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【特集】三井郁男氏【ボックス相場続く日本株、7月の市場展望は?】 <相場観特集>

三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)

―日経平均は3万8000円台で膠着、政治情勢・金融政策面での不透明感が台頭―

 週明け24日の東京株式市場で日経平均株価は朝安後にプラス圏に浮上し、上げ幅は一時300円を超えるなど底堅さをみせた。とはいえ6月の日経平均はここまで上下1400円弱の範囲内でのボックス相場となっている。欧州情勢など不透明要因が横たわるなか、日米の金融政策の方向性などを見極めたいとする姿勢もあって、膠着感も強い。来週からはいよいよ7月となり、2024年も下半期に差し掛かる。国内外の金融機関で40年近くにわたり日本株運用に携わってきたアイザワ証券の三井郁男氏に今後1ヵ月間の相場展望について聞いた。

●「3万8000円が下値メド、小売や建設・電子部品株に注目」

三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)

 3月期決算企業が示した今期の業績予想は市場側の見立てに対し保守的なものとなっている。7月下旬から第1四半期(4-6月)の決算発表が本格化することとなるが、計画を上回る進捗状況にある企業が多いとしても、通期の業績予想の上方修正が相次ぐのは、中間期の決算発表シーズンとなるだろう。海外ではフランスの国民議会の総選挙が控えており、極右政党が躍進するリスクが意識されている。日本株の上昇局面の初期のフェーズで買いに動いた欧州の投資家は、直近で利益確定売りを出したが、足もとの欧州株式市場と金利動向を見る限り、欧州投資家による日本株売りが継続するシナリオについてそこまで懸念する必要はないと考えている。半面、日本国内では東京都知事選の投開票日が迫る局面で岸田政権の支持率が低下している。9月に予定される自民党総裁選の動向を巡る不透明感そのものは日本株の重荷となりそうだ。

 日銀が7月30~31日に開く金融政策決定会合も注目ポイントとなる。仮に利上げをするにしても、実体経済に悪影響が及ばないように日銀は配慮して政策を決めるに違いない。金融政策面での不透明感がクリアになれば相場にはポジティブに働く可能性もある。それまでの今後1ヵ月程度の間の日経平均は、3万8000円~3万9500円で推移するだろう。国内消費は極端に落ち込んでいるわけではなく、海外経済も比較的堅調な状況で、日本株の下支え要因となるはずだ。日経平均が3万8000円に接近する局面ではバリュエーション面での割安感も意識されやすい。

 インバウンド関連に調整色を強めた銘柄があるが、国内消費が二極化するなかでも高額消費は堅調に推移するとみられ、百貨店株が底入れに向かうか注目される。また、国内への生産回帰の潮流は建設セクターの受注環境にプラス効果をもたらす。粗利のコントロールなどの対応は不可欠だが、半導体工場の建設需要を取り込んだ鹿島 <1812> [東証P]に続く形で物色対象が広がるか注視している。 電子部品も需要面でボトムアウトの兆しが出ている。TDK <6762> [東証P]が先行して上昇したが、村田製作所 <6981> [東証P]など他の電子部品株に波及する展開も想定できる。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]をはじめ、日銀の政策修正による利益上積みの可能性がある金融株もマークしておきたい。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(みつい・いくお)
1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年近く続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。

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