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【特集】ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (33)短期売買も長期投資も、バリューもグロースも、有望株は業績評価で決まる【市場マップ】

足元から将来の業績の数字を読み取ろう!
横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆企業の安定性を図る「自己資本比率」分布

 最後に、「自己資本比率」の分布マップをみていきましょう。自己資本比率は、返済義務のない自己資本が、全体の資本のうちどのくらいの割合であるのかを表しています。つまり、自己資本比率は会社を経営していくための安定性を表す数値であり、その数値が高いほど安定性・安全度が高い企業だと考えることができます。

 「自己資本比率」の分布マップは、自己資本比率の水準に応じて、濃い緑色の「+80%以上」から濃いオレンジ色の「10%未満」まで9段階に濃淡をつけて色分けしています(図8参照)。濃い緑色ほど安全性が高く、濃いオレンジ色ほど安全性が低いことになり、白色が40%あたりの水準を表しています。一般に自己資本比率の目安として、50%以上が優良企業、20~49%であれば標準的とされる一方、10%を下回る水準は注意を要するとされています。なお、金融業についてはこのような目安で他業種と一律に比較するのは適しておりませんので、銀行、証券、保険セクターはこの分布マップの対象外(白色のスラッシュで表示)となっています。

図8 市場マップの「自己資本比率」分布マップ
【タイトル】

 「自己資本比率」の分布マップ内の緑色やオレンジ色、白色の小さな四角形の上にマウスのポインタを移動すると、業種と市場、コード番号、銘柄名、株価、上昇・下落率、自己資本比率の値をポップアップウインドウで確認することができます。この四角をそのままクリックすれば、個別銘柄の「決算」のページへと移動できます。「自己資本比率」は好況の時には一般に注目度の高い指標とはいえませんが、経済危機や不況が深刻化した場合などには企業の安定性・安全度を測るための尺度として関心が高まります。経済は好調な時ばかりではありません。いつか訪れる危機を見据えて普段から企業の安定性にも注意を払っておきたいですね。
 
 なお、「自己資本比率」の項目を市場別に表示させても大きな違いはなさそうです。ただ、×印の表示は債務超過であることを表していますから、該当企業は確認しておきましょう。

 いつの時代にも盛り上がる話題の一つに、「グロース銘柄が儲かるのか、それともバリュー銘柄の方が儲かるのか」というテーマがあります。株式投資では、いろいろな視点から銘柄の価値が算出され、それらに基づいて割安な銘柄が買われ、割高な銘柄が売られます。ですから、バリュー投資とグロース投資のどちらが正解というわけではなく、どちらの投資手法がその時に優位性が高いかということです。株式投資では右肩上がりに資産を増やすことができればいいわけですから、どちらの投資手法が自身のやり方として合っているのかが重要なのです。

  前回、「バリュー分布」の「PER」「PBR」「配当利回り」の各項目について解説しました。今回ご紹介した「業績・財務分布」で企業の収益性を見たい時には、「経常増減益率」や「売上高増減率」、「売上営業損益率」に加えて、「バリュー分布」の「PER」を組み合わせて使えば分析の精度をより高めることができるでしょう。同様に「業績・財務分布」の「自己資本比率」で安定性・安全度を見たい時には「PBR」を併用して分析を行うことで精度を上げることができるでしょう。

 多くの投資家は、現在の株価が適正な水準よりも割安か、割高かを判断しながら動いています。企業の本来の力を算出することができるのであれば、株価が叩き売られた時には値上がりを狙って買うことができ、熱狂的に買い上げられた時には売ることができる「ターゲットプライス・トレードテクニック」を普段の売買に活用していくことができるようになります。どんな時にでも株価を冷静に判断し、周囲に流されることなく売買を行っていきたいですね。


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