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【市況】S&P500 月例レポート ― 期待と歓喜の感謝祭の陰に潜む不安と懸念 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500 の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2022年11月
個人的見解:七面鳥も用意され、感謝祭のお祝いムードが広がる。これはトンネルの出口に見える明るい光?それとも対向列車のライト?

 今年の感謝祭は期待と歓喜に満ち溢れたものでした。期待が示すのは米連邦準備制度理事会(FRB)が経済の”減速”を確認して、利上げペースを緩める可能性があること。歓喜はS&P500指数が11月に5.38%上昇し(消費者物価指数:CPIの下落を受けて11月10日は5.54%上昇、11月30日もパウエル議長の発言を好感して3.09%上昇)、10月12日の直近安値からの上昇率が14.06%に達したことです。

 この上昇は(料理の時に食材を詰め込む)七面鳥のように資金を詰め込み過ぎたからです。11月の米国株式市場(5.08%上昇)は海外市場(11.12%上昇)をアンダーパフォームしたにもかかわらず、資金流入が再び勢いづいてきました(とはいえ、海外に投資先をシフトする前に過去3年間のリターンに注目してください。米国は27.71%上昇しましたが、米国を除いた世界の株式市場は1.53%下落しました)。しかし、我々(投資家)は七面鳥のようにさえない市場の動きを(年初来、すなわち2022年の取引開始日に付けた最高値からの騰落率は14.39%下落)を引き続き恐れています。

 今年のブラックフライデー(例年この日に小売業者の業績が赤字から黒字に転換します)は、恒例のセールが開催され、客足が戻ってきました。消費者の購買意欲がまだ衰えていない(とはいえ、これまで以上に選別志向を強めています)ことから、こうした大規模セールが必要とされたというよりも、小売り業者側に販売サイクルの狂いが生じたために(配送の遅れ、事前発注の混乱……)特定の商品を割引販売する必要性があったといえるでしょう。

 我が家独自の購買指数に関して言えば、妻と娘は18回目となるブラックフライデーのショッピングに果敢に繰り出して行きました(昨年同様、今年も10時にソーホーから買い物をスタートしました。早朝5時に百貨店のメーシーズ<M>やミッドタウンに行列ができていた日々はもはや過去のものとなりました)。彼女たち(とレシート)によると、昨年よりも買い物客は多く、購入量も増えましたが、コロナ危機前ほどではありませんでした。(彼女たちの話を聞くと)今年のセール内容は予想よりも良かったようです。

 小売業者(小売業協会やクレジットカード会社)が発表した公式の集計データによると、売上高は前年比2.3%増で過去最高の91億ドルとなりました。しかし、物価の上昇を考慮すると、過去最高となったのは値上がりによるもので、販売数量が増えたわけではありませんでした。また、サイバーマンデーの売り上げは、速報値で116億ドルと、2021年の107億ドル(これは2020年から1.4%減少)から増加しました。

 12月(そして待望の株式市場のクリスマスラリー)に関して言えば、レイムダック化(これ以外にも議会を評する形容詞を数多く思いつくことができます)した議会が仕事に取り掛かる必要があります(下院に関しては開票作業が終了する必要がありますし、上院については有権者は投票を済ませる必要があります[12月6日のジョージア州の決選投票])。一部の政府機関がつなぎ予算の期限を迎える12月16日まで閉鎖されないで済むのであれば(そうなることに一縷の望みを託しています)、年内に採決しなければならない議案は国防予算を含む歳出法案です。現在点では、法案が議会通過するためには超党派での合意(政治家にとっての美徳)が必要となります。

 審議や採決の遅れは経済の停滞につながります。これはFRBにとっては好都合ですが、企業業績や経済には打撃となります。一部(の民主党議員)が債務上限(現時点では31.4兆ドル。S&P 500指数の時価総額は34.3兆ドル)の引き上げを要求することも考えられ、終了が予定されているメディケア関連の助成金の延長を求める動きもありますが、実現の可能性は低いようです。株式市場の観点から言えば、大手企業は2017年に成立したトランプ減税の一部時限措置の期限が迫ることから、その延長を働きかけています(法人税の控除)。対象となる2023年の税額は1000億ドルと見積もられていますが、企業は(研究開発費の償却と金利支払い控除の上限を念頭に置いて)ロビー活動を展開しています。

 EU(欧州連合)は12月5日からロシア産原油の輸入を禁止する予定ですが(2023年2月5日以降は石油製品の輸入も禁止)、ロシアの輸出先はすでに中国、インド、トルコにシフトしています。ロシアのウクライナ侵攻が始まる前までは、ロシアの石油輸出の半分をEUが占めていました。なお、禁輸措置が始まる前日の12月4日にはOPECプラスによる会合が予定されています。

 過去の実績を見ると、11月は60.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.00%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.83%の上昇となっています。2022年11月のS&P500指数は、5.38%の上昇となりました。

 12月は73.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.97%、下落した月の平均下落率は3.08%、全体の平均騰落率は1.36%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2022年12月13日-14日、2023年は1月31日-2月1日、3月21日-22日、5月2日-3日、6月13日-14日、7月25日-26日、9月19日-20日、10月31日-11月1日、12月12日-13日、となっています。

 S&P500指数は11月に5.38%上昇して4080.11で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス5.59%)。10月は3871.98で終え、7.99%の上昇(同プラス8.10%)、9月は3585.62で終え、9.34%の下落(同マイナス9.21%)でした。過去3ヵ月では3.16%上昇(同プラス3.63%)、年初来では14.39%の下落(同マイナス13.10%)、過去1年間では10.66%下落(同マイナス9.21%)、2022年1月3日の最高値からは14.97%の下落(同マイナス13.66%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは20.49%上昇(同プラス26.02%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は11月に5.67%上昇して3万4589.77ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス6.04%)。10月は3万2732.95ドルで終え、13.95%の上昇(同プラス14.07%)、9月は2万8725.51ドルで終え、8.84%の下落(同マイナス8.76%)でした。2022年1月4日の最高値(3万6799.65ドル)からは6.01%下落しました。過去3ヵ月では9.77%上昇(同プラス10.36%)、年初来では4.81%の下落(同マイナス2.89%)、過去1年間では0.31%上昇(同プラス2.48%)しました。

※「期待と歓喜の感謝祭の陰に潜む不安と懸念 (2)」へ続く

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