タナベ Research Memo(4):2023年3月期2Q累計業績はすべての経営コンサルティング領域が2ケタ増(1)
■業績動向
1. 2023年3月期第2四半期累計業績の概要
タナベコンサルティンググループ<9644>の2023年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比18.7%増の5,386百万円、営業利益で同102.9%増の601百万円、経常利益で同102.0%増の606百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同78.4%増の386百万円と過去最高を更新し、期初会社計画に対してもいずれも上回って着地するなど好調な決算となった。
ウクライナにおける地政学リスクの高まりに端を発したエネルギー価格の高騰や物価上昇、円安の加速などにより、企業収益の先行きについて不透明感が強まる環境ではあったものの、ウィズコロナやアフターコロナ時代に対応するための事業戦略の立案から、DX戦略の推進、M&A支援に至るまですべての経営コンサルティング領域において売上高が2ケタ増収となった。グループ会社との経営コンサルティングメニューの共同開発や顧客の相互送客、専門マーケティングサイトを通じた見込み顧客の獲得など、成長に向けてここ1~2年で取り組んできた施策の成果が顕在化した格好だ。特に、上場大企業や中堅企業、自治体からの引き合い増加が目立った。
売上高のうち、チームコンサルティング契約売上高は前年同期比26.5%増の4,048百万円、期中平均契約社数は同15.8%増の909社といずれも過去最高を更新し、売上構成比率も前年同期の70.5%から75.2%に上昇した。ジェイスリーが新たに加わった効果もあるが、既存事業会社も売上高、契約社数とも伸びており、すべてのKPIで前年同期を上回る好結果となった。
売上総利益率は前年同期の47.2%から46.0%に低下したが、主には子会社が今まで販管費に計上していたコンサルタントの人件費(約90百万円)を売上原価に振り替えたことが要因であり、実質的には上昇したものと考えられる。販管費については人的資本投資やブランディング投資を実施したことにより、前年同期比で32百万円の増加となった。
売上高営業利益率は増収効果により前年同期の6.5%から11.2%と大きく上昇した。第2四半期累計の営業利益率で10%を超えるのは2019年3月期以来4期振りとなる。当時は単体業績の数値であり、その後M&Aで子会社を増やす過程において利益率も一時的に低下したが、シナジー効果により子会社の収益力も向上してきたことがうかがえる。リーディング・ソリューションとグローウィン・パートナーズについては、いずれも会社計画通りの増収増益となった。また、2021年12月に子会社化したジェイスリーについても計画通りに推移したようだ。これら子会社の収益拡大により非支配株主に帰属する四半期純利益が26百万円(前年同期は16百万円の損失)と改善し、親会社株主に帰属する四半期純利益の増益率が経常利益を下回った要因となっている。
(1) ストラテジー&ドメイン
業種別ビジネス戦略やビジョンの策定、サステナビリティ経営に必要なイノベーション、SDGs、新規事業等の最適なビジネスモデル変革を支援するストラテジー&ドメイン領域の売上高は、前年同期比15.2%増の1,384百万円となった。好調な受注テーマとしては、「中長期ビジョンの策定・推進」が同17.8%増、「SDGs実装」が同12.3%増となっており、特に大企業や上場企業、地方自治体向け大型契約の増加が顕著であった。地方自治体向けに関しては、2023年3月期より積極的に取り組むべく専門チームも組成した結果、地域の産業振興やパブリックサービスに関するコンサルティング案件を受注した。同社は全国主要都市に事業拠点を展開している強みを生かして、今後も公共分野を強化していく方針となっている。
なお、新たなコンサルティングサービスとして、「CX戦略構築コンサルティング」「IPOに向けたエクイティストーリー策定支援コンサルティング」を開発・推進したほか、リード獲得施策として「SDGs専門サイト」に加えて「ビジョン・中期経営計画策定の専門サイト」を開設した。
(2) デジタル・DX
DX戦略ビジョンの策定から、4つのDX領域※(ビジネスモデル、マーケティング、マネジメント、HR)の具体的な実装・実行までを支援するデジタル・DX領域の売上高は前年同期比23.5%増の1,055百万円となった。ジェイスリーの売上高が新たに加わったことに加えて、グローウィン・パートナーズなどほかの事業会社の売上も好調に推移した。上場大企業や行政団体向けのBPO(決算業務等の財務業務支援)やERPのリプレイス案件、上場大企業及び地域上場中堅企業や行政法人向けブランディング戦略の立案とそのアウトプットとしてのブランディングサイト制作案件が好調だった。
好調な受注テーマとしては、「マネジメントDX(DXビジョン・ERPリプレイス等)」が同13.6%増、「マーケティングDX(デジタルマーケティング・Webサイト制作等)」が同10.2%増となった。中堅以下の企業規模ではERPを導入していない企業もまだ多いほか、IT人材を抱えている企業も少ないため、同領域についての潜在需要は大きく、繁忙状況が続いている。なお、新たなコンサルティングサービスとしては、「DXビジョン&ロードマップ構築コンサルティング」「IT化構想支援コンサルティング」を開発・推進した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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提供:フィスコ