【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (41)株式投資の落とし穴は、誰もが知る“基本”にある
横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)
◆売買のタイミングは株式益利回り&PERで見極めよう!
個人投資家が値上がりしそうな銘柄を探すとき、様々な方法があります。たとえば株価チャート、いわゆるテクニカル分析の視点では、株価が新高値を更新している銘柄の中から探すという方法があります。ただし、株価は永遠に上昇し続けることはなく、いずれ天井を打って下落に転じます。購入するタイミングを誤れば、高値掴みになる恐れがあります。
また、いわゆる業績分析の視点からは、これまで業績が好調で、かつ今後も業績の伸びが期待できそうな銘柄から探す方法があります。しかし、業績が好調そうであってもすでに株価には織り込みが進んでしまっている場合もあり、決算発表などをきっかけに材料出尽くしで下落してしまうこともあります。
しかし、このような高値掴みや材料出尽くしに巻き込まれても、ダメージを最小限に抑えることは不可能ではありません。というのも、株で儲けられるか損するかは、株を買った時点ですでに9割は決まっていると考えられるからです。この買いのタイミングをうまくコントロールできれば、ダメージの多くは吸収することもできます。残りの1割は、業績の下方修正や市場環境の変化といった投資家にはどうすることもできない要因によるものですので、こちらについては諦めましょう。
では、どのようにして、株を買うタイミングを考えるのかと言えば、皆さんもご存知のPER(株価収益率)、株式益利回りを使います。
「えッ?そんな基本は誰でも知ってるよー」という声もあるかもしれません。ですが、基本を使いこなせていないから、損をしてしまうのです。では、いつ買えば、どれだけ儲けることができるのかを計算をしてみましょう。
PERは、株価を1株利益で割ることで求めることができます。1株利益が100円のA株があったとします。皆さんがA株に注目した時の株価が1000円だった場合、PERは10倍(1000円÷100円)です。そして、1000円のA株が100円の利益を生み出すわけですから、株式益利回りは10%(100円÷1000円×100)になります。
その後、A株の株価が2000円に値上がりしたとしましょう。すると、PERは20倍になります。2000円のA株が100円の利益を生むわけですので、株式益利回りは5%になります。
つまり、同じ銘柄であるにも関わらず、買うタイミングによって、A株から期待できる利益、いわゆる株式益利回りには差が生じてしまっていることがわかります。
A株を例に解説しましたが、銘柄を発掘するタイミングは人それぞれです。ですから、銘柄を発掘したタイミングでいくらの利益が期待できるのかを、予め計算しておくことができれば、いま購入したらどれだけの利益が期待できるのか、いくらに値上がりした時点で売却を検討したらよいのかという風に、あたりをつけておくことができるようになるのです。
このような計算を日頃から行って追跡していくと、たとえば株価が急落する時にはPERは割安となり、株式益利回りは上昇します。そうしたタイミングで株を買うことができれば、儲ける確度を高めることができます。
逆に考えれば、それなりの株式益利回りを期待できる株価水準でないにも関わらず、どうしてもその株を購入したいという場合には、それでも今この水準で買う理由があるのかをじっくり考えてから購入するようにしてください。
なお、バリュー(割安)株と呼ばれる銘柄のPERは数値が低い場合が多く、10倍未満の銘柄がゴロゴロしています。反対に、グロース(成長)株と称される銘柄のPERは高い場合が多く、100倍という数値の銘柄も散見されます。
一般的に「PERが15倍以下の銘柄を探すとよい」という風に言われていますが、割安であれば儲かる確率は高くなります。しかし、PERという数値だけに固執すると成長株は探せませんし、割安感が乏しいと大化けを狙える銘柄を探し出すことは難しくなります。ですから、15倍という数値はあくまでも一般的な目安として参考にとどめて、銘柄ごとにどのくらいの儲けが期待できるのかを都度計算することが重要になるでしょう。
どの水準で株式を買い、そして売るのかについて予めあたりをつけられる指標があるだけで、衝動的な高値掴みや、まだまだ上がるだろうという期待に基づく楽観論を抑えて冷静な判断ができるようになるかもしれません。ぜひ、皆さんも株式益利回りやPERを使いこなしてみてくださいね!
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株探ニュース