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【市況】S&P500 月例レポート ― 期待と歓喜の感謝祭の陰に潜む不安と懸念 (2) ―


●主なポイント

 ○S&P500指数は、経済データに左右される展開となりました。インフレはすでにピークアウトした可能性もあり、低下基調に転じています(とはいえ、単月のデータだけでは判断できません)。予想を上回る小売売上高(かなりの過剰在庫を抱えている点は除外)が堅牢な経済基盤を下支えしており、(多数派ではありませんが)「依然として」経済のソフトランディングを唱える声も僅かながら聞こえてきます。企業収益全般は予想を上回る結果となりました。良好な内容ではありませんが、それでも事前予想を上回りました(ウィスパーナンバー[(アナリストによる非公式の業績予想)]では業績悪化と低調なガイダンスが予想されていました)。総じて期待されていたのが、トンネルの出口に光が見えるかもしれないということです。しかし、このトンネル(FRBによる利上げの中断が出口と定義される)は2023年4-6月期まで続き、今後もFRBによる利上げが続くと予想されています(12月の利上げは0.50%となりそうですが、大半の市場参加者は2023年2月1日の会合では利上げ幅が0.25%に変更されると期待しています)。

 11月に入るとS&P 500指数の取引レンジが縮小して3700から4000の間で推移し(パウエル議長の発言のおかげで11月の取引最終日の終値は4080をつけました)、1ヵ月間の騰落率はプラスとなりました。12月の相場は(12月14日のカンファレンスコールでの)連邦公開市場委員会(FOMC)発表のコメントと家計部門のホリデーシーズンの支出動向に大きく左右されることになると予想されます。また、テレビやラジオが伝えるニュース(と世間の雰囲気)で中心となるのは、12月6日に実施されるジョージア州の連邦議会選挙(上院)の決選投票と与野党間での予算案を巡る駆け引きになるでしょう。株式市場はFOMCが12月の会合で0.50%の利上げを決定するとの見方を強めており、2月には利上げ幅が0.25%になるとの予想が優勢です(僅差で0.50%が続いています)。

 ○銘柄数で97%、時価総額で98%に相当する企業が2022年第3四半期の決算発表を終え、利益は好調ではありませんが、予想を上回って推移しており、事前のウィスパーナンバーよりは大幅に良好な水準となっています。決算発表を終えた486銘柄中335銘柄(68.9%)で営業利益が予想を上回り、485銘柄中342銘柄(70.5%)で売上高が予想を上回りました。売上高は過去最高を更新する見通しですが、販売数量の増加ではなく、販売価格の上昇によるものとみられます。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益は、前期比8.0%増、前年同期比では2.7%減となる見通しです。

  ⇒売上高は、前期比3.5%増、前年同期比13.0%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2022年第3四半期中に株式数の減少によってEPS(1株当たり利益)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第2四半期の19.8%から21.6%に上昇しました。この割合は2021年第3四半期では7.4%でした。(2019年第3四半期は22.8%)。

  ⇒2022年第3四半期の営業利益率は、第2四半期の10.86%から上昇して11.34%となる見通しです(1993年以降の平均は8.26%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

 ○S&P500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の11月の平均値は1.61%となり、10月の2.14%から低下しました(9月は1.91%)。年初来では平均1.86%(10月末時点では1.88%)となりました。2021年は0.97%、2020年は1.73%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降で最低)でした。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは、10月末の4.05%から3.62%に低下して月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、10月末の4.20%から3.75%に低下して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは10月末の1ポンド=1.1467ドルから1.2056ドルに上昇し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=0.9882ドルから1.0409ドルに上昇しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は10月末の1ドル=148.74円から138.05円に上昇し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は10月末の1ドル=7.3029元から7.0925元に上昇しました(同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

  ⇒ドルは高止まりしており、一部の通貨では、海外利益や輸出価格に対する懸念の高まりを受け、ドル高が一段と進みました。

 ○11月末の原油価格は、10月末の1バレル=86.07ドルから同80.45ドルに下落し(今年に入ってから同130.50ドルまで上昇したが、10月は一時同75ドルで取引された)、年初来の上昇率は6.7%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で7.3%上昇しました(11月末は1ガロン=3.649ドル、10月末は1ガロン=3.857ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は66.2%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は56.6%上昇しました(2020年末は同2.330ドル)。

  ⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

 ○金価格は10月末の1トロイオンス=1636.00ドルから上昇して1783.10ドルで月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は10月末の25.88から20.58に下落して月を終えました。月中の最高は26.87、最低は20.31でした(2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12、2017年末は11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●新型コロナウイルスとサル痘

 ○サル痘の感染拡大ペースは鈍化しており、(多くが)感染拡大に歯止めがかかったと判断しています。一部のワクチン接種会場は閉鎖が予定されています。米疾病対策センター(CDC)によると、現時点で米国内では2万9325人の感染が確認されています(10月時点では2万8302人、9月時点では2万5613人)。世界全体の感染者数は8万1225人(同7万6806人、同6万8017人)となっています。

  ⇒世界保健機関(WHO)はサル痘の名称をM痘に変更すると発表しました。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒新型コロナウイルスによる世界全体の累計死者数は、663万人となりました(10月末時点は659万人)。

  ⇒米国は現時点で:

   →新型コロナウイルスの累計感染者数は9870万人となりました(同9750万人)。

   →新型コロナウイルスによる累計死者数は108万人となりました(同107万人)。

   →新規感染者数の7日間平均は11月末時点で4万2451人となり、10月末時点の3万6861人から増加しました。新規感染者数の7日間平均は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点では8万3120人)。また、死者数の7日間平均は285人に減少しました(10月末時点は352人)。

※「期待と歓喜の感謝祭の陰に潜む不安と懸念 (3)」へ続く

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