【特集】川辺 Research Memo(5):2024年3月期は、ハンカチーフの売上増や売上総利益率の上昇により大幅増益を達成
川辺 <日足> 「株探」多機能チャートより
■業績動向
1. 2024年3月期連結業績の概要
川辺<8123>の2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.1%増の13,068百万円、営業利益が同104.9%増の252百万円、経常利益が同73.0%増の355百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同114.4%増の266百万円となった。2024年2月に公表した修正予想(売上高13,113百万円、営業利益183百万円、経常利益299百万円、親会社株主に帰属する当期純利益183百万円)を上回る大幅増益で着地した。
暖冬の影響や一部の国内大手量販店の閉店・売場面積縮小の動きがマイナス要因となったが、全体としてはコロナ禍影響が和らいで人流が回復したことに加え、インバウンド需要回復、販売価格改定、新たなブランドや自社企画商材の積極投入なども寄与した。売上総利益は前期比12.5%増となり、売上総利益率は同2.9ポイント上昇して38.9%となった。販管費は同9.9%増となり、販管費比率は同2.0ポイント上昇して37.0%となった。この結果、営業利益率は同0.9ポイント上昇して1.9%、経常利益率は同1.1ポイント上昇して2.7%となった。特別利益では前期に計上した投資有価証券売却益39百万円が剥落したが、法人税等合計が29百万円減少した。
身の回り品事業は、売上高が前期比2.4%増の10,980百万円、セグメント利益(全社費用等調整前経常利益)が同48.5%増の573百万円となった。品目別売上高はハンカチーフが同6.2%増の8,186百万円、スカーフ・マフラーが同1.5%減の1,270百万円、タオルが同7.7%減の658百万円、雑貨・その他が同15.0%減の864百万円となった。売上高は全体として小幅な伸びに留まったが、利益面は主力のハンカチーフの増収効果や売上総利益率上昇効果で販管費増加を吸収して大幅増益となった。
主力のハンカチーフは、新規取引先開拓や百貨店平場以外でのイベント開催などによる新規売上構築、インバウンド需要による一部ブランド品の大幅伸長、販売価格見直しによる売上単価上昇、高額品施策※1の効果、自社オリジナル企画商材※2やキャラクター商材の導入効果などで売上が拡大し、全体をけん引した。スカーフ・マフラーは、春物市場ではシルクスカーフなどが順調となったが、需要期である秋冬市場において防寒商材が記録的な暖冬の影響を受けたため、通期ベースでは小幅減収となった。タオル、雑貨・その他は、プール関連商品のラップタオルが減収となったことに加え、外出機運が高まった影響でテレビ通販部門のタオルが低調となり、いずれも減収となった。
※1 シェニール織企画ハンカチーフの導入、ハンカチーフ売場で扱う商材としては高額なブランドエコバッグの導入など。
※2 絶滅危惧種をクローズアップした「KATOKOA」、世界の主要都市に焦点を当てた「CHIZUTABI」、47都道府県の地域特性や特産品をハンカチーフとミニタオルのデザインで表現した「47 JAPAN RE DISCOVERY」など。
フレグランス事業は、売上高が前期比14.5%増の2,088百万円、セグメント利益が7百万円(前期は24百万円の損失)となった。人流回復やインバウンド需要に伴って「ACQUA DI PARMA」を中心に既存ブランドが伸長したことに加え、2023年8月に販売開始した「CREED」ブランドによる新規出店も寄与して大幅増収となり、経常損益も利益化した。
2. 財務の状況
2024年3月期末の資産合計は前期末比507百万円増加して12,695百万円となった。現金及び預金が105百万円減少、繰延税金資産が57百万円減少した一方で、受取手形及び売掛金が42百万円増加、棚卸資産が117百万円増加、投資有価証券が525百万円増加した。負債合計は同51百万円増加して5,833百万円となった。支払手形及び買掛金が188百万円増加した一方で、未払法人税等が64百万円減少、有利子負債残高(長短期借入金合計)が98百万円減少した。有利子負債残高は2,486百万円となった。純資産合計は同455百万円増加して6,862百万円となった。利益剰余金が239百万円増加、その他有価証券評価差額金が206百万円増加した。この結果、自己資本比率は同1.5ポイント上昇して54.1%となった。特に懸念材料となる点は見当たらず、全体として財務の健全性を維持していると弊社では考えている。
なお同社は、事業規模に応じた適切な税制の適用を通じて財務の健全性を維持し、資本政策の柔軟性及び機動性を確保することを目的として、2024年8月1日付で減資(資本金の額の減少)を行った。2024年3月期末時点の資本金の額1,720,500千円から1,620,500千円減少して、資本金の額を100,000千円とした。発行済株式総数の変更は行わず、減少する資本金の額1,620,500千円の全額をその他資本剰余金に振り替える。勘定科目間の振替処理のため同社の純資産額及び発行済株式数に変動はないが、法人税等の負担軽減効果が得られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SO》
提供:フィスコ