【特集】経済正常化で活躍の舞台へ、「警備保障」関連株に復活の金メダル <株探トップ特集>
ワクチン接種開始で経済活動正常化への期待が高まるなか、警備保障関連株には復活ロードが鮮明に見えてきそうだ。追い風が吹くなか、再評価機運が高まっている。
―新型コロナに五輪延期の追い打ちでも堅牢さ、ワクチン接種でリベンジ開始―
新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、経済活動正常化への期待が高まっている。足もと、米長期金利の上昇に翻弄(ほんろう)され株価は波乱展開となっているが、実勢経済は着実に冬の季節を乗り越え、春の陽光がその復活ロードを照らし出だそうとしている。株式市場では、新型コロナ感染拡大に伴う影響が直撃し大きく売られてきた銘柄に買い戻しが進んでいた。こうしたなか、企業活動の活発化で、同様に活躍期待が膨らむはずの「警備保障関連株」は蚊帳の外といったムードに置かれている。東京オリンピック・パラリンピック開催への不透明感も株価の重荷になるが、実はコロナ禍においても警備関連企業の業績はしっかりしているものも多い。ワクチン接種開始で新型コロナとの闘いが新しい段階に入り、きょうから6府県で緊急事態宣言も先行解除されるなか、活躍が期待される警備保障関連株の周辺を取材した。
●「ないよりあった方がいい」
振り返れば、警備保障は東京五輪関連の一角として注目の的だった。2019年には大阪での主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)に続き、ラグビーワールドカップ日本大会などビックイベントが相次いだことで、折に触れて警備保障関連株にはスポットライトが当たった。そして20年、満を持して五輪開催を迎えようとしていた矢先に、新型コロナウイルスの感染拡大が水を差す。そして、昨年3月には21年への延期が決定すると、時代の寵児(ちょうじ)とばかりにもてはやされたイベントをはじめとする一連の五輪関連株は、感染拡大による経済低迷への懸念と相まって急落を余儀なくされることになった。
確かに警備業界においても、相次ぐイベントの中止や店舗の休廃業、テレワーク推進による公共交通機関の利用者減などによる影響は免れなかった。しかし、そうしたなかにおいても業績は底堅い状況にある。
ある業界関係者は「セキュリティー事業の多くはストック型のビジネスであり安定的な収益が寄与している。また、個人・法人、業種を問わず幅広い客層にサービスを提供していることも堅調の理由だろう。ワクチン接種により人の往来が回復してくれば景況感も戻ってくる。結果として、警備業界全体の業績も上向いてくると考える」。東京五輪の行方については、関係者への配慮からか口は重いが「どんな形であれ、ないよりは当然あった方がいい」と話す。
●セコム「期待感は大きい」
セコム <9735> は、ALSOK <2331> とともに東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と「オフィシャルパートナー契約」を締結しているが、コロナ禍での警備業界の現状をどうみているのだろうか。
セコムでは「警備業界は比較的コロナのダメージが少なかったといえるが、とはいえ新型コロナの感染拡大で営業活動の足が鈍り、新規開拓などにおける影響を受けたのは事実だ。ワクチン接種で、営業活動が戻ってくることへの期待感は大きい」(コーポレート広報部)と話す。東京五輪については「大会警備を担う立場として、五輪開催に向け準備を行ってきた。前回(1964年)の東京五輪でも警備を担当しており、今回も役割をまっとうしていきたい。開催については判断を待つことになるが、さまざまな警備ニーズに応えられるように準備は進めている」(同)という。
同社は、2月5日に発表した21年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結営業利益は前年同期比1.8%減の1004億1600万円となったが、通期計画の1240億円(前期比13.2%減)に対する進捗率は81%に達している。また、防災事業については建設業界の影響が大きいことから、下期偏重の傾向が強いこともポイントだ。
●ALSOKは新サービスで攻勢
ALSOKもまた、ワクチン接種による経済活動の活発化を背景にした、見直し機運の高まりに期待が持てそうだ。機械警備業務において法人向けサービスとして、ライブ画像確認を標準装備した「ALSOK-G7(ジーセブン)」販売を推進。機械警備の需要が高まるなか、ニーズを捉え攻勢をかけている。また、大規模イベント警備などの高度化・効率化に向け、東京五輪の警備でも活躍が期待される「ALSOKスタッフ等連携システム」、交通誘導業務の品質向上及び省人化に寄与する「ALSOK交通誘導システム」の販売を行っている。同社は、21年3月期の連結営業利益段階で前期比2.2%増の376億円を見込む。
●CSP、進捗率は83.7%
セントラル警備保障 <9740> の21年2月期第3四半期累計(3-11月)連結営業利益は前年同期比16.6%増の37億6700万円に伸び、通期計画45億円に対する進捗率は83.7%となった。機械警備部門で画像関連サービスが好調に推移し、常駐警備部門、運輸警備部門の減収を補った。1月には、マンション向け新サービスの一環として、コムシス(横浜市西区)と共同開発したマンション用無人受付端末「よくらす」の販売を開始すると発表。新型コロナの感染拡大により、対人接触機会の回避や新しい生活様式など、生活を巡る環境が急速に変化しているが、これまで人を介して行っていた施設利用の手続きや住生活に必要な各種申請、情報共有などについて無人受付端末を介して提供するという。コロナ禍でのマンション管理組合のニーズへ対応し、加えてマンション管理会社には管理受託案件における業務の付加価値向上、管理員省人化による人的コストの削減などを通じ、サービス品質および不動産価値の維持・向上の実現を目指すという。年間100棟への販売を目標として、4月1日からサービスを開始する予定だ。
なお、東京五輪に向けて設立された「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体」は、セコムとALSOKが共同体代表を務め、CSPも理事会社として名を連ねている。
●セコム上信越、トスネット、東洋テックにも活躍素地
こうした現状を踏まえ、別の業界関係者は「上場している警備各社に関していえば、イベント警備に比重をおいていない企業が多いことも比較的ダメージが少なく済んだことの要因といえそうだ。一方、イベント警備を主力とする企業については、イベントやコンサートがほぼない状態なだけに厳しい状況が続いている。機械警備や常駐警備、現金護送などにも当然影響はあったとはいえ、ではコロナで緊急事態宣言が出たから、あす契約が打ち切られるというものではないからだ」と内情を語る。
そのほか警備保障関連では、セコム上信越 <4342> [東証2]、トスネット <4754> [JQ]、東洋テック <9686> [東証2]など、商い薄には注意が必要だが、今後の社会情勢の変化とともに目を配っておく必要がありそうだ。リベンジ消費への期待が高まるなか、活躍場面回帰への可能性も高い。
●エルテスは「スマート警備コネクト」
また、警備業界への再評価機運が高まれば、新機軸を打ち出している周辺企業にも関心が高まる可能性もある。ネットリスク回避のビッグデータ解析・ソリューションを手掛けるエルテス <3967> [東証M]は、2月19日に100%子会社エルテスセキュリティインテリジェンスが、格安ホームセキュリティー「リーフィー」を提供するStrobo(東京都文京区)と、警備管制クラウド「スマート警備コネクト」を共同開発し、警備会社向けに提供を開始したと発表。同サービスは、警備会社がシステム開発を行うことなく、駆けつけ警備サービスを利用者に提供できるクラウド型の警備管制サービス。警備員駆けつけサービスの申し込み受付から、利用者宅での異常発生時に伴う警備員派遣の管制業務、月額サービス費用・駆けつけ費用の決済まで一気通貫で対応する。駆けつけのための警備管制システムを持たない警備会社でも、システム投資をすることなく駆けつけ警備サービスの提供が可能となるという。警備業界は中小の企業も多いことから、今後このサービスに対するニーズが高まりそうだ。
●監視カメラであいHDなどにも注目
コロナ禍において、急速に機械警備へのニーズが高まるなか、監視カメラ市場にも目を向けてみたい。調査会社の富士経済が発表したセキュリティー関連の国内市場の調査によると、監視カメラの市場規模は23年には19年比7.2%増の638億円に伸びると予想。アナログカメラのリプレースでも高単価なIPカメラの採用へシフトし拡大するとみている。「IPカメラは20年に縮小するものの、小売店舗や商業施設、オフィスビルなど幅広い施設で採用されていることや、リプレース案件でもアナログカメラからIPカメラにシフトしていくことで、今後も市場の拡大が予想される」と分析している。IPカメラは23年には同16.4%増の496億円に拡大すると予想する。
IPカメラはネットワークカメラとも言われ、同関連ではあい ホールディングス <3076> 、池上通信機 <6771> 、兼松サステック <7961> などに活躍素地が広がりそうだ。このなか、あいHDの21年6月期第2四半期累計(7~12月)の連結営業利益は前年同期比3.6%増の46億7300万円となり、通期計画の80億円(前期比5.3%増)に対する進捗率は58.4%に達しており、コロナ禍にあっても業績は堅調だ。
●見直し機運の高まりに勢いも
緊急事態宣言について、政府は10都府県のうち6府県できょうから先行解除を行った。残る首都圏4都県については、感染拡大防止を徹底し従来の期限である7日に解除する方針だ。五輪開催については、いまだ不透明感は残るものの開催の方向で動き出している。もちろん新型コロナの感染状況次第で流動的だが、大会組織委員会の橋本聖子会長は、無観客開催は想定していないことや、中止及び再延期については否定したと複数のメディアへのインタビューで答えている。大会の可否や開催方式などを含めタイムリミットが迫るなか、東京五輪へ向けて関心は一層高まりそうだ。
新型コロナワクチン接種による経済正常化への道は、いま始まったばかりといえる。経済活動の活発化は、警備保障関連株にとって大きな追い風になることは間違いない。また、コロナ禍での東京五輪開催について、アンケートなどによると否定的な意見が多いのも事実だが、開催の方向で進み始めたなか、これもまた見直し機運の高まりに勢いをつける可能性もある。
株探ニュース