市場ニュース

戻る

【特集】テレワーク常態時代の健康管理最前線、ヘルスケアサポート関連株はここを見る <株探トップ特集>

テレワークの導入拡大は、企業に従業員の健康管理で新たな課題をつきつけている。

―導入拡大「在宅勤務」と健康管理の“新しい関係”―

 新型コロナウイルス感染症対策として テレワーク導入が急速に拡大している。これに伴い懸念されるのが、長期間に渡る不慣れな在宅勤務での心身面でのストレスだ。緊急事態宣言の解除で会社への出社も一時緩和傾向にあったが、ここにきて新型コロナの感染者数が急増。市中感染の広がりが懸念されており、再びテレワークが加速しそうな気配だ。一部大手企業では在宅勤務の常態化も進むなか、企業側にとっては社員の メンタルヘルスを含め健康面での管理が大きな課題となっている。ストレスチェックや、さまざまなサービスで社員のヘルスケアをサポートする関連株の動向を追った。

●ストレスチェックにスポットライト

 新型コロナの感染拡大は、経済活動を麻痺させ企業業績にも大きな影を落とすが、同時に産業構造の変化を促すことになった。コロナ禍という未曽有の逆風を追い風にすることで、ウィズコロナの寵児として登場したテレワークに絡むソリューションやオンラインを活用した新産業への視線は熱い。しかし、テレワークの弊害として、一般的にコミュニケーション不足や、新しいスタイルでの業務への不安など、社員の精神的ストレスの増加に不安を抱く企業も少なくはない。“新しい日常”が求められるなか、感染対策の一つとして定着し始めたテレワークだが、そこにはココロとカラダという健康面での弊害も生まれ始めている。

 そもそもストレスチェックは、選択回答の質問票に労働者が記入し、それを分析することにより、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査で、「うつ」などメンタルヘルスの不調を未然に防止するための仕組み。労働安全衛生法の一部改正により2015年12月から、労働者が50人以上いる事業所において、従業員に毎年1回実施することが義務付けられている。

●先駆する富士通

 さまざまな企業が競合するストレスチェック業界だが、日本を代表するIT企業の富士通 <6702> は、この分野でも先駆する。同社は、5月22日からストレスチェックシステム「e診断」の無償提供を開始した。これにより、新型コロナ感染症対策に伴うテレワークの急速な拡大を背景に、在宅勤務者を多く抱える企業の従業員や自治体などの職員のメンタルヘルス対策を支援するという。e診断は、01年の提供開始以降、継続的な機能強化を重ね、現在累計約950社、217万IDの発行実績がある。また、6月30日までとしていた無償提供の申込期間を7月31日まで延長し、それに伴い無償利用期間も10月31日まで(最大90日間の無償利用が可能)とした。会社側では、「新型コロナ感染症の影響で、多くの企業の方が在宅勤務を続けており期間を延長した。無償申込数については、2ケタ以上の引き合い、申し込みがある」(広報)という。

●ARMは「問い合わせ増加」

 メンタルヘルスケア大手のアドバンテッジリスクマネジメント <8769> は、ここ矢継ぎ早に新サービス提供や企業向け無料トライアルキャンペーンを実施し、時代の要請を背景にニーズを捉えている。今月15日には、全国の受講者に向けてリアルタイムで行うメンタルヘルスケア「双方向型オンライン研修」に「EQ(感情マネジメント力)」や「エンゲージメント」などの新メニューを追加し提供開始。同サービスは、コロナ禍で急拡大した在宅勤務によって、管理職は部下のマネジメントに苦慮しているとし、上司部下間のコミュニケーションが喫緊の課題であることを踏まえ新たなメニューを加えた。同社が手掛けるさまざまなサービスについて、「問い合わせは増えている。その後のケアの部分で、それぞれの課題に応じたソリューションを提案していきたい」(広報)と話す。5月14日に発表した決算では、21年3月期の業績見通しは新型コロナによる影響を現段階で合理的に算定することが困難なことから未定とし開示しなかったが、20年3月期の連結経常利益は前の期比3.1%増の9億5400万円に伸び、4期連続で過去最高益を更新している。株価は、3月中旬に付けた年初来安値477円を底に攻勢へと転じ、6月10日には上ヒゲで直近高値の969円まで買われた。現在は調整し800円を挟みもみ合っている。

●コロナ禍で、卸売・小売業で心身の状態がマイナス傾向

 ARMでは、5月末から6月にかけて、同社のメールマガジン会員(企業の人事労務担当者や産業保健スタッフなど)を対象に、「コロナウイルス禍の課題等に関するアンケート」を行った。それによると、従業員の心身の状態については、「概ねマイナスである」(55.7%)、「非常にマイナスである」(8.3%)と合わせ、64.0%が「マイナス」と捉えている。一方、「非常にプラスである」(0.6%)、「概ねプラスである」(10.2%)を合計すると10.9%となり、マイナス面ばかりでないこともうかがえる。

 業種別でみると、卸売・小売業は「マイナスである」(概ねマイナスである、非常にマイナスである)と捉える割合が高くなり、一方、情報通信業はその割合は低いという結果になった。情報通信業については、もともとストック型のビジネスモデルであることやテレワーク、オンライン化の拡大による需要の増加など、市場環境の影響を受けにくかったと推察。また業種の特性上、テレワーク環境が既に整っていることで、他業種と比べてスムーズな移行ができ、負担も少なかったことが考えられると同社では分析している。

●パイプドHDは「こころの健診センター」

 パイプドHD <3919> は、情報資産プラットフォーム「スパイラル」提供する傘下のパイプドビッツが、クラウド型ストレスチェックサービス「こころの健診センター」無償お試しプログラムの提供を先着50社で行っている(8月31日まで)。会社側では「無償プログラムの提供先からの反応は非常に好評だ。在宅勤務が広がるなか、支援の一つとして、こうしたサービスの提供を今後も進めていきたい」(広報)と話す。業績も好調だ。同社は6月30日に発表した21年2月期第1四半期(3-5月)の連結経常利益が前年同期比31.6%増の2億8300万円に拡大している。業務効率化ニーズが高まるなか、主力のクラウド型データ管理プラットフォーム「スパイラル」のアカウント数が増加したほか、新型コロナ感染拡大の影響を受けるなかで広告事業の利益を伸ばしたことも大幅増益に貢献した。併せて、レンジ形式とする通期の同利益予想を見直し、10億~12億円(従来は7億~12億円)に下限を引き上げている。株価はこの決算を受け翌日に急伸、上ヒゲで1837円まで買われたが、現在は1400円水準にある。ストレスチェックの重要性が高まるなか、再浮上の機をうかがう。

 そのほかでは、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス <6575> [東証M]は、グループのヒューマン・フロンティアが企業・団体のメンタルヘルスケアを行うEAP事業を展開。法人を対象にカウンセリング(従業員とその家族を含む)、休職者・復職者支援、ストレスチェック・集団分析及びその後の職場環境改善、研修(各種メンタルケア、ハラスメント防止、ワークライフバランス、職場活性化など)などの提供を行っている。また、大塚商会 <4768> はメンタルヘルス対策・健康管理までを可能にするオールインワンパッケージ「ストレスチェック実務安心パック」を販売している。

●オプティム、切り口多彩で魅力満載

 テレワークが拡大するなか、体調管理に加え新たなサービスで攻勢を掛ける企業も相次いでいる。オプティム <3694> はテレワークにおける業務管理・モチベーション・体調管理・生産性向上をAIで支援する「Optimal Biz Telework」を6月10日から販売開始した。テレワーク環境下では、上司から部下の業務内容・稼働状況、また顔色などが「見えない」ため、「従業員の健康状態、モチベーションが把握しづらい」「生産性が把握しづらい」「適正な評価が困難」などの課題があるとし、これらを解決するため、従業員の業務内容や体調などを「見える化」することで、オフィスで働く以上の生産性を実現できるよう支援するサービスだという。加えて、従来のOptimal Bizを導入済みの顧客はスムーズに導入可能としている点も大きなポイントだ。また、同社はMRT <6034> [東証M]と「オンライン診療ポケットドクター」を共同開発しており、この分野においても株式市場での注目度が高い。更に直近では、1日に医療業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマとした医療メディア「Medical DX(メディカルディーエックス)」をオープンするなどニーズを果敢に捉えている。株価は3月13日につけた年初来安値1405円を起点に上昇波動に乗り、先週13日には3775円まで買われ年初来高値を更新。その後は上昇一服、3300円近辺で推移している。

●ベネワン、エスエムエスに活躍のステージ

 福利厚生代行サービスで需要を捉えるベネフィット・ワン <2412> は、6月11日から「ベネワン・プラットフォーム」の提供を開始。同サービスは、従業員のスキル・評価などの人事データや健康情報を一括管理し、データの見える化・分析を通じて、従業員のパフォーマンス向上や組織の活性化を促進するというもの。一括で管理された情報を活用し、従業員、チームごとのデータの抽出・比較をはじめ、健康診断やストレスチェックの受診をリマインドすることもできるという。株価は6月2日に2507円まで買われ年初来高値を付けた後、2100円を挟みもみ合っており次の展開を待つ状況だ。

 また、9日にリモート完結型の健保向け「特定保健指導サービス」などが、導入100件、利用者1万人を突破したと発表したエス・エム・エス <2175> にも注目したい。ここ、企業と健保が一体となって従業員やその家族の健康管理を戦略的に実践する「健康経営」への動きが高まりをみせていることに加え、新型コロナの感染拡大に伴い、対面形式や集合形式などによる指導実施を控える通知が厚生労働省から出されるなどリモート指導へのニーズも高まっているという。「リモートチャット指導特定保健指導サービス」は、メタボリック症候群など生活習慣病の発症リスクが高い人に対して、管理栄養士が生活習慣の見直しをサポートするサービス。在宅勤務が長引くなか、メンタル面に加え運動不足などから生活習慣病へのサポートも重要になってきており、活躍の舞台は更に広がりをみせそうだ。株価は、6月初旬に直近の高値をつけ、その後は軟調展開もジワリ調整一巡の気配が漂っている。

 さまざまなデータやデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズに対応した合理的なビジネスモデルを構築していくDXに、株式市場でも熱い視線が向けられている。ヘルスケアでのソリューションを手掛ける企業も、さまざまな面からDXを深耕することで商機を捉えようと懸命で、その点でのテーマ性も内包しているだけに目が離せない。コロナ禍を背景に、ヘルスケアをサポートする企業は、いま新たな成長ステージでの飛躍期を迎えようとしている。

株探ニュース

日経平均