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【特集】米経済「デトックス」で動くファンド勢、マネー流入機運の銘柄リスト <株探トップ特集>

2月半ば以降、リスク回避ムードが強まった金融市場だが、ハイテク株から割安株に資金をシフトさせる流れも鮮明となっている。銘柄によって見直し買いの継続が見込まれるものもある。

―ベッセント米財務長官発言が市場に波紋、ポートフォリオ再構築の潮流は加速へ―

 日経平均株価は3月11日、一時的に3万6000円を割り込み、約半年ぶりの安値をつけた。背景として挙げられるのが米株式相場の下落で、S&P500種株価指数は2月の高値から10%以上下落して調整局面に入った。巨大なヘッジファンドは投資環境の変化にあわせて資産ローテーションを加速させている。こうした動きは東京株式市場でも着々と行われており、セクターや銘柄によってはグローバルの投資マネーの流入機運が高まった状況にある。

●リスク回避地合いの背景

 2月半ば以降、金融市場ではリスク回避的な動きが強まり、1月に4.8%まで上昇した米10年債利回り(長期金利)は、3月に一時4.2%を割り込んだ。国内では日銀が引き続き利上げのタイミングを模索しており、日本の10年債利回りは1.5%台まで上昇している。こうした日米の金利差縮小はドル安・円高を引き起こし、1ドル=155円近辺だったドル円相場は3月に一時146円台にまで円高方向に振れた。

 ただし、上海株は底堅く推移しており、3月19日に今年の最高値をつけるなど、日米株とは対照的な動きをみせている。米国株の調整について、トランプ米大統領の関税政策が原因と報じられることもあるが、仮に関税問題が主因であれば、主要なターゲットになっている中国の株式も売られるはずである。米経済指標の結果が事前予想からどれほど乖離しているかを示すシティグループ・エコノミック・サプライズ・インデックスをみると、昨年11月にピークを迎えた後、今年2月にはマイナスに転じた。事前予想を下回る米経済指標が相次ぎ、米国経済に対する懸念が強まったことが、米国株の下落の主因であるとみるべきだ。

●ポジション・デトックス

 ベッセント米財務長官は、米国経済は公共支出から民間支出へと移行するなかで減速する可能性があるとの認識を示しつつ、これはより持続可能な均衡に達するために必要な「デトックス(解毒)期間」だと述べた。ベッセント氏は「市場と経済は中毒になっていた。われわれはこの政府支出に依存していた」と述べている。

 米財務長官の言葉に従い、米国経済のデトックスが必要であるならば、投資ポジションにも同様の調整が求められることとなる。つまり、マクロ系のヘッジファンドを中心に投資ポジションの「デトックス」が進むこととなり、具体的には米国経済の成長鈍化を見据えて、これまで米国の成長株に集中していた資金を他の資産に移す動きが加速することとなるだろう。実際に、米国債や金、円やユーロ、中国株やドイツ株などには、資産ローテーションの一環としてマネーがシフトしている。

 セクター・ローテーションも進行し、これまで資金が集中していたマグニフィセント・セブンなどの成長株は売られ、割安株が買われている。ポジション・デトックスの影響は東京株式市場も決して無縁ではなく、ハイテク株が売られる一方で、食品や医薬品といったディフェンシブ銘柄や、エネルギー関連株などが堅調に推移している。米国経済のデトックス期間が続く限り、こうした資産のローテーションも継続すると考えられる。個別株投資においても、グローバルでのポジション・デトックスの恩恵を受けそうな銘柄群に着目しつつ、戦略を調整していく必要がある。

●ディフェンシブのJTは配当利回り4.7%近辺

  ディフェンシブの代表として本命視されるのが、JT <2914> [東証P]である。25年12月期の連結最終利益は、前期比2.5倍の4500億円を計画。前期には訴訟損失引当金の計上があった。株主還元方針として配当性向75%を目安とし、足もとで配当利回りは4.7%近辺と、高配当利回り銘柄として選好されている。

  医薬品では、大衆向け目薬最大手のロート製薬 <4527> [東証P]が物色候補に挙がる。25年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結経常利益は前年同期比10.4%減の333億8300万円。原価率の上昇や研究開発費の増加を背景に減益となっている。2月12日の決算発表と前後してわかもと製薬 <4512> [東証S]の株式大量取得と、ユーロ円建て新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行を公表している。特にCB発行に伴う潜在的な希薄化懸念は株価の足を引っ張ったが、株価は3月7日に昨年来安値形成後、底入れの兆しを見せている。通期の経常利益は8期連続で最高益更新の見通しとなっており、予想通りの着地となれば見直し買いを集めそうだ。

 埼玉地盤に 食品スーパーを展開するベルク <9974> [東証P]にも注目したい。25年2月期第3四半期累計(3~11月)の連結経常利益は前年同期比0.5%減の128億9900万円となり、通期計画(176億3000万円)に対する進捗率は73%にとどまっているが、第4四半期に業績が伸びる習性がある。通期の経常利益が18期連続で過去最高を更新する見通し。低価格のイメージが強いスーパーとして生活防衛関連の側面があり、最近はディスカウント新業態「クルベ」を展開するなど、その色彩を強めている。

 中国・四国で食品スーパーを展開するハローズ <2742> [東証P]の25年2月期第3四半期累計(3~11月)の単体経常利益は前年同期比12.0%増の86億9100万円に伸び、通期計画(109億5000万円)に対する進捗率は79%に上る。通期の経常利益は12期連続で過去最高を更新する見通しであり、株価も回復基調にある。

●エネルギー・電力など円高メリット株もマーク

 割安な銘柄の多いエネルギー・セクターでは、資源開発国内最大手のINPEX <1605> [東証P]の25年12月期の連結最終利益予想が前期比22.8%減の3300億円と低調な見通しながら、中期経営計画において年間90円を起点とする累進配当と総還元性向50%以上とする還元方針を示している。株価は原油相場との連動性が高く、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国のロシアなどを加えた「OPECプラス」による増産といった供給増が懸念されていたものの、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル=70ドル割れから下げ止まりの様相となっており、割安感の是正が進んでいるようだ。

 産業用・家庭用ガス商社の岩谷産業 <8088> [東証P]は水素エネルギーの関連最右翼と位置付けられてきた。25年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結経常利益は前年同期比6.7%増の392億1900万円に伸びたが、通期計画(728億円)に対する進捗率は54%程度にとどまっている。とはいえPBR(株価純資産倍率)は1倍割れの状況にある。

 円高メリット関連株としてはニトリホールディングス <9843> [東証P]や神戸物産 <3038> [東証P]などが代表格となっているが、電力株もこのカテゴリーに位置付けられる。このうち関西電力 <9503> [東証P]は昨年11月に新株発行と自己株処分による株式売り出しを通じて最大約5049億円を調達すると発表。株式の需給悪化が嫌気されて株価は低迷していたが、今年1月に25年3月期の業績予想を見直し、連結経常利益の見通しを前期比41.3%減の4500億円(従来予想は3600億円)に引き上げるなど、損益は改善に向かっている。配当落ち後も円高を享受する銘柄として株価は回復基調を続けると期待される。

 水産物貿易・加工・買い付けが主力の極洋 <1301> [東証P]の25年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結経常利益は前年同期比39.5%増の97億5800万円に拡大し、通期計画(100億円)に対する進捗率は98%に達した。主要魚種のサケマスやエビに加えカニや魚卵、ホタテの販売が好調だったほか、冷凍のクロマグロ、インドマグロに加えてカツオを中心に、外食や量販店向けの売り上げが拡大。寿司種を中心とした生食商材も伸長した。海外では日本産青物や輸出用加工原料の需要が高まったという。1~3月期が業績の谷間となる習性はあるものの、通期の経常利益は5期連続で過去最高を更新し続ける見通し。中期経営計画で株主資本配当率(DOE)3%以上とする方針を掲げている。

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