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【特集】半導体工場建設で宮城県に熱視線、経済活性化でパワー全開の出世株特選 <株探トップ特集>

熊本、北海道に続き宮城県にも半導体の炎が燃え上がる。経済活性化期待で、関連銘柄にもビジネスチャンスが広がりそうだ。(写真は杜の都・仙台市)

―熊本・北海道に続け、PSMCとSBI強力タッグでハイテク先端企業集結の気配―

  半導体立国ニッポン復権の狼煙(のろし)が列島各地で上がっている。台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の工場建設で沸く熊本。北海道では次世代半導体の国産化を目的にトヨタ自動車 <7203> [東証P]など日本を代表する8社で設立した「ラピダス」が新工場を建設している。そして10月31日には、宮城県でSBIホールディングス <8473> [東証P]が台湾の半導体大手「力晶積成電子製造(PSMC)」と共同で半導体製造工場を建設すると発表した。にわかに熱い視線が集まる宮城県だが、同地に関連する企業にとっても大きな恩恵となることが期待される。宮城県に絡む関連株のいまを追った。

●一定以上の補助金受領が前提とも

 先月31日、SBIは台湾のPSMCと半導体工場の建設に向けた基本合意書を締結したと発表した。宮城県大衡(おおひら)村の「第二仙台北部中核工業団地」に建設する予定で、政府から一定以上の補助金を受領することが前提となる。SBIとPSMCは今年8月に日本国内での半導体受託生産会社(ファウンドリー)設立に向けた準備会社としてJSMC(東京都港区)を設立し、建設地の検討を進めていた。

 PSMCは車載向け半導体需要の90%以上を占めるとされている28ナノメートル(ナノは10億分の1)以上の半導体を高品質で安価・大量に生産するノウハウを有している。建設予定の工場では最終的に、28、40、55ナノメートルの半導体について、月間4万枚のウェハーの生産を計画している。

●「来夏には着工したい」

 SBIでは「工場建設に向けて、資金調達を含めたより具体的な計画を検討していく」とし、建設開始時期や稼働時期などについては、決定次第改めて発表するとした。ただ、宮城県の村井嘉浩知事は6日の定例記者会見で、JSMC側から「来夏には着工したい」との意向を受けていることを明らかにしている。県はプロジェクトチームを立ち上げ、インフラの整備、人材の確保、住環境、教育環境の整備を進めるという。また村井知事は、仮の話としながら同県に工場を擁する東京エレクトロン <8035> [東証P]など半導体製造装置産業への波及効果にも言及しており、興味深い会見となった。

 半導体受託生産で世界トップのTSMCの工場誘致成功で、全国から注目を浴びている熊本県は、地価の上昇や県外からの相次ぐ工場進出など地域経済の活性化が目を引く。熊本県の前例もあり、宮城県にとってPSMC誘致はまさに天与の好機といえそうだ。前述の東エレクをはじめ、先んじて宮城県に進出している半導体関連企業は少なくない。同県に工場を置く大手メーカーに聞くと、夜明け前の半導体業界において「少しでも景気の良い話は歓迎だ」としつつも、「期待感がないわけではないが、まだ将来の話なので“これから”かな、といった印象」と、いたって冷静だった。確かに、PSMCの工場建設の動きは、いまはまだ序章ともいえ、中・長期での視点が必要と言えそうだ。

●東エレクなど先んずる企業に注目

 宮城県に生産拠点を置く企業では、東エレクが半導体デバイスの製造に用いるプラズマエッチング装置の開発から製造まで行うグループ会社の東京エレクトロン宮城(大和町)を擁しているが、熊本県には東京エレクトロン九州(合志市)があり、半導体製造装置で世界トップクラスの同社にとって、まさに面目躍如の場面が訪れることになりそうだ。

 省力・自動機械大手のCKD <6407> [東証P]は昨年12月、大衡村にある同社の東北工場に隣接する工場の土地・建物を取得したと発表。奇遇にも大衡村は、PSMCの工場建設予定地でもある。半導体分野の需要拡大を見据え、生産体制の強化を目的にして、半導体製造装置向けの機器製品の生産工場を建設する。稼働開始は2023年度を予定しており、会社側では「計画通り進んでいる」と話す。

 半導体試験装置大手のアドバンテスト <6857> [東証P]は、仙台市に半導体試験装置用キーデバイスその他電子部品の開発・製造拠点として子会社のアドバンテスト コンポーネントを置く。また、日本特殊陶業 <5334> [東証P]は同市において子会社のNTKセラテックで半導体製造に欠かせないさまざまな仕様のウエハーチャックなどを供給している。

 そして、経済活性化の恩恵を享受しているのは半導体関連業に限らない。

●“地元の”じもとHDや七十七に活躍場面到来か

 PSMCの工場建設が順調に進んだ場合、宮城県及び東北経済にも大きな経済的波及効果を招くことになりそうだ。金融機関は、資金面でのバックアップという点で活躍場面を迎えることが予想される。特に、仙台市に本社や本店を置く金融機関では、きらやか銀と仙台銀を傘下に持つじもとホールディングス <7161> [東証S]、宮城県地盤で東北最大の地銀である七十七銀行 <8341> [東証P]に注目しておきたい。

 じもとHDについては、今回PSMCと工場建設を進めているSBI傘下のSBI地銀ホールディングスが大株主であることも、大きな注目ポイントといえそうだ。また、七十七は、前週末10日取引終了後に24年3月期の業績予想について、経常利益を365億円から前期比10.4%増の395億円に上方修正。従来の3期連続での過去最高益予想を更に上乗せした。

●カルラ、カメイ、ユアテックなど

 PMSCの工場は27年に稼働予定で、フル稼働の第2期には台湾から来日する技術者などを含めて約1200人体制になると伝わっている。更に、これを契機として半導体関連の企業などが宮城県に進出して来ることも考えられ、人流増加などによる経済活性化で、さまざまな業態に恩恵を与えることも予想される。

 飲食業態にも好機となる。カルラ <2789> [東証S]は東北・北関東を中心に、和食ファミレス「まるまつ」をはじめ多くの飲食チェーンを展開。特に、仙台市を筆頭に宮城県内での店舗数がずば抜けて多いだけに、好影響を受けそう。10月5日には、未定としていた24年2月期通期の業績予想を開示し、最終損益が3億7000万円の黒字(前期は6100万円の赤字)となる見通しを示した。あわせて今期の年間配当予想を5円とし、4期ぶりの復配を計画する。

 やまや <9994> [東証S]はイオン系の酒類専門チェーン大手で仙台市に本社を置くが、酒類販売に加えチムニー <3178> [東証S]などを子会社化して外食事業にも展開しており、もはや“全国区”。それでも、やまやだけでも地元宮城県に54店舗を展開しており、好影響を受ける可能性もありそうだ。10日取引終了後に発表した24年3月期上期(4~9月)の経常利益は、前年同期比4.2倍の26億1300万円に拡大し、従来予想の18億1000万円を上回って着地。通期計画の39億円に対する進捗率は67%に達している。

 カメイ <8037> [東証P]は、東北地方トップの石油・LPガス卸だが、多角化を進め酒類、食料、建設資材、調剤薬局などにも展開しており、経済活性化は同社の追い風になる。9日取引時間中に発表した24年3月期上期(4~9月)の経常利益は、前年同期比3.7%増の77億8100万円となり、従来の減益予想から一転して増益となった。そのほかでは、東北地盤の機械工具商社で地元密着に強みを持つ植松商会 <9914> [東証S]、液晶用ガラス基板加工を手掛け昨年から半導体加工事業にも進出している倉元製作所 <5216> [東証S]、東北電力系総合電気工事会社のユアテック <1934> [東証P]、アセチレン中堅の東邦アセチレン <4093> [東証P]などにも目を配っておきたい。

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