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【市況】政局回避もスウェーデン通貨は伸び悩み【フィスコ・コラム】


半世紀ぶりの解散・総選挙か??と注目されたスウェーデンの政局ですが、危機的状況はいったん回避されたもようです。ただ、来年の総選挙に向け、なお波乱が予想されています。通貨クローナへの影響も、注視する必要がありそうです。


スウェーデン議会では6月21日に内閣不信任決議案が可決され、ロベーン首相はいったん辞任を決意。ところが、7月7日の同氏への信認投票では反対票が過半数を割り込んだため、改めてロベーン政権が発足することに。高福祉かつ平等社会のイメージが強い北欧で、これまで政治情勢の混乱はあまり目立ちませんでした。しかし、来年の任期満了に伴う総選挙に向け政局はなお収束せず、リスク要因として意識されそうです。


政局流動化のきっかけは、家賃規制法の改革でした。スウェーデンでは国民が劣悪な住宅環境に悩まされた経緯から、第2次世界大戦後、国民が適正な住宅を入手するのは基本的な権利とされています。しかし、新自由主義の影響で民営化が進み、供給不足や家賃の高騰など住宅問題は重要な課題となっています。ロベーン政権は今回、家賃の規制緩和を進めようとして連立内の亀裂を生んでしまいました。


ロベーン首相は、2014年の議会選で所属する社会民主労働党(中道左派)の躍進により選出されました。ただ、2018年9月の不信任決議を受けた第2次政権の発足に数カ月を要するなど、政権運営は不安定になっていました。現在も少数政党による連立政権の弱体ぶりが露呈されています。家賃の規制緩和をめぐっては、連立相手の左翼党(左派)などが反発し、内閣不信任決議に発展しました。


こうした政治情勢の混乱は、同国で急速に進む格差拡大と切り離すことはできません。与党はこれまで、富裕税の廃止など高所得者層を擁護するような政策を推進しています。スウェーデンは、平等と公平を実現する福祉大国としての地位を築いたものの、経済成長優先の政策に傾きました。これにより2000年以降は高成長を遂げますが、次第にそのペースは鈍化し、福祉を切り詰めざるを得ないのが実情です。


コロナ禍でも、スウェーデンは福祉国家とは思えない対応でした。他の欧州諸国のようなロックダウン(都市封鎖)で感染を抑制するのではなく、集団免疫を目指します。その結果、死者は14000人で、死亡率は世界有数です。平等社会はすでに過去のものとなり、格差社会が拡大。そこへコロナ禍に見舞われ、政府への不満が噴出した格好です。家賃規制法で首相に反旗を翻した左翼党の党首が支持を集めるのはそのせいだと思われます。


スウェーデン中央銀行は緩和収束のシグナルを市場に送り始めており、クローナは底堅く推移しています。ただ、ロベーン首相は今後策定する予算案が通らない場合には辞任を示唆しており、政局リスクを嫌気した売りは逃れられそうにありません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

 提供:フィスコ

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