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【特集】正常化に向かう米国経済、石油の過剰在庫は圧縮へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

 3月に入って米国の景気回復が鮮明となっている。新型コロナウイルスのワクチン接種ペースが加速しているなかで、経済活動が正常化に向かっている。米国では一日あたり320万回程度のワクチンが投与され、あと3ヵ月程度で人口の75%の完全接種が完了する見通し。ファイザー、モデルナ、ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)が製造する国産ワクチンが十分に供給されていることから、他の主要国と比較して景気回復見通しが鮮明である。

 ワクチンの効果か不明だが、集団免疫の獲得前にすでに感染者数の増加が抑制されているように見えることも景気見通しを明るくしている。欧州やインド、カナダなどでコロナの流行が悪化しているが、英国や米国、イスラエルなどワクチン接種で先行した国で感染者数の大幅な増加は見られない。米国でJ&Jのワクチン接種が血栓発生の報告を受けて一時中断されるにしても、景気見通しは上向きである。

●雇用の本格回復でエネルギー消費は上向きに

 年初までは米国の雇用回復の遅さを懸念しなければならなかったが、3月の非農業部門雇用者数(NFP)の伸びは加速した。雇用が本格的に回復する兆候である。コロナショック後、ミシガン大学やコンファレンスボードが発表する米消費者信頼感指数は低水準で推移していたものの、3月にはっきりと上振れしていることは雇用環境の好転を実感させる。3月のNFPは1億4412万人と、パンデミック前の1億5200万人規模にはまだ届いていないが、失われた雇用を年内に取り戻すことはもしかしたら可能なのではないか。

 3月の米国の週間平均労働時間は34.9時間と年末・年始から増加する傾向にある。一部の業種では人手不足が深刻化しているようだ。2月の雇用動態調査(JOLTS)で、求人件数は736万7000件と統計開始以来の最高水準に近づいており、米経済の復調は明らかである。雇用がさらに回復していく可能性が高く、エネルギー消費は上向いていくだろう。

 米国で 石油製品の消費はガソリンが約半分を占める。米エネルギー情報局(EIA)が発表する週報でガソリン需要の4週間移動平均は日量868万2000バレルまで増加した。昨年9月以来の需要期並みの水準である。2020年はコロナ禍の真っ只中だったことから、昨年9月の需要は例年と比べて弱いにしても、足元の需要の強さには目が向く。

 ワクチン接種を完了した人々の活動が活発化するなかで、航空機による移動も正常化に向かっているようで、ジェット燃料需要にも上向く兆候があるという。EIA週報でジェット燃料需要の4週間平均は日量116万7000バレルと年初からのトレンドはおおむね横ばいであるが、経済活動の正常化の波はいずれ航空業界にも訪れるだろう。

●過剰在庫の取り崩し見通しが現実味を帯びる

 ニューヨーク市場でウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物の調整安が一巡した印象は限定的だが、3月以降は下値が広がるわけでもなく、ほぼ一定の水準で上下を繰り返している。新型コロナウイルスの流行を乗り越えて世界的に石油需要が回復し、石油輸出国機構(OPEC)プラスが増産するなかでも過剰在庫が減少を続けると期待されている反面、十分に需要が回復するのか確信が持てないことが値動きに反映されているようだ。

 ただ、世界最大の石油消費国である米国の需要回復が鮮明になれば、過剰在庫の取り崩し見通しは現実味を帯びる。2月で減少が一巡している米国の石油在庫の取り崩しが再び始まると相場は上向くだろう。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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