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【特集】プラチナはレンジ形成、米景気回復期待も欧州の先行き懸念残る <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は2月に2014年9月以来の高値1336.57ドルをつけたのち、ドル高などを受けて上げ一服となったが、世界経済の回復見通しに変わりはなく、1100ドル直前で押し目を買われた。バイデン米大統領がインフラ投資計画を発表したことで米国の景気回復期待は強いが、欧州諸国ではロックダウン(都市封鎖)で景気の先行き懸念が残っていることからレンジを形成し、方向性を模索する動きとなっている。ただ、米政権は第2弾となる育児や医療、教育など社会的インフラ投資を近く打ち出す見通しである。また、欧州諸国のロックダウンが解除されれば、景気回復期待からプラチナはレンジ上限を試す可能性が出てくる。

●プラチナは欧米の景気見通しが焦点

 バイデン米政権は3月11日に1兆9000億ドル規模の追加経済対策法を成立させた後、31日に2兆ドル強のインフラ投資計画を発表した。これは数百万人の雇用につながるインフラ整備や気候変動への取り組み、介護などの福祉サービスを充実させる内容である。財源は企業増税で確保する。また、米政権は4月中に第2弾となる社会的インフラ投資を打ち出す見通しであり、第1弾と合わせると財政規模は4兆ドルを超えるとみられている。財源は富裕層への増税が見込まれている。ただ、共和党は計画を3分の2余り縮小する必要があるとしており、議会での協議が難航するとみられる。米政権は夏までに成立させたいとしており、今後の協議の行方を確認したい。

 欧州では新型コロナウイルスの感染拡大を受けてフランスがパリ近郊でロックダウンを導入したのち、全国に拡大した。また、ドイツはロックダウンを4月18日まで延長した。欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁は、ECBが先に示した今年4%の経済成長目標の達成が危うくなっているとの見方を示しており、景気の先行き懸念が残っている。ワクチン接種や感染拡大の行方、ロックダウンが解除できるかどうかを確認したい。

 国際通貨基金(IMF)が6日に発表した世界経済見通しによると、今年の世界の成長率予想は6%に上方修正された。前回予想は今年1月時点の5.5%。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に対し、米国などが大規模な対策を打ち出したことを受け、1976年以降で最も高い成長率を見込んでいる。今回の見通しでは米国とそれ以外の国との差が大きくなった。ただ、IMFは見通しには高度な不確実性があると強調しており、回復がとん挫することになればプラチナの上値が抑えられるとみられる。

●米英のプラチナETF残高が増加

 プラチナETF(上場投信)残高は4月6日の米国で40.11トン(2月末39.57トン)、1日の英国で19.26トン(同19.11トン)、南アフリカで16.36トン(同16.37トン)となった。景気回復期待の高まりを受けて米国と英国で投資資金が流入した。引き続き買われれば2月の戻り高値を試すとみられる。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月30日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは3万0606枚となり、2月16日の3万6577枚をピークとして縮小した。景気回復期待が高まれば買い意欲が強まるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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