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【特集】ホテル株「復活街道」へ、10連休・ラグビーW杯・東京五輪と追い風強力 <株探トップ特集>

株式市場では、ホテル関連株に再び視線が集まり始めた。昨年は多発した自然災害の影響を受けたが、今年は10連休やラグビーW杯があり、来年は東京五輪。さらにその後も大阪万博を控えており、株価の見直し機運が台頭している。

―相次ぐビッグイベントでインバウンド特需再び! ここから注目の銘柄群を洗い直す―

 アップルショックで幕を開け、幸先の悪いスタートとなった今年の東京株式市場だったが、気が付けば春の声とともに2万1800円台を回復。世界経済を巡る不安要因は山積みだが、それでも株価は戻り歩調をたどっている。そうしたなか、株式市場では10連休のゴールデンウィーク(GW)、9月から開催されるラグビーワールドカップなどを背景にして、旅行関連株に注目が集まっている。しかし、こうした人気素地があるにも関わらず、どうもパッとしないのが「ホテル関連株 」だ。ただ、旅行関連銘柄を刺激しそうなビックイベントを控え出遅れ感を指摘する市場関係者も少なくはない。ホテル株の現状と今後の展開を探った。

●相次ぐ自然災害が向かい風に

 ホテル・宿泊関連銘柄の株価の戻りの鈍さには、やはり業績の不調が背景にある。昨年6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月には北海道胆振東部地震、更に大型台風など日本列島を相次いで襲った自然災害の影響は小さくなく、一時的とはいえ宿泊客が減少したことが響いた。

 ここ数年、インバウンド需要が拡大するなか、ホテル関連株も時代の寵児(ちょうじ)として株式市場でもてはやされたが、さすがに昨年たび重なり発生した自然災害の猛威には勝てなかった。実際、それは訪日客数に表れることになる。日本政府観光局が1月16日に発表した2018年の訪日外客数は、年間で前年比8.7%増の3119万2000人となり統計を取り始めた1964年以降最多となったものの、9月は災害の影響を受けキャンセルも発生、13年1月以来となる5年8ヵ月ぶりの減少(同5.3%減の215万9600人)となった。増勢一途だった訪日客数の伸びも鈍化したこともあり、ホテル関連株は次第に輝きを失うことになった。

●特需発生で復活の狼煙!

 しかし、訪日客数は減少しているわけではなく、依然増加していることを忘れてはならない。更に、ホテル業界には今後好材料が続々と登場する。まずは、4月終盤から5月前半にかけて“黄金の10連休”が待っている。また、44日間という長期に渡り日本各地で熱戦が繰り広げられる「ラグビーワールドカップ2019」(9月20日から11月2日)も海外からの長期滞在者が見込まれることからホテル各社には好影響を与えそうだ。中国に代表されるアジアからの訪日客だが、W杯開催でラグビー人気が大きい欧州・豪州からの“新たな訪日客需要”を喚起することになる。そこに“爆買い”は期待できないかもしれないが、間違いなく宿泊需要は発生し、ホテル株には例年とは異なる“特需”が生まれることになる。

●共立メンテは業績好調

 こうした状況下、好調をキープするホテル関連株も少なくはない。「ドーミーイン」事業でホテルを全国展開する共立メンテナンス <9616> もその一つだ。同社は2月8日に19年3月期第3四半期累計を発表、連結経常利益は前年同期比17.7%増の117億5600万円に伸び、通期計画の139億円に対する進捗率は84.6%に達している。自然災害の影響も吸収し、インバウンド需要に加え国内旅行客も好調だった。かつて、東京五輪開催決定を追い風に訪日客が急拡大、株式市場でも同社株に注目が集まり株価も急上昇、その後の調整場面を乗り越え昨年6月には6000円台を突破した。再び株価は軟化したものの昨年末につけた4475円を底に切り返し、現在は5400円近辺で推移しており高値奪回をうかがう。

●黄金の10連休、ラグビーW杯は好影響

 思惑が先行するホテル株だが、黄金の10連休、そしてラグビーW杯は実際のところ好影響を与えているのだろうか。

 愛知を地盤にホテルを全国展開するABホテル <6565> [JQ]では「10連休の予約状況については現在のところ好調だ。例年に比べ長期の休みということもあり業績にも好影響を与えると考えている。W杯に関しては、開催が先ということもあり、まだ目に見える形での影響はみられない。ただ、当社のホテルが進出している豊田市(豊田スタジアム)でも試合が行われる予定で、地域と一体となって盛り上がれればと期待している」(IR担当者)という。業績も好調で、1月末に発表した19年3月期第3四半期累計では、単体の経常利益が前年同期比23.2%増の11億900万円となり通期計画の13億6000万円に対する進捗率は81.5%に達した。商い薄が難点だが、今後ビッグイベントが続くなか見直し買いが入る可能性もある。また、同社の親会社でスポーツクラブも展開する東祥 <8920> にも目を配っておきたい。

 また、関西の名門といわれるロイヤルホテル <9713> [東証2]でも「(10連休については)例年に比べても予約状況は順調だ。ラグビーW杯には期待しており好影響を与えるものと考える」(広報)と期待をにじませる。こちらも株式市場においての人気はいま一つで出来高も乏しいが、関西においては東大阪市花園ラグビー場、神戸市御崎公園球技場などラグビーW杯の試合も多く予定されており恩恵を受けそうだ。更には、25年の大阪万博を控えるだけに、“万博関連”という切り口もあり、今後物色の矛先が向かう可能性もある。同じく関西では、京阪エリア地盤の私鉄でホテルなども展開する京阪ホールディングス <9045> にも活躍期待が高まる。

●and factoryはIoT体験型宿泊施設

 ホテル業界に関しては「五輪後」を心配する関係者も多かった。訪日客の鈍化に加え、五輪需要を当て込んだホテルの建設ラッシュによる供給過剰の反動を懸念するものだった。しかし、こうした懸念を昨年11月に開催が決まった25年の大阪万博が和らげている。あるホテル関係者も大阪開催が決定した当時、「正直なところ、ほっとしている」と安堵の声を漏らしていた。

 こうしたなか、“本業以外”でホテルに参入する企業が目立っている。漫画アプリなどを展開し昨年9月にマザーズに上場したand factory <7035> [東証M]もその一つ。同社は、2月にはIoT体験型宿泊施設であるスマートホステル「&AND HOSTEL」を浅草と三ノ輪に連続で新規オープンし8店舗を展開するなど攻勢を強めている。宿泊業界では慢性的な人手不足や他施設との差別化が課題となるなか、IoT技術の活用で業務の効率化と宿泊体験価値の向上という二つを実現するという。株価は、1月25日につけた上場来高値5680円奪回に期待が高まる。

●T&GニーズにMICEの風

 ハウスウェディングのパイオニアといわれるテイクアンドギヴ・ニーズ <4331> も面白い。2月8日に発表した第3四半期累計の営業利益は前年同期比81%増の38億6200万円だった。同社はホテル事業にも注力しており、トランクホテルでMICE(国際会議)関連受注が好調。政府、東京都などの後押しもありMICE需要拡大思惑が高まるなか今後の展開に期待が高まる。また、改元に伴う“元年婚”需要も期待される。株価は下値を探るが、なかなか面白い存在といえそうだ。

●東京ドームは新複合型リゾート

 東京ドーム <9681> は2月18日、現在開発中の熱海後楽園ホテルを中心とする複合型リゾート「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」を3月28日に開業すると発表。宿泊施設はもちろん、熱海最大級の日帰り温泉施設や海辺のロケーションで伊豆の食材やオリジナルクラフトビールが楽しめるレストラン、伊豆周辺の“美味しい食”と出会える食のマーケットなどを展開し、日帰りでも楽しめるようにするという。初年度売上高45億円を見込んでいる。インバウンド需要が質への転換を急速に迫られるなか、新たな取り組みに注目が集まる。株価は、12月25日の877円を底に上値を慕い、現在は1000円台に突入しており新展開に期待。

●藤田観、TKPの動向にも注視

 そのほかでは、株価の下値模索が続くもここからの巻き返しに期待したい藤田観光 <9722> 、ホテルにも注力する貸会議室のティーケーピー <3479> [東証M]なども注視しておく必要がありそうだ。

 日本列島は、10連休に加えラグビーW杯、そして来年は満を持して東京五輪開催を迎えることになる。更には25年の大阪万博も五輪後の旅行需要を喚起するとみられ、ホテル関連には盤石の素地がそろっている。ジワリ再評価の動きへ、ホテル株に再びスポットライトが当たる日も近い。

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