推進する方針である。とりわけ、(1) の「既存店の更なる質の向上」につながる投資として、ファンづくりのためのCRM導入や戦略的な改装、新業態へのチャレンジ投資、コアブランドの新規出店や業態変更などを計画している。また、同社グループらしい「わくわくプロジェクト」として大型投資・コンセプト開発への準備も進めていく考えだ。
(3) 人財不足への対応
グループ横断的な人財強化に向けて、「人財プロジェクトチーム」を発足(2023年3月1日付)させるとともに、「人財に関する基本方針」※1を制定。人財こそが「持続的な成長を創出する極めて重要な源泉」であるとの認識の下、社員の昇給拡大※2やクルー時給アップ、研修制度の充実、働きやすい職場づくりなどを推進していく方針である。
※1 人財こそが「持続的な成長を創出する極めて重要な源泉」であると認識し、人財を確保し成長させるため、重点項目に沿った取り組みや投資を積極的に行う方針であり、重点項目として、1) 人財が、わくわく仕事に取り組める環境や仕組みを整える、2) 多様な人財の活躍を推進する、3) 人財一人一人を働く仲間として尊重する、4) 教育・研修を通じ、人財の成長を助ける、を掲げている。
※2 具体的には、社員の昇給ファンド総額を例年より拡大し4.1%増加させた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《AS》
提供:フィスコ