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【特集】「空港ビジネス関連株」が復活基調、インバウンド再開と三国間流動で稼ぐ <株探トップ特集>

新型コロナウイルス感染症の影響長期化で苦戦するインバウンドだが、そのなかで空港ビジネスは政府の水際対策の緩和傾向や三国間流動の活発化で勢いを取り戻しつつあり要注目だ。

―コロナ禍による最悪期脱し業績は回復へ、入国規制緩和でビジネスチャンス再拡大―

 インバウンドが苦戦している。政府は6月から、1日当たりの入国者数の上限を1万人から2万人に引き上げたが、日本政府観光局によると、7月の訪日外国人客数は14万4500人にとどまった。2021年7月の5万1055人からは83.0%の増加となったが、コロナ禍前の19年7月と比べると95.2%減と低い水準のままだ。

 5月上旬に岸田文雄首相が水際対策を緩和すると発言して以降、インバウンド関連株への関心は一気に高まったが、その後は急速に薄まっている。インバウンド関連の一角でもある「空港ビジネス関連」も同様に大きな盛り上がりに欠ける展開となっているが、一方で空港には着実に人出が戻りつつある。「三国間流動」の活発化など新たな動きもあるほか、今後インバウンドの本格再開となれば、事業環境は更に好転するとみられ、今から注目の度合いを一段上げたい。

●水際対策はG7並みへと緩和の方向

 新型コロナウイルスの感染拡大「第7波」に見舞われるなかにあって、水際対策見直しの議論が深まっている。

 世界的にワクチン接種が進展したことに加えて、現在感染の主流となっているオミクロン株が重症化しにくいタイプであることなどから、各国で水際対策を緩和する動きが加速している。既にイギリスは3月に水際対策を全廃したほか、ドイツも6月に入国規制を全廃。アメリカも6月に入国前の陰性証明書の提示義務を撤廃した。主要7ヵ国(G7)を含む欧米諸国は往来再開へとはっきりと舵を切っている。

 一方の日本では、3月1日からビジネス目的や留学生・技能実習生の入国を認め、6月1日からは前述のように入国者数の上限を1日当たり1万人から2万人に引き上げた。また、同月10日からは外国人観光客の受け入れも再開したが、パッケージツアーに限定していることもあって、思うように伸びていない。

 ただ、岸田首相は8月10日の記者会見で、新型コロナウイルスに伴う水際対策について、「他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるよう緩和の方向で進めていきたい」と発言。入国前検査や陰性証明書の廃止も俎上に上り、規制緩和への期待が高まっている。

●三国間流動が国際旅客回復の大きな要因に

 規制緩和によるインバウンドの本格再開に加えて、注目したいのが「三国間流動」の増加だ。

 三国間流動とは、日本を経由して第三国へ向かう人の流れのこと。多くの国で入国規制が緩和されるなか、アジアと北米などを成田空港経由でつなぐ三国間の乗り継ぎの動きが活発になっており、成田空港の乗り継ぎカウンターには長蛇の列ができる日も多い。

 ANAホールディングス <9202> [東証P]が8月1日に発表した第1四半期(4-6月)連結決算でも、国際旅客事業の売上高は前年同期比4.8倍の622億円へ、旅客数は同5.2倍の68万4000人へと増加したが、東南アジアを出て日本で乗り継ぎ、北米などに移動する旅客や貨物の需要の増加をその要因の一つに挙げている。同社では新型コロナウイルスの影響で国際線の旅客が激減したことを受けて、三国間流動の取り込みに力を入れており、第1四半期決算ではその成果が表れた格好だ。

 日本航空 <9201> [東証P]も同日に発表した第1四半期(4-6月)連結決算で、国際旅客事業の売上高が前年同期比5.6倍の624億円へ、旅客数が同4.9倍の72万8000人へ増加したが、旺盛なアジア~北米間の通過需要も確実に取り込んだとしており、回復の背景には三国間流動があるようだ。

●空港ビジネスの関連銘柄

 インバウンドの本格再開、三国間流動の増加で空港に人出が増えれば、空港関連企業の業績にも大きなプラスに働く。足もとこそ、これらの企業の多くは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて苦戦しているところが多いが、最悪期は脱したとの見方が一般的だ。

 関連銘柄の代表格は日本空港ビルデング <9706> [東証P]だろう。同社は羽田空港旅客ターミナルの管理運営会社で、航空会社への事務室賃貸や航空旅客への物品販売が主な事業。第1四半期(4-6月)連結営業損益は62億100万円の赤字だったが、旅客数の回復に伴い売上高が増加に向かっていることから、会社側では「施設利用料収入や商品売上高が予想を上回った」として、前年同期の111億6800万円の赤字に比べて赤字幅は縮小している。6月末には韓国便の運航が再開されるなど国際線の便数も徐々に増加してきており、今後も順調な回復基調をたどりそうだ。

 空港施設 <8864> [東証P]は、空港関連施設の運営管理会社で、羽田を主力として関西国際、大阪国際(伊丹)、新千歳、那覇など国内12空港で展開している。第1四半期(4-6月)連結営業利益は10億300万円(前年同期比4.2%減)と減益となったが、上期計画に対する進捗率は76%と高進捗となっている。3年ぶりに行動制限のない夏休みで空港への人出も回復しつつあり、同社業績へも好影響を与えている。

 ダイフク <6383> [東証P]は、マテハンシステムの世界的大手で、世界の空港向けに自動手荷物チェックイン機や手荷物搬送システムなどを提供している。第1四半期(4-6月)は受注高が2106億円(前年同期比52.2%増)となり、四半期ベースで過去最高を更新。空港向けも109億円(同41.6%増)と増加した。

 ロイヤルホールディングス <8179> [東証P]は、コントラクト事業の一環として全国の主要空港にレストラン・フードコート・専門店・売店とさまざまな業態を出店する。第2四半期累計(1-6月)連結営業損益は7億3900万円の赤字(前年同期52億7500万円の赤字)と赤字幅が縮小。コントラクト事業では空港ターミナルや高速道路の収益が改善しており、業績回復の牽引役の一つとなっている。

 エージーピー <9377> [東証S]は、航空機への動力供給と搭乗橋などの整備を国内の主要空港で展開。そのため航空需要の動向に影響を受けるが、第1四半期(4-6月)連結営業損益は、運航便数の回復により電力供給機会が増加し、6000万円の赤字と、前年同期の1億800万円の赤字から赤字幅が縮小し、計画比で上振れたようだ。空港内のエンジニアリング事業も、特殊機械設備の保守業務などが増加したという。

 鴻池運輸 <9025> [東証P]は、構内物流に強みを持つ総合物流会社。空港向けでは羽田や成田、関西国際など国内7空港で旅客ハンドリングやグランドハンドリングに加え、空港での手荷物のラッピング、宅配などの業務を請け負う。第1四半期(4-6月)連結営業利益は34億4100万円(前年同期比12.2%増)と2ケタ増益となったが、空港における国内・国際旅客の復便などでの取扱量の増加などが寄与した。

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