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【特集】カーボンリサイクルの本命技術、「メタネーション関連株」躍動の時 <株探トップ特集>

「2050カーボンニュートラル」実現の国際公約を果たすうえで不可欠なCO2の再資源化。こうしたなか、「メタネーション」実用化に向けた取り組みが活発化している。

―水素とCO2からガス原料を合成、脱炭素社会実現の有効手段として注目高まる―

 米国のインフレ懸念などがくすぶるなか、この日の東京市場で日経平均株価は8日続落となった。ただ、コンピューターを用いて気候変動を分析する研究分野を開拓した米プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎氏のノーベル物理学賞受賞決定が刺激となり、環境関連株の一角を物色する動きも散見された。10月31日から11月12日にかけて英国グラスゴーで第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されることもあり、同関連株からは目が離せない。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという国際公約を果たすうえで、大きな役割が期待されているのが二酸化炭素(CO2)を資源として再利用する「カーボンリサイクル」で、今回はその実用化で有力視されている「メタネーション」と呼ばれる技術にスポットを当てた。

●政府は早期実用化を後押し

 メタネーションとは、 水素とCO2から天然ガスの主成分であるメタンを合成する技術のこと。メタン合成時にCO2を原料とすることから政府は「カーボンリサイクル」の有望な技術のひとつとして位置づけており、 脱炭素社会を実現する手段として注目されている。政府が6月に策定したグリーン成長戦略では、仮に国内の都市ガスすべてをメタネーションによる合成メタンに置き換えた場合、国内のCO2排出量の約10%を削減することが可能なほか、都市ガス導管など既存のインフラを活用できることから、 カーボンニュートラルに向けてコストを抑えつつ、より円滑な脱炭素化への移行が期待できると指摘。50年までに都市ガス全体の90%を合成メタンから作り出す目標を掲げ、水素直接利用などその他の手段とあわせてガスのカーボンニュートラル化の達成を目指すとしている。

 メタネーション技術については、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が17年度から21年度にかけて実機での実証実験を行っているが、今後は実用化・低コスト化に向けた設備の大型化や高効率化といった課題への対応が必要となる。そこで経済産業省は6月、より効率の高いメタン合成の方法や原料となる水素を安く調達する供給網の在り方などを検討する「メタネーション推進官民協議会」を設立。INPEX <1605> 、日揮ホールディングス <1963> 、日本製鉄 <5401> 、三菱マテリアル <5711> 、千代田化工建設 <6366> [東証2]、デンソー <6902> 、住友商事 <8053> 、三菱商事 <8058> 、日本郵船 <9101> 、東京電力ホールディングス <9501> 、関西電力 <9503> など幅広い業種の企業が参加している。

●ガス業界の取り組み活発化

 メタネーションの実用化に向けた取り組みが活発化しているのがガス業界で、東京ガス <9531> は22年3月から実証実験を開始する予定だ。これにより、同社は再生可能エネルギー由来の電力調達から合成メタン製造・利用までの一連の技術・ノウハウの獲得に加え、水電解装置・メタネーション装置の実力値や課題の把握、システム全体での効率などの知見を得たい考え。メタネーションについては、既存技術である「サバティエ」の実証や、より一層の高効率化を目指す「ハイブリッドサバティエ」、設備コスト低減が見込める「PEM(固体高分子電解膜)CO2還元技術」や「バイオリアクター」などの革新的技術開発を複数の機関と連携して進めるとしている。この実証実験では日立造船 <7004> のメタネーション装置が利用されることになっており、同社の民間企業からの受注は今回が初。納入時期は22年2月が予定されている。

 大阪ガス <9532> は、水をCO2とともに再生可能エネ電力で電気分解することによって水素と一酸化炭素(CO)を生成し、更に触媒反応によってメタンを合成する「SOEC(固体酸化物を用いた電気分解素子)メタネーション」技術の研究に取り組んでいる。同社は既にSOECの低コストとスケールアップに適した新型SOECの実用サイズセルの試作に成功しており、30年頃の技術確立を目指しているという。

 西部ガスホールディングス <9536> は9月下旬に「カーボンニュートラル2050」を策定し、このなかでメタネーション・水素利用による都市ガスの脱炭素化推進などを打ち出している。

●多様な業種で高まる注目度

 このほかでは、アサヒグループホールディングス <2502> がアサヒグループ研究開発センターにIHI <7013> 製のメタネーション装置を導入し、9月から国内食品企業では初となる実証実験を開始した。同社はCO2の排出量削減のためにさまざまな技術革新に取り組んでおり、この実証実験はCO2分離回収試験装置で回収したCO2の有効な用途を開発することが目的。メタネーションで製造した合成メタンは将来的に、ボイラーや燃料電池などへの使用をはじめとした工場内でのカーボンリサイクルにつなげる構えだ。

 また、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 傘下のJFEスチールや商船三井 <9104> などが参画している「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG(ワーキンググループ)」は7月、メタネーション技術によって製造されたメタンが船舶のゼロエミッション燃料になり得るとする研究結果を発表した。WGは今後、このメタンの船舶燃料としての実現可能性を更に検証するため、大型輸送船によるCO2の輸送、再生可能エネ由来水素の供給、メタンスリップ(燃料として主機に投入されたメタンのうち、燃焼せずに排気されるメタンのこと)の防止、液化したメタネーション燃料の供給インフラ、及び経済性といった課題への取り組みを進める計画だ。

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