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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─ターゲットは防衛関連セクター!

経済評論家 杉村富生

「ターゲットは防衛関連セクター!」

●トランプ政権がやろうとしていること?

 何が起こっているのか、何が起ころうとしているのだろうか。肝要なのは現状を正しく認識し、リスク・マネジメントを徹底すること。これは筆者の持論である。年初以来、マーケットにはトランプ旋風が吹き荒れ、株価は翻弄(ほんろう)されている。だからこそ、目先の値動きに一喜一憂せず、トレンドを読むのが一段と重要になろう。

 トランプ大統領が、「猛獣使い」の異名を持つスーザン・ワイルズ大統領首席補佐官、「教育は家庭が担うもの(教育省は不要)」と公言するリンダ・マクマホン教育長官、イーロン・マスク政府効率化省(DOGE)トップなどとともに断行している改革は、戦後の既成秩序の破壊である。

 その範囲はメディア、大学(教育)、政府部門、国際機関など多方面に及ぶ。軍事も例外ではない。彼はリベラルな価値観を追放しようとしている。それと同時に、トランプ政権が狙うのは30兆ドルに膨らんだ政府債務の削減にあろう。この目的に向け、なりふり構わず、あらゆる経費を削減する。

 軍事費の削減については同盟国だって、関係なしだ。まず、在日米軍の機能強化中止を検討する。EU(欧州連合)には「防衛費をGDPの5%にせよ」と突き放し、約75年続いてきたNATO(北大西洋条約機構)軍の最高司令官のポスト(初代は後に大統領になったアイゼンハワー大将)を放棄する、という。

 メチャクチャである。ウクライナには軍事支援停止をほのめかし、「ロシアに譲歩を」と迫っている。これに対し、EUは防衛費の8000億ユーロ(約125兆円)の増額を決めた。ドイツは憲法を改正し、防衛費と国家安全保障費を増やす方針だ。アメリカに頼れない以上、自分の国は自分で守るしかない。当然の行動だろう。

●5カ年計画は前回の1.6倍の規模!

 日本は2023年度スタート、2027年度を最終年度とする5カ年防衛力整備計画(総額43兆円程度)を推進中だ。前の5カ年計画(2019~2023年度)は総額27.5兆円だった。1.6倍のスケールである。特に、ドローンやミサイル、無人機などを使ったスタンド・オフ防衛能力の予算は前回計画の2000億円が5兆円に激増している。

 このメリットを受けるのは三菱重工業 <7011> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]の“防衛三羽ガラス”をはじめ、電子戦に強い三菱電機 <6503> [東証P]、NEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]などだろう。

 日本アビオニクス <6946> [東証S]は三菱重工業、NECが主要顧客である。レーダー装置に強い。菱友システムズ <4685> [東証S]はシステム全般を手掛けている。三菱重工業が筆頭株主(発行済み株式数の31.16%を保有)だ。航空機部品加工の放電精密加工研究所 <6469> [東証S]は同様に、三菱重工業が34.2%保有している。

  防衛関連セクターは息の長い相場が期待できる。アメリカは「世界の警察」としての役目を降りつつある。戦後一貫して国際紛争に関わってきたが、多くの若者の命が失われ、残ったのは巨額の債務、そして“悪評”だけじゃないか。トランプ大統領、および閣僚はみんなそう考えている。「あとは勝手にやれ」。う~ん、厳しい時代が訪れる。

 しかし、これが現実だ。投資に際しては現状を冷静に見つめ、対応していくしかない。とりあえず、ターゲットは防衛関連セクターになろう。好きだ、嫌いだ、などと言っている場合ではない。ここは「続く流れに逆らうな、ついていくのが儲けの道」と思う。なにしろ、年間8.6兆円の国費が投じられる。

 個別銘柄では引き続いて、不祥事(前社長)を乗り越え飛躍を計るnms ホールディングス <2162> [東証S]、サーキュレーション <7379> [東証G]、攻めの経営を展開中のシンクロ・フード <3963> [東証P]、底入れのパチンコ・パチスロ業界をバックに成長を期すJALCOホールディングス <6625> [東証S]に注目できる。

2025年3月20日 記

株探ニュース

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