市場ニュース

戻る
 

【特集】OPECプラス会合は波乱含み、ベースライン巡る積年の問題で協調は不透明か <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●ベースラインを巡る協議は波乱含み

 30日、延期された石油輸出国機構(OPEC)プラスの閣僚会合が行われる。アンゴラやナイジェリア、コンゴなどアフリカのOPEC加盟国の生産量調節の基準となるベースラインで事前協議が難航していることから、本来26日だった開催が見送られた。

 現在、OPECプラスは協調減産を実施しており、産油国はベースラインから割り当てられた減産を達成する必要がある。ただ、割り当てられた生産枠を達成するとしても、ベースラインの水準が変更となれば、生産量が増える場合もあり、今回のようにベースラインを巡る協議では意見の対立がしばしば発生する。

 読者の方々を混乱させて申し訳ないが、OPECプラスの減産は「生産枠の引き下げ」を意味するが、「生産枠の引き下げ」は実際の生産量の削減とイコールではない。例えば、日量100万バレルの減産で合意するとしても、現実の生産量が日量100万バレル減るわけではない。机上の減産と、実際の生産量引き下げは異なり、サウジアラビアやロシアなど主要産油国は机上の数値をめぐって揉めている場合が多い。十分な歳入を確保するため、生産量をできる限り維持したい産油国はベースラインをなるべく高い水準に設定することが重要となる。

●影響力を維持するためには避けて通れない

 OPECプラスの共同閣僚監視委員会(JMMC)や閣僚会合が26日から30日に延期されたことで、対面ではなく、オンラインでの会合に変更となった。30日から国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦(UAE)で始まることから、スケジュールの問題から産油国会合はオンライン会合に変更にせざるを得なかったようだ。

 これまでの経緯からすると、オンライン会合となった場合には重要な決定が見送られる可能性があるが、今回は波乱含みだと思われる。生産枠と実際の生産量のギャップはOPECの積年の課題であり、この部分に注目が集まっているにも関わらず、放置すると産油国カルテルは影響力を失う。集う記者たちの前で机上の生産量を意味ありげに公表する組織になり下がるためである。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫や、世界的な石油在庫の先行指標である米国の在庫推移を確認する限り、OPECプラスの足元の協調減産や自主減産は世界的な石油在庫の引き締まりにほとんど寄与していない。イランや米国の原油生産量が増加しており、OPECプラスの実質的な減産が打ち消されていることが背景だが、生産枠と実際の生産量のギャップも需給の引き締まりを阻んでいる可能性が高い。

 今週の報道によると、一部の産油国が全体的な追加減産を引き続き要求している。減産を実質的な意味のある行動にし、相場を産油国にとって望ましい価格帯で安定させるには実際の生産量を調節する必要があるが、それにはベースラインについての協議を避けて通れない。30日の会合まで時間はあまりないものの、水面下での対話は実を結ぶのだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均