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【市況】チキンレースにFRBが負ける可能性/後場の投資戦略

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

日経平均 : 26457.56 (+282.00)
TOPIX  : 1900.36 (+19.48)


[後場の投資戦略]

 本日の東京市場では主要株価指数が揃って上昇。前日の海外市場において、パウエルFRB議長の講演を無難に通過したことや、米長期金利が上昇する中でも米ナスダック指数が3日続伸したことが安心感を誘い、明日の米12月消費者物価指数(CPI)の発表を前に買い戻しが優勢となっているもよう。安川電機の決算を材料にハイテク関連に買い戻しが入っていることも指数を押し上げている。

 一方、日経平均は大幅に4日続伸しているが、依然として下向きの25日移動平均線を大きく下回っており、買い戻しの域を出ていない。マザーズ指数は大幅高で、一気に100日、75日、25日の各移動平均線を捉えてきているが、ちょうど日足一目均衡表での厚い雲の下限付近のところまで戻していて、そろそろ戻り待ちの売りが出やすい水準ともみられる。

 他方、懸念される材料は日々相次ぐ。昨日は、世界銀行が2023年の世界成長率見通しを1.7%と予想し、昨年6月時点の見通しからほぼ半減させた。これはリーマンショックの影響があった2009、10の両年の縮小に次ぎ過去30年ほどで3番目の低成長に値するという。

 また、ボウマンFRB理事が追加の利上げの必要性を主張したことに加え、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、政策金利が6%まで引き上げられる確率が50%あるなどと発言した。

 こうした中でも、市場は依然として年後半からの利下げ転換を予想しており、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の織り込みも依然として5%未満にとどまっている。こうした状況を受け、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、投資家は楽観的であり、市場の予想とFRBの見通しとの間の乖離について、これをチキンレースであるとした上で、市場はチキンゲームの敗者になるなどと語ったという。

 ただ、こうした頑なFRB高官らの姿勢はあくまでポーズに過ぎないと考えられる。米国の物価水準は依然として高いとはいえ、CPIや平均時給の伸びには明確なピークアウトが見られてきている。一方で、米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数が景況感縮小の50割れの水準に一気に下降してくるなど景況感・景気の変調も著しい。

 ISMサービス業景気指数の50割れは大寒波の影響による一過性要因の可能性もあるが、個人消費の減退が主因である可能性もある。米国ではすでにコロナ禍での財政給付によって貯めた資金が使い果たされ、貯蓄率はコロナ前の水準を下回るまでに落ち込んでいる。一方でリボルビング支払いなど消費者信用残高が急速に増えている。ここから、米ISMサービス業景気指数の50割れは景況感悪化による個人消費の腰折れによる可能性もゼロではないと推察される。

 今後も、米国でのCPIと雇用統計での平均時給の伸びの減速が続く一方で、ISMサービス業景気指数の50割れが続くようであれば、米雇用者数の割合で製造業の4-5倍程も占めるサービス業の悪化は深刻と思われ、FRBもいつまでもタカ派なポーズを取っていられなくなるだろう。今後出てくる指標次第ではあるが、チキンレースにFRBが負ける可能性もあり、その場合は株式市場の底入れが期待されてくる。ただ、短期的にはここから1カ月程度は、経済指標よりも、今後本格化する企業決算に対する見極めが重要と思われ、チキンレースに負けたFRBの利上げ停止・利下げ転換による相場底入れにはもう少し時間がかかろう。(仲村幸浩)
《AK》

 提供:フィスコ

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