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【特集】ガザ再建計画の最大の障害はイラン、第1期トランプ政権が残した遺恨は原油相場を刺激 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 イエメン西部を実行支配するアンサール・アッラー(フーシ派)は、パレスチナ自治区ガザへの人道支援物資・電力供給を停止したイスラエルに対し、紅海での妨害行為やイスラエル本土へのミサイル攻撃を再開した。トランプ米大統領は、親イランのフーシ派による攻撃は、イランによる攻撃であるとみなすと発言しているが、フーシ派にためらいはなく、イスラエルでは対空防衛システムの発動やサイレンが鳴り響く日々がまた始まっている。イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの空爆や地上作戦を再開しており、ガザ停戦合意は実質的に崩壊した。

 フーシ派の拠点に対して、米空母ハリー・S・トルーマンなどが攻撃を加えていたものの、戦力が不足していたのか、米空母カール・ビンソンも増援として紅海に到着した。米空母ジェラルド・R・フォードと第12空母打撃群がバージニア沖での軍事演習を終えた後に中東へ向かうとの観測もあり、中東はまた着実に緊迫化している。米アクシオスの報道によると、米国はイラン最高指導者ハメネイ師に宛てた書簡で、核開発の停止を巡り2ヵ月間の猶予を与えたと伝わっているが、米空母ジェラルド・R・フォードが中東に向かうなら、到着するのが約2ヵ月後である。中東戦争が始まるまで残された期間は2ヵ月ということなのだろうか。

●ガザからパレスチナ人を排除する段取りが整いつつある

 ザ・ニュー・アラブの報道によると、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザイド大統領が米国からのメッセージをエジプトのシシ大統領に伝えた。このなかで、エジプトがガザ自治区からのパレスチナ人を引き受けなければ、米国はエジプトに対する援助を削減すると警告したようだ。レバノンのアル・アクバル紙は、エジプトのシシ大統領が「50万人規模のパレスチナ人を一時的にシナイ半島北部の都市に引き受ける意思がある」ことをアラブ諸国の指導者に伝達したと伝えるなど、ガザ地区からパレスチナ人を排除する段取りが水面下で整いつつあるのではないか。

 エジプトによるパレスチナ人引き受け報道は、エジプト国営放送が否定しているようだが、スカイニュース・アラビアによるとトランプ米政権はエジプト案を受け入れると伝わった。米国やエジプトから公式の発表はまだないが、トランプ米大統領が任期中にガザ再建に道筋をつけようとするならば、あまり時間はない。

●イランとの米国の対話の道は絶たれている

 イスラエルの入植地としてのガザ再建に向けて、最大の障害はイスラム組織ハマスやヒズボラ、フーシ派と、こういった武装組織を軍事的にサポートするイランである。米国は対イラン制裁を強化してイランの石油収入を減らし、武装組織に対する軍事支援を限定しようとしているものの、イランの財政が悪化するのを気長に待つとは思えない。イスラエルのために、トランプ米大統領は4年間ですべてを丸く収める必要があり、任期の制約からそもそもイランと対話を重ねるつもりはないと思われる。例えロシアや中国が仲介しようとも、イラン核合意を一方的に放棄し、経済制裁を開始した人物とイランが協議することはないだろう。

 イランと米国の対話の道は、トランプ政権の第1期で絶たれている。イラン外相は戦争の準備は出来ていると述べているが、軍事衝突が始まった場合の落とし所は想像しにくい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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