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【特集】河合達憲(auカブコム証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―


米中央銀行の利上げ観測の後退を受けて、日米の株式相場は堅調に推移している。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突は収束のメドがつかず、世界的なインフレも続いている。中国経済の停滞懸念も強まっており、市場の先行き不透明感は払しょくされていない。アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第19回はauカブコム証券の河合達憲チーフストラテジストに話を聞いた。

●河合達憲(かわい たつのり)
近畿大学大学院・博士前期課程修了。日本で数少ない証券専攻修士号のマスター称号を有する。中堅証券調査部にて調査・情報畑一筋で30数年来、企業調査や投資戦略、投資手法などのストラテジー構築に従事。ファンダメンタルとテクニカルを融合した投資分析を実践しており、各種メディアで推奨銘柄の的中率の高さは実証済み。マクロ分析から個別銘柄までトップダウンアプローチでの分析力にも定評。『9割の人が株で勝てない本当の理由』(扶桑社)、『株の五輪書』(マガジンハウス)など著書多数。毎週火曜夜のauカブコム証券ストラテジーセミナーが人気を博し、TV・ラジオにも多数のレギュラー出演する傍ら、2013年~21年まで大阪国際大学、及び大阪国際大学短期大学部にて大学講師としても登壇実績。

河合達憲氏の予測 4つのポイント
(1) 半年後の日経平均株価は3万5000円程度
(2) 半年後のダウ工業株30種平均は3万7000ドル程度
(3) 半年後の円相場は1ドル=135円程度を予測
(4) 個別セクターでは半導体と自動車に注目

―― 足もとの株式相場は堅調に推移しています。半年後の日米の株式相場をどう予測しますか。

河合:私は半年後の日経平均株価を3万5000円程度、ダウ工業株30種平均を3万7000ドルだと予測しています。

―― 今後も日本市場の株高が続くということですが、予測の理由を教えてください。

河合:1つ目は、日米の物価の動きです。これまでは米国の高いインフレ率と米連邦準備理事会(FRB)によるインフレファイティングが、株価の上値を抑えてきました。しかし、ロシアのウクライナ侵攻など地政学的リスクを受けて急騰した原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)も足もとでは落ち着いてきています。これまでの利上げの効果も徐々に出てきており、高インフレは沈静化しつつあります。

 来年11月には米国大統領選挙も控えていることから、2024年の春先までには米政府がインフレ抑制の勝利宣言を発表するでしょう。米金融当局は利下げしないまでも、利上げもしないという状況になりつつあります。米10年債の金利は4%程度で落ち着くと考えています。

 一方、日本では景気を低迷させてきたデフレの問題が後退しつつあります。日銀は10月31日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを23年度、24年度ともに2.8%に上方修正しました。海外投資家はこれを「デフレ脱却に道筋が見えてきた証拠だ」と見て、日本株に買いを入れています。

図1 WTI原油先物(日足)
【タイトル】

―― 岸田文雄政権は11月2日の臨時閣議で賃上げや国内投資の促進策を盛り込んだ約17兆円の総合経済対策を決めました。経済対策の中身には賛否がありますが、日本経済に与える影響をどうみますか。

河合:今回決めた経済対策の効果は半年後には出てくるでしょう。これが株高が続く2つ目の理由です。対策の中身は地味に見えますが、多くの分野に手を打っています。所得税の減税や住民税の課税対象になっていない世帯への給付金も、久しぶりの物価高で委縮している消費者心理に好影響を及ぼすでしょう。24年の春季労使交渉(春闘)で、企業が本気で賃上げを実施すれば、日本の景気は着実に良くなると考えています。

 3つ目は日本のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が来年度に改善していく見通しであることです。企業収益は今期(2024年3月期)も小幅ながら増益で着地しそうです。トヨタ自動車 <7203> [東証P]が24年3月期の業績見通しを大幅に上方修正し、最高益となる見通しを示したことも、市場関係者に安心感を与えました。

―― 金融政策以外で米国株が堅調である背景はありますか。

河合:来年は大統領選がありますから、バイデン政権が株価を引き上げるような政策を打ち出すことが考えられます。これを受けて、ダウ平均も過去最高値に接近していくでしょう。

―― 日銀の金融政策の行方と半年後の円相場の予測は?

河合:足もとの外国為替市場で、円相場は過度な円安・ドル高水準にあります。私は半年後の円相場は1ドル=135円程度だと予測しています。日銀は10月31日に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を再修正しましたが、これは市場関係者の想定内でした。日銀の植田和男総裁が今後、YCCを撤廃することはあるかもしれません。ただ、急激な政策変更はせず、丁寧に実施していくでしょう。日本国債の金利は緩やかな上昇基調となるとみられ、日米金利差は少しずつ縮小していきます。これを受けて、円ドル相場はじわじわと上昇していくとみられます。

―― 日米の株式市場で注目する銘柄とセクターを教えてください。

河合:日米ともに半導体セクターに注目しています。特に日本では半導体セクターの株価は長期間、割安な水準にあります。半導体セクターは、米国と中国の政治経済の摩擦に巻き込まれたり、新型コロナウイルスの感染拡大で思うように生産できなかったりしたため、株価が上がりづらい状況でした。半導体は家電や機械など多くの製品に使われています。今後、普及する見通しのEV(電気自動車)はガソリン車に比べれば数倍の半導体を使います。世界的な半導体需要はさらに増加していきます。半導体セクターには今後も買いが入るでしょう。

 日本の株式市場では自動車関連に注目しています。コロナ禍を受けて、最終製品の生産が鈍ったことから企業体質が筋肉質になり、生産性が向上しています。このため、アフターコロナで自動車生産が増加し、売上高が増えれば、大部分が利益の押し上げにつながります。円相場が下落していることも株高を後押しするでしょう。

(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
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1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。



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