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【特集】プラチナは軟調、中国経済への懸念や欧米の高金利維持が圧迫 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 プラチナ(白金)の現物相場は8月、中国経済の先行き懸念や米国債の利回り上昇を受けて売り優勢となり、昨年10月以来の安値881ドル台を付けた。その後はファンド筋の新規売りが急増し米国債の利回り上昇が一服すると、買い戻し主導で急反発し、981ドル台まで戻した。ただ、中国の不動産業界の先行き懸念が強いことに加え、欧米の購買担当者景気指数(PMI)が低下しており、高値での買いが見送られると上値は限られるとみられる。

 一方、カンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで主催した年次シンポジウムで、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長やラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁がタカ派姿勢を示しており、追加利上げの可能性が残っている。欧米のインフレが抑制され、利下げが見込まれるまでは戻りは売られやすい。

 また、中国の不動産開発大手の碧桂園はデフォルト回避へ債務再編の準備を進めた。人民元建て私募債の返済延長を巡る新たな計画について、社債保有者による投票期限を25日から31日に延期し、先行き懸念が強い。一方、恒大集団は米連邦破産法15条の適用をニューヨーク連邦破産裁判所に申請した。同社はオフショアでの債務再編計画を仕上げ、香港証券取引所で株式の取引が再開されたが、上半期の赤字が発表されるなか、株価は急落した。

 中国国務院が政策調整を強化する方針や、中国人民銀行が不動産政策を調整・最適化する方針を示したが、不動産開発を進めた地方政府の隠れ負債は約1800兆円あると試算されており、不動産バブル崩壊への懸念が高まっている。中国政府は地方政府に債券発行を通じて約20兆円調達し、債務返済に充てることを容認したが、隠れ負債の規模からすると状況が改善するのは難しく、金融危機に対する懸念も出ている。

●9月FOMCで利上げ停止見通しも、11月利上げの可能性

 米10年債利回りは、米連邦準備理事会(FRB)が長期間、高金利を維持するとの見方から、15年ぶりの高水準となる4.35%まで上昇した。ただ、8月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が50.4と前月の52.0から低下し、2月以来の低水準を付けると、米国債の利回り上昇が一服した。堅調な米経済指標が相次いだが、全体で見ると、米FRBの利上げを受けて抑制された。ただ、PMIは節目となる50を維持しており、米経済のソフトランディング期待も強い。

 CMEのフェドウォッチで、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置きの確率は78.0%(前月80.0%)だが、11月は利上げの確率が50.9%(同29.7%)に上昇した。パウエル米FRB議長はジャクソンホール会議の講演で利上げの可能性を示したが、経済指標次第としていた。当面は9月1日に8月の米雇用統計の発表が予定されており、労働市場に対する見方を確認したい。

●NYプラチナでファンド筋の売り圧力

 プラチナETF(上場投信)残高は8月25日の米国で30.95トン(7月末30.68トン)、24日の英国で13.44トン(同13.24トン)、25日の南アフリカで12.74トン(同13.22トン)となった。欧米で増加したが、南アで投資資金が流出し、合計でほぼ変わらずとなった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月22日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは834枚(前週1枚)となった。買い越しは7月18日に1カ月ぶりとなる1万5736枚まで拡大したのち、中国経済の先行き懸念などを受けて新規売りが増加し、前週に昨年9月以来となる1枚まで縮小した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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