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【特集】プラチナは上値重い、ドル安が下支えも景気減速懸念が圧迫 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は11月、金軟調や景気減速懸念を受けて売り圧力が強まり、昨年9月以来の安値839ドル台をつけたが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止見通しが強まったことをきっかけに地合いを引き締めた。

 中国やユーロ圏の経済指標が悪化し、景気減速懸念が強い。10月の中国の貿易統計で輸出減少が続き、景気回復の遅れに対する懸念が出ている。また、欧州連合(EU)は、今年のユーロ圏の経済成長見通しを下方修正した。

 一方、10月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.2%上昇(前月3.7%上昇)とインフレの伸びが鈍化し、事前予想の3.3%上昇も下回った。米小売売上高も減少し、米FRBの利上げ停止見通しから米国債の利回りが低下し、ドル安に振れたことがプラチナの下支えになった。

 ただ、米国にも景気減速懸念が出ており、こちらは上値を抑える要因である。CMEのフェドウォッチでは、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利据え置きの確率がほぼ100%となり、早ければ来年5月の利下げが見込まれているが、米金融当局者は慎重姿勢を崩さずタカ派の見方を示している。欧州中央銀行(ECB)や英中銀の当局者も利下げは時期尚早との見方を示しており、当面はインフレが落ち着くのを待つことになりそうだ。

●中東の紛争拡大抑制や米政府機関の閉鎖回避は下支え要因

 イスラエルのガザ攻撃が続いているが、中東の紛争拡大が抑制されていることは相場の下支え要因である。イスラエルはイスラム組織ハマスをせん滅するとしてガザ最大のシファ病院に突入した。米国はイスラエル、ハマスと一時停戦と人質解放に向けた交渉を進めているが、イスラエルはガザ南部の住民に避難所へ移動するよう呼び掛け、南部に侵攻する姿勢を示している。また、イラン革命防衛隊がハマス支援を発表、イエメンのシーア派武装組織フーシ派が紅海で貨物船をだ捕しており、中東情勢の行方を引き続き注視したい。

 一方、ジョンソン米下院議長が提示したつなぎ予算案が米下院と米上院で可決され、バイデン大統領が署名、成立し米政府機関の閉鎖は回避された。ただ、今回のつなぎ予算は一部を来年1月19日まで、残りを2月2日まで確保するもので、来年に新たなつなぎ予算案を再び協議することになる。

●プラチナは2年連続の供給不足見通し

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、2023年は33トンの大幅な供給不足が見込まれた。需要が前年比26%増の254トンとなる一方、供給は同3%減の220トンになると予想された。また、2024年は11トンの供給不足で2年連続の不足が見込まれた。需要は同6%減の238トン、供給は同3%増の227トンと予想された。

 WPICのトレヴァー・レイモンドCEOは「今年の100万オンス(31トン)を超える記録的な不足予想に続き、プラチナ市場は2年連続で不足に直面している。このことは、感覚とは裏腹に多様な需要に支えられ、経済面の逆風にもかかわらず、プラチナ市場が底堅いことを示している。2023年のプラチナ需要は旺盛な工業用需要を受けて過去最高水準に達したほか、自動車生産台数の力強い回復、そして最も重要なこととして、パラジウムの代替としてのプラチナ需要の継続的な拡大の恩恵を受けてきた」と述べた。また、「自動車生産台数と販売台数の増加が続き、在庫が消滅すれば、自動車メーカーのより一般的なプラチナ購入パターンが復活し、それによって市場が一段と引き締まってプラチナ価格に上昇圧力がかかる可能性がある」とも述べている。

●NY市場で大口投機家の売り圧力

 プラチナETF(上場投信)残高は11月21日の米国で30.62トン(10月末30.21トン)、20日の英国で12.71トン(同12.99トン)、20日の南アフリカで11.38トン(同11.72トン)となった。景気減速懸念などを受けて合計で0.21トン減少した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月14日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組は3996枚売り越し(前週6958枚買い越し)となり、昨年9月以来の売り越し水準となった。プラチナの供給不足が見込まれているが、10月31日の1万0826枚買い越しをピークとして売り圧力が強まって売り方に転じた。ドル安に振れると、買い戻し主導で上昇するとみられるが、景気減速懸念に変わりがなければ戻りは売られる可能性がある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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