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【特集】Society5.0の担い手「スマートシティ」関連、トヨタ参入で気炎 <株探トップ特集>

政府は「スマートシティ」を未来社会「Society5.0」を実現する場と位置づけ、株式市場でも新たな物色テーマとして浮上する可能性がある。関連株の動向を追った。

―大阪など各地域で構築が進む、最先端技術の活用により街が抱える課題解決へ―

 大阪府と大阪市は10日、次世代の街づくりである「スマートシティ」戦略の素案をとりまとめた。人口減少・超高齢化社会に起因するさまざまな課題に対し、官民連携で先端技術を活用した解決策を提示する都市を実現するもので、2025年の大阪万博に向けて基盤の確立を目指す。こうした動きは他の地域にも広がっているほか、民間企業でもトヨタ自動車 <7203> が建設計画を明らかにするなど関心は高い。政府は スマートシティを未来社会「Society 5.0」を実現する場と位置付けており、新たな物色テーマとして浮上する可能性がありそうだ。

●手法は分野横断型に移行へ

 国土交通省はスマートシティを「都市の抱える課題に対してICT(情報通信技術)などの新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営など)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義。具体的には、IoT(モノのインターネット)ロボット人工知能(AI)ビッグデータなどを積極的に取り入れることで、交通渋滞の緩和や高齢者向け移動手段の拡充、エネルギーの節約、健康寿命の延伸、防災といった課題を克服し、人々のQOL(生活の質)向上や継続的な経済発展につなげることを目的としている。

 これまでスマートシティといえば、エネルギーをはじめとして特定分野を対象とした「個別分野特化型」の手法を用いたものが多かったが、最近では最先端技術を使って環境やエネルギー、交通、通信、教育、医療・健康など複数の分野を網羅した「分野横断型」が増えており、その代表的な例としては三井不動産 <8801> が主導する千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」、パナソニック <6752> や学研ホールディングス <9470> などがパートナーとなっている神奈川県藤沢市の「Fujisawa SST」などが挙げられる。

 政府が19年6月に閣議決定した「統合イノベーション戦略2019」では、 スマートシティの実現を通じた「Society 5.0」の社会実装を柱のひとつとして盛り込んでおり、国土交通省では「重点事業化促進プロジェクト」として群馬県前橋市や香川県高松市などの構想を後押しする構え。また、同年8月には内閣府と総務省、経済産業省、国土交通省が共同で「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立し、会員には大成建設 <1801> 、積水ハウス <1928> 、奥村組 <1833> 、日本工営 <1954> 、明電舎 <6508> 、CYBERDYNE <7779> [東証M]、理経 <8226> [東証2]、パスコ <9232> 、長大 <9624> などが名を連ねている。

●大崎電、NICT発ベンチャーとタッグ

 スマートシティ推進に関するプロジェクトや実証実験を巡る企業の動きは昨年あたりから一段と活発化しており、NTTドコモ <9437> は19年5月に京都府とスマートシティづくりのための連携・協力に関する協定を結んだほか、東急不動産ホールディングス <3289> は同年7月にソフトバンク <9434> と共同で街づくりに取り組むことで合意している。

 また、NEC <6701> と鹿島建設 <1812> 、日立製作所 <6501> 、アクセンチュア(東京都港区)、産業技術総合研究所、データ流通推進協議会の6者は19年11月、スマートシティ構築に関する内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)を受託。NECが全体を統括し、鹿島はルール・制度やビジネスモデルの検討を、日立はアーキテクチャ検討を担う。

 このほか、大崎電気工業 <6644> は19年12月に、情報通信研究機構(NICT)発ベンチャーのノウザー(東京都小金井市)と共同で、エッジコンピューティング技術とスマートメータリングネットワーク技術を組み合わせたスマートシティ向けの新しいインフラシステムを開発することを明らかにした。

●トヨタは21年初頭の着工を計画

 今年に入って話題を呼んだのが、トヨタが1月に発表した「コネクティッド・シティ」プロジェクトだ。これは自動運転MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)ロボット、スマートホーム技術、AIなどを導入・検証する実証都市を20年末に閉鎖予定の東富士工場(静岡県裾野市)跡地に作るもので、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる街を想定。21年初頭に着工する計画で、世界中のさまざまな企業や研究者の参加を募っている。

 2月には博報堂DYホールディングス <2433> 傘下の博報堂と住友商事 <8053> が共同で、スマートシティ実現に向けた事業開発の一環として、レジャー用品や電動工具など準生活必需品シェアリングサービスの実証実験をスタート。鹿島や大和ハウス工業 <1925> 、野村不動産ホールディングス <3231> 、富士フイルムホールディングス <4901> 、京浜急行電鉄 <9006> 、JR東日本 <9020> 、空港施設 <8864> 、日本空港ビルデング <9706> などが出資している羽田みらい開発は「HANEDA INNOVATION CITY」の一部を今年7月初旬に先行開業すると発表した。

●ミネベアミツミ、両毛システムなどにも注目

 他の関連銘柄としては、米ラスベガスに続いてマレーシアでもスマートシティ実現に取り組むNTT <9432> や、ベトナムの複合企業ビングループが同国で進めているスマートシティ開発に参加する三菱商事 <8058> など。

 スマートシティソリューションを展開しているミネベアミツミ <6479> 、富士通 <6702> 、両毛システムズ <9691> [JQ]の動向にも注目したい。


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