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【特集】原油100ドルは近いか、さらなる経済正常化でジェット燃料需要が回復へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

 米ファイザーが開発している新型コロナウイルスの治療薬である「パクスロビド」の効果は絶大のようだ。発症3日以内の患者に投与した場合、投与していないグループに比べて入院・死亡リスクが9割程度減った。一回の治療費は700ドル程度と見積もられており、かなり高額だとしても同社が開発したワクチンと比較して副反応は乏しく、コロナ禍はおそらくこれで終わりである。

 アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)はこの新薬がゲームチェンジャーとなると述べたが、そのとおりになるだろう。すでに生産が始まっており、再来週の感謝祭までに緊急承認が得られるようならば、米国は失われたクリスマスを取り戻すのではないか。新薬の供給拡大とともに、購入余力のある国の経済は急速に正常化していくと思われる。

●新型コロナ克服を視野に需要回復ペースが加速

 北半球の冬場における新型コロナウイルスの再流行リスクは原油相場の高騰を抑制する主な要因だったが、ほとんど意識されなくなるだろう。パクスロビドが確保できているならば、人々は邪魔なマスクから開放されて自由に動き回ることから、石油需要の回復ペースが加速するだろう。航空機による移動が急回復すれば、ジェット燃料の需要回復が本格化するのではないか。

 新薬によって需要回復の腰折れ懸念が払拭されると、需要見通しが相場を更に押し上げるだろう。少なくとも年内は石油輸出国機構(OPEC)プラスが月次で日量40万バレルの増産ペースを維持することから供給不足が続くことを覚悟しておきたい。更なるエネルギー高は景気回復を一段と圧迫する。

●増産圧力の高まりにOPECプラスはどう動くか

 各国の経済指標からすると企業や家計は足元のエネルギー高にかろうじて耐えている。燃料高を背景とした緊急給付が実施される国があるにしても、欧州の天然ガス相場の急騰は一巡しており、燃料需要の高まる冬場をなんとか乗り越えられるのではないか。ただ、追加増産を見送ったOPECプラスに対する圧力が拡大していくことは避けられないだろう。景気回復は盤石ではなく、各国政府としては余計なリスクを低減したい。

 次回のOPECプラスの閣僚会議は来月2日に行われる。ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物やブレント原油が10月の高値を上回っていくならば、OPECプラスに対する怨嗟の声が強まるだろう。1バレル=100ドルは近いか。主要国が地球温暖化に歯止めをかけるために化石燃料の排斥を目指しているなかで、世界最大の産油国である米国の増産は期待できず、主要産油国のサウジアラビアやロシアに向けられる視線は厳しくなっていく。パクスロビドの登場によってコロナ禍の完全終了が視野に入っているが、OPECプラスはコロナ再流行による需要の下振れをまだ警戒するのだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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