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【特集】電撃上昇トレンドに乗る「テレワーク関連」、新型肺炎でテーマ性再燃へ <株探トップ特集>

自宅で会社の業務を遂行するテレワークが注目されている。自然災害への対応やここ世界を揺るがす新型肺炎の感染拡大を背景に新たな切り口で物色人気化の兆しをみせている。

―働き方改革で脚光、台風被害に続き新型コロナウイルス感染拡大を受け注目度急上昇―

 いま、自宅などで会社の業務を遂行する「テレワーク」に注目が集まっている。背景には、国内でも感染者が確認されるなど、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大がある。従業員の感染対策として、一時的なテレワークを実施する企業も出てきている。もっともテレワークは、東京五輪開催を控え都心部の交通混雑の緩和策に加え、安倍首相肝いりの「働き方改革」が掲げられるなかで、ワークライフバランスの推進、業務効率化、生産性向上、地方創生などの観点から既に注目されていた。

●「離れた場所」で「働く」

 そもそもテレワークとは、「tele(離れた場所)」と「work(働く)」をあわせて作られた言葉で、ICT(情報通信技術)の活用により、在宅勤務など場所や時間帯にとらわれない柔軟な働き方を推進するものだ。日本テレワーク協会(東京都千代田区)によると、「自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク(顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方)、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つに分けられる」としている。株式市場においても、かねてから注目はされていたが、テレワークの導入については一部の大手企業にとどまっていたことなどから、正直なところ関心はそれほど高くはなかったといえる。

●台風テレワークと新型肺炎感拡大

 テレワークに注目が集まるキッカケとなったのが、昨年秋に相次ぎ日本列島を襲った未曾有の巨大台風だった。鉄道各社は、被害や混乱回避の目的で計画運休を行ったことで、通勤ができない状況が発生し、在宅などでの業務にスポットライトが当たり、ここから「台風テレワーク」という言葉も聞かれるようになった。もともと自然災害の多い日本だが、気候変動の影響により過去には経験したことのない甚大な被害も増加すると予想されるなか、社員の通勤時の被害回避、そして業務の継続などが求められ、テレワークの存在感は一気に高まった感がある。

 そして、昨年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大。国内でも日本人の感染者が確認されるなか危機感が高まっている。GMOインターネット <9449> グループは感染拡大に備え、事業継続ならびに従業員の安全確保を目的に「中国からの観光客が多く集まるエリアの拠点(渋谷、大阪、福岡)において、1月27日から2週間をめどに在宅勤務とする」と発表。改めて、テレワークに関心が集まることになった。同社では、2011年に発生した東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)の構築に取り組んでおり、全従業員による一斉在宅勤務の訓練を毎年定期的に実施、社内外のコミュニケーションを平常時から確立しているという。なお、同社は7日に、10日から長期化に備えた体制へ移行すると発表。具体的には在宅勤務体制は継続、ただしやむを得ず業務のため出社が必要な従業員については予防策の徹底により一部出社を認めるとしている。

●テラスカイ、「mitoco」に期待

 テレワークに関連する銘柄は、システムからレンタルオフィスまで幅広く、その裾野は広い。また、関連銘柄については総じて業績が好調なこともあり、投資家の視線も次第に熱くなってきている。

 こうしたなか、テラスカイ <3915> は在宅勤務や外出先などでテレワークを行う際でも、出勤時と変わらない業務効率を実現するコミュニケーションプラットフォーム「mitoco(ミトコ)」を手掛けており注目が集まっている。同社では「セールスフォースの導入支援とともに、グループウェアのmitocoの問い合わせが非常に多くなってきており、今後の需要拡大について期待している」(広報)と話す。業績も好調だ。1月14日取引終了後に発表した19年3-11月期決算は営業利益段階で5億5800万円(前年同期は700万円)と急拡大しており、20年2月期通期計画の4億9800万円(前期比4倍)を既に超過し、計画ラインを大きく上回ったことでサプライズを呼んだ。クラウド導入支援サービスが好調に推移するなか、大型案件の受注及び受託開発などが大きく伸び全体収益を押し上げている。年初には2300円近辺だった株価は、急速に上げ足を速め1月21日には3470円まで買われ昨年来高値を更新。その後調整し3000円近辺で頑強展開となっている。

●SBテクは包括的なセキュリティー対策

 SBテクノロジー <4726> は、昨年7月に同社のセキュリティー専門家が24時間365日体制で運用・監視を行うマネージドセキュリティーサービス(MSS)に、ラインアップを追加した。これにより、既存サービスで、テレワークなどにより社外ネットワーク環境にいる時に起こる可能性のある「悪意あるサイトへのアクセス」や「IDの乗っ取り」、「エンドポイントへの攻撃」の脅威に対して包括的な セキュリティー対策がより強固になった。このほかテレワークに関わるサービスを数多く手掛けているだけに、ここにきての導入機運の高まりは追い風になりそうだ。同社は、1月30日取引終了後に第3四半期累計(19年4-12月)連結決算を発表。営業利益が前年同期比42.4%増の21億5400万円、純利益は同69.8%増の13億2600万円と大幅増益となった。

●ソリトン、サイボウズに活躍の舞台

 ソリトンシステムズ <3040> にも注目したい。働き方改革、インターネット分離、BYOD(私物端末の業務利用)などの課題を、安全性と利便性を両立しながら解決するテレワークソリューションSecureAccess(セキュアアクセス)を提供。端末は落としても、データは落とさない独自開発の強固なセキュリティーで情報漏えい対策も抜かりがない。また、生産性向上、導入負荷軽減でも効果を発揮する。テレワーク環境を整備するための多くの製品、サービスに加え実績も豊富だ。

 また、サイボウズ <4776> はテレワークに不可欠な企業の一つだ。中小企業向け「サイボウズ Office」や、大企業・中堅企業向け「Garoon(ガルーン)」などのグループウェアを手掛けており活躍の舞台が広がっている。特に、自社クラウド基盤「cybozu.com」上で提供するクラウドサービスが順調に売り上げを伸ばしている。

 ソリトン、サイボウズはともに13日に決算発表を予定している。注目度の高いテレワーク関連銘柄だけに目を配っておきたいところだ。

●ブイキューブは「テレキューブ」で商機

 テレワークの裾野は広い。ビジュアルコミュニケーションサービスでリモートオフィスを実現し、電話ボックス型ワークスペースも提供しているブイキューブ <3681> にも投資家の視線は熱い。グループ会社のテレキューブが、テレワークのための個室型スマートワークブース「テレキューブ」を手掛けており、駅や空港の空きスペースなど利用し設置場所も拡大している。リモートワークの推進で、いつでも・どこでも働ける環境が求められるなか、同社にとっては追い風になりそうだ。

●レンタルオフィスでSワイヤー

 モバイルワークが進むなかレンタルオフィスもテレワーク関連の一角として浮上。ソーシャルワイヤー <3929> [東証M]はプレスリリース配信代行の大手だが、昨年8月には新橋に大型拠点を新設するなど、会議室付きレンタルオフィス「CROSSCOOP(クロスコープ)」を都内主要ビジネス地区に6拠点展開している。レンタルオフィスで不安視されるセキュリティー対策も強化しており、リモートワークやモバイルワークなど働き方改革を目的にした企業の利用が進んでいる。同社は、5日取引終了後に第3四半期累計(19年4-12月)連結決算を発表したが営業利益は前年同期比41.9%減となる1億8000万円だった。しかし、この大幅減益を受けた翌日の株価は急伸、前週末の7日には1592円まで買われ昨年来高値を更新した。きょうは、さすがに高値警戒感もあり反落している。今期は従来から減益見通しであり、計画線での着地となったことで、今後の業績回復への期待感から買われたとみられる。営業利益は、シェアオフィス事業で大型拠点新設に先行コストを投じたことが重荷となったが、その新橋拠点は第4四半期に損益分岐水準に到達見込みとしており、これが業績回復期待の背景にあるようだ。

●日本ユニシス、大塚商会、MCJ

 そのほかでは、日本ユニシス <8056> は昨年11月に働き方改革とスムーズビズを推進する「テレワーク全社展開支援サービス」の提供を開始している。テレワークのためのICT環境の導入・構築にとどまらず、制度・ルールの策定や運用、就労管理、情報セキュリティー対策、ICTツールの活用など、検討から導入・運用まで、自社の利用実績で得られたノウハウを元に支援するという。また、テレワークに今後攻勢を強めると伝わっている大塚商会 <4768> の動向などにも注視したい。

 「マウス」ブランドなどパソコン製造・販売を展開しているMCJ <6670> [東証2]もテレワーク関連の一角として関心が高まっている。同社は、高速なネットワーク接続機能を活用したフリーアドレスやテレワークなどのビジネススタイルに柔軟に対応できる、15.6型スタンダードノートパソコン「MouseProNB5」シリーズを1月27日から発売しており、テレワーク拡大期待の思惑に乗る。

●まさに時代の要請

 市場関係者の注目度もここにきて高まっている。「テレワーク自体の本来の意義は通勤や移動時間の短縮による効率化だが、新型肺炎の感染拡大を受け、企業活動を維持するという観点からも注目が集まった。今年は東京五輪・パラリンピックの開催に合わせ、政府も後押しする動きをみせていることでテレワーク推進元年ともいうことができる。しかし、東京五輪はあくまで契機に過ぎず、これは時代の流れであって今後イベントとは関係なく、生産性やリスク回避の目的から中期的にテレワークを導入する企業は増加の一途となるだろう」(国内証券ストラテジスト)という。

 災害や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、ここ急速に関心が集まるテレワークだが、本来は「働き方改革」などを推進するための重要なソリューションの一つであることを忘れてはならない。時代の要請を背景に、今後テレワーク市場の拡大期待は高まりをみせそうだ。

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