【特集】原油価格急騰、廃プラ「再資源化」関連株に高まる活躍期待 <株探トップ特集>
原油から製造されるプラスチック製品の価格も値上げが相次いでいる。こうしたなか「プラ新法」が施行され、廃プラ再資源化の動きが加速しようとしている。
―4月1日「プラ新法」施行、加速する資源循環ニーズを先取れ―
ウクライナ危機を背景に原油が高騰している。プラスチックの原料となる資源価格の上昇により、ここにきてペットボトルや弁当容器、ポリ袋などを始めとする関連製品の値上げが相次ぐ。こうしたなか、4月1日に「プラスチック資源循環促進法」(プラ新法)の施行が迫っている。循環型社会への移行を目指すものだが、廃プラ削減に加え「再資源化」に向けた動きも加速させる。ロシアへの経済制裁の長期化が予想されるなか、 原油価格の高止まりが続く可能性が高く、資源としてのプラごみの再生に注目が集まっている。廃プラの再資源化に取り組む関連銘柄を追った。
●4月1日に「プラ新法」が施行
ロシアのウクライナ侵攻を発端に原油価格が高騰。資源価格の大幅な上昇を受け、プラスチック製品も多くの企業で自助努力だけでは従来の製品価格を維持することが困難となっている状況で、価格改定が次々に発表されている。
2020年7月、海洋プラごみ問題などの解決が求められ、プラ利用の抑制を目指しレジ袋の有料化がスタート。4月1日に施行されるプラ新法も、「海洋プラごみ」「気候変動」「諸外国の廃棄物輸入規制強化」などへの対応をにらんだものだが、プラ廃棄物の排出の抑制、そして再資源化を加速させることも目的としている。19年5月には「プラスチック資源循環戦略」が策定され、そのなか30年までに再生利用の倍増、更に35年までに使用済みプラの100%リユース・リサイクルなどで有効利用を目指すことが明記された。「プラ新法」の施行が迫るなか、プラ製品の資源循環ニーズが企業や自治体で急速に高まっているが、足もとの急激な原油高で資源としての廃プラリサイクルにも改めて熱い視線が注がれている。
●ENEOS、三菱ケミは23年度に廃プラの油化開始へ
ENEOSホールディングス <5020> 傘下のENEOSと三菱ケミカルホールディングス <4188> 傘下の三菱ケミカルは昨年7月、「国内最大規模のプラスチックケミカルリサイクル設備を建設」すると発表。三菱ケミカル茨城事業所で、商業ベースでは国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設し、23年度に廃プラの油化を開始するという。廃プラに油化処理を行い、原油と同等に近い状態に戻すことで再利用する事業だ。製造されたリサイクル生成油は、両社の既存設備の石油精製装置などにおいて原料として使用され、石油製品や各種プラスチックへと再製品化されるという。これについてENEOSでは「計画通り進んでいる」と話しており、今後更なる関心を集めることになりそうだ。
こうした最新の技術を用い、さまざまな廃プラの再資源化が進んでいるが、原油高を背景にした現状について、「廃プラリサイクルの本来の目的は、あくまで循環型社会を形成することにある。ただ、原油がこのまま高止まりすることになれば、環境負荷の低減に加え、いま以上に資源としての有効活用という面がクローズアップされてくるかもしれない」(業界関係者)という見方もある。コスト面での課題が指摘されているが、今月6日には米原油先物相場はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の4月限が一時1バレル=130ドル台まで急上昇し、1年でおよそ倍化する状況下において、廃プラ再資源化の進展期待も高まってきそうだ。
●エンビプロ、国内最大級のリサイクルプラントで協業
資源リサイクル大手のエンビプロ・ホールディングス <5698> は、2月14日に新素材ベンチャーのTBM(東京都千代田区)と、廃プラの回収、再生利用を行い、サーキュラーエコノミー事業を協業する業務提携契約を締結したと発表した。TBMは今秋に神奈川県横須賀市で、国内最大級のリサイクルプラントの運営を開始する予定で、エンビプロは事業系1万トン、家庭系1万トン、合計で年間約2万トン規模の使用済みLIMEX(ライメックス=炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む新素材)、及び廃プラ類を回収し、リサイクルに関する人的資源、知見及びノウハウを提供するという。
同社はきょう取引終了後、22年6月期の連結業績予想について、売上高を540億円から550億円(前期比34.4%増)へ、営業利益を23億9000万円から27億2000万円(同27.7%増)へ、純利益を19億5000万円から23億円(同54.3%増)へ上方修正した。金属スクラップ需要が底堅く推移していることに加えて、金属スクラップ価格が上昇していることが要因。また、リチウムイオン電池リサイクル事業における取扱量の増加なども寄与する見通しだ。同時に、4月19日を基準日として1株を2株に株式分割すると発表。また、株式分割に伴い期末一括配当予想を33円から23円へ修正した。株式分割前換算で46円となり実質増額となる。
●活躍のフィールド広げるアミタHD
アミタホールディングス <2195> [JQG]も再資源化ニーズが高まるなか商機を捉えている。2月14日に発表した21年12月期の営業利益は前の期比93.3%増の5億6000万円に伸び、続く22年12月期も前期比43.4%増の8億300万円に拡大し、過去最高益を更新する見通しだ。昨年11月には神戸市の「令和3年度プラスチック資源の地域拠点回収モデル事業運営支援業務」を受託してコミュニティースペースを有する資源回収ステーションの運営を開始、また同年7月にスタートした北九州市における使用済みプラスチック回収実証実験プロジェクトでは、代表企業として参画するなど活躍のフィールドを広げている。また、前週末25日の取引終了後、独立系資産運用会社のMCPジャパン・ホールディングス(福岡市中央区)との合弁会社の設立を発表。これを受け、2000円近辺でもみ合っていた株価は、4.6%高の2171円と3日ぶりに反発した。
●TREHDは統合効果発現へ
TREホールディングス <9247> にも注目。昨年10月にタケエイとリバーHDが経営統合し設立されたが、ここにきて統合効果が鮮明になってきた。廃棄物処理・再資源化、資源リサイクル、再生可能エネルギー、環境エンジニアリング、環境コンサルと事業領域も広く循環型社会の形成が急務ななかで活躍期待をいっそう募らせる。2月14日、22年3月期の連結業績予想について、営業利益を57億円から74億3000万円へ、純利益を33億円から44億2000万円へ上方修正した。同時に発表した第3四半期累計(21年4-12月)決算は、営業利益51億4300万円、純利益30億1800万円で着地している。同社は昨年10月に設立したため前期及び前年同期との比較はない。中間処理施設における分選別強化により有価物の回収量が増加したことや、搬出品の付加価値化や製品化などが奏功したことが要因。また、資源相場の高値水準の継続も寄与する。
●リファバスG、再資源化ニーズ捉える
リファインバースグループ <7375> [東証M]は産業廃棄物の再資源化で合成樹脂を製造販売するが、今月16日には廃漁網をリサイクルした再生ナイロン樹脂「REAMIDE(リアミド)」を、グローブライド <7990> へ提供を開始したと発表。これを受けて、株価は一時9.4%高と急伸、再資源化の動きに対する投資家の関心の高さをうかがわせた。昨年7月には、子会社のリファインバースが、前述した三菱ケミのプラスチック油化事業への原料プラ供給について基本合意書を締結するなど、循環型社会でのニーズを捉えようと懸命だ。株価は、今月8日につけた直近安値970円を底に切り返し、現在は1200円を挟みもみ合っている。
●DIC、エフピコ、サニックス、日製鋼
インキで世界トップクラス、樹脂や電子材料なども展開するDIC <4631> と食品トレー・弁当容器大手でリサイクルに注力するエフピコ <7947> にも注目。両社は協業により、発泡ポリスチレン容器の完全循環型リサイクルを目指し、ケミカルリサイクルの検討を行っている。従来、日用品雑貨などにリサイクルされていた色柄付き発泡ポリスチレン容器を、ポリスチレンの原料であるスチレンモノマーへ再生し、最終的にエフピコの製品へのリサイクルを目指すという。
そのほかでは、廃プラの回収、燃料化から発電まで一気通貫で行う「資源循環型発電事業」を展開するサニックス <4651> にも妙味がありそうだ。業績は厳しいものの、1月31日につけた162円を底にジリ高継続。きょうは小幅安ながらも頑強展開となっている。また、高品質なリサイクルプラの生産と、効率的な連続生産を可能とする技術で注目を集める日本製鋼所 <5631> の動向にも目を配っておきたい。
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