【市況】明日の株式相場に向けて=「岸田・黒田会談」水面下の電撃的な思惑
日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより
日経平均は前日終値の時点で、ちょうど200日移動平均線とほぼ同じ水準に位置しており、ここを完全に上に抜ければ、中長期上昇トレンド復活といっても良いタイミングにあった。そういう局面で得てして逆に振れるのが相場のアマノジャクなところだが、同じ時間帯のアジア株市場が軒並み高かったにもかかわらず、一時500円を超える下げとなったのは単なる上昇一服として片付けにくい印象もあった。
その答えは為替市場にある。きょうは、岸田首相と黒田日銀総裁との間で行われた会談がマーケットにさまざまな思惑を生じさせた。前場取引時間中に円高が進み、ドル・円相場は朝方の123円台から昼過ぎには121円台前半まで一気に円が買い進まれる展開となった。もちろん、リアルタイムで岸田・黒田会談の中身が聞こえてきたわけではないが、円安是正の動きが出ると考えるのが自然だ。しかし、水面下ではそれ以上に衝撃的な話も囁かれていたようだ。市場関係者によると「あくまで噂であり真偽は定かではないが、黒田日銀総裁が退任をほのめかした可能性がある」(中堅証券マーケットアナリスト)とする。黒田総裁の任期は来年4月までだが、仮に1年前倒しで任が解かれるという話が事実なら、通貨の番人の退場を受け、これまでの外国通貨に対する円売りの動きは一気に逆流する可能性がある。
「元来、黒田総裁は2期目はやりたくなかったというのが本人の意向であり、安倍元首相に拝み倒されて引き受けたようなもの。その安倍氏が退陣し、それを引き継いだ菅氏も首相の座を降り、岸田政権にバトンを渡した時点で、内閣とのコネクションが切れたような状態が作られてしまった」(同)という。岸田政権はガソリン価格の上昇など庶民の生活を脅かす川上から降りてくるインフレは、何としても回避したい立場にある。指値オペで金利上昇を抑制し、円安を助長するような金融政策スタンスをとる黒田総裁とは路線が明確に違う。となれば、行き詰まった状態で黒田総裁が退任の選択肢を引こうと考えても不思議はない。
しかし、その思惑はとりあえず否定される形となった。午後になって「両氏の会談で為替に関する直接的な話はなかった」とメディアが報道。円安進行については黒田総裁が岸田首相に「緩和目的の金融調節が為替に影響を与えるとは考えていない」と説明し、岸田首相からの言及はなかったという。それを裏付けるように、日銀は国債買い入れオペを臨時で追加した。円相場もつれて円高傾向に歯止めがかかり、全体相場もこれに歩調を合わせて下げ幅を縮小する展開となった。結局、日経平均の下げ幅は225円にとどまり、権利落ち分を考慮すれば実質プラス圏での着地という状況となった。
個別株では、為替や原油価格の動向に左右されにくい“バーチャル空間”をビジネスエリアとする銘柄に目が向いている。豊富なクリエイティブ人材を抱え、独自の映像ノウハウでメタバース事業への展開を視野に置くクリーク・アンド・リバー社<4763>は10連騰となった。また、NFTアートへ積極的に経営資源投下の構えにあるShinwa Wise Holdings<2437>も特筆される強い足だ。このほか、ブロックチェーン技術を活用し独自事業に乗り出しているアイエックス・ナレッジ<9753>をマーク。一方、現実世界のテーマ買い候補としてはサンコーテクノ<3435>に妙味。特殊ねじのトップメーカーだが、4月1日に改正される道路交通法で、運転手を雇う事業者に対しアルコールチェックの義務化が強化されるが、同社が手掛けるアルコール検知器に特需発生の可能性がある。
あすのスケジュールでは、2月の鉱工業生産指数(速報値)、2月の住宅着工件数、2月の建機出荷額、2月の自動車輸出実績など。また、東証2部にノバック<5079>が新規上場する。海外では3月の中国製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)、2月のユーロ圏失業率、2月の米個人所得・個人消費支出、3月の米シカゴ購買部協会景気指数など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年03月31日 13時48分