【特集】“ポストスマホ”の急先鋒、成長期待膨らむ「ウェアラブル関連株」 <株探トップ特集>
IoT時代の通信端末としてウェアラブルデバイスが改めて注目されそうだ。19~20年にかけて市場は再飛躍の時を迎える可能性が高いとみられ、関連株は要マークといえる。
―経産省が疾病・介護予防や健康増進での利用検討、幅広い関連企業に商機―
IoT時代の通信端末としてウェアラブルデバイス が再び注目を集めそうだ。2015年のアップルウォッチ発売とともに盛り上がった市場はこのところ足踏み状態となっているが、19~20年にかけて飛躍する見通し。米アップルが1月末に発表した18年10-12月期決算が9四半期ぶりの減収減益となるなど、スマートフォン市場の成長に一服感がみられるなか、「ポストスマホ」になりうる可能性がある。
●ヘルスケア分野での需要が市場拡大を牽引
ウェアラブルデバイスとは、胸や腕、頭部などに装着して利用するICT(情報通信技術)端末の総称で、Wear(着る)とAble(~することができる)からウェアラブルと呼ばれている。デバイスには腕時計型や眼鏡型、着衣型などがあり、これらを通じて収集した体重や血圧、心拍数、歩行数、消費カロリー、睡眠の質といった日々のデータを利用して、健康管理や医療、スポーツなどの分野でも先進的な製品及びサービスが展開されている。
ウェアラブルデバイスは、IoTや人工知能(AI)といった先端技術の進展やアプリの拡充を追い風に需要の裾野が広がることが見込まれている。なかでも高成長が期待できるのがヘルスケア分野で、経済産業省ではウェアラブル型ヘルスケア機器の市場規模は17年の4938億円から20年には1兆5800億円に急拡大すると予測。背景には、海外企業を中心に医療機器メーカーやベンチャー企業、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業など、さまざまなプレーヤーがテクノロジーを活用したヘルスケアビジネスに参入していることが挙げられている。
経産省が2月13日に開いた「2050経済社会構造部会」第3回会合では、疾病・介護予防や健康増進に向けて、ウェアラブルデバイスなど新しい技術を活用する施策が議論された。保険者や自治体による効果的な民間サービスの導入が検討されていることから、端末メーカーだけでなく、部品や要素技術を手掛ける企業に商機が広がりそうだ。
●帝人子会社は新ブランドを立ち上げ
ウェアラブル事業に注力しているのが繊維各社で、帝人 <3401> 子会社の帝人フロンティアは今年1月、高機能繊維とセンシング技術との融合により、ウェア、センシング、アプリケーションを一体とした総合的なウェアラブルソリューションを「MATOUS(マトウス)」ブランドとして展開していくと発表した。同社はこのほど、モーションセンシング製品「MATOUS MS」と、バイタルセンシング製品「MATOUS VS」を開発。テスト販売を経て、25年には同ブランドで売上高300億円を目指す構えだ。
東洋紡 <3101> は、1月16~18日に開催された「第5回 ウェアラブルEXPO」にウェアラブルデバイス用のフィルム状導電素材「COCOMI(ココミ)」を出展した。この素材は薄く伸縮性に優れ、体の動きに追随し、電極と配線が継ぎ目なく一体化していることが特徴。高精度で生体情報を計測できることから、健康管理やスポーツウェアなど多様な用途展開が期待される。
クラボウ <3106> は、シャツ型スマート衣料「Smartfit(スマートフィット)」を活用し、18年5月から暑熱環境下での作業リスクを管理するサービスを開始したほか、同年8月にはKDDI <9433> などと熱中症リスク低減のための解析アルゴリズムの開発をスタート。東レ <3402> は18年秋、ウェア型の生体センサーを利用して、平常時と異なる心拍の検出により体調変化の可能性を知らせる「hitoe みまもりアプリ」を開発した。
●サン電子はARスマートグラスの受注開始
このほかにも直近では、サン電子 <6736> [JQ]が自社開発したAR(拡張現実)スマートグラス「AceReal One」の一般受注を2月4日から開始。これは産業機器・設備のメンテナンスなど屋内外での作業を支援するウェアラブルデバイスで、経験の浅い現場作業者の業務を効率的かつ効果的にサポートしながら育成するニーズに応える製品だ。
1月末には、トランザス <6696> [東証M]のウェアラブルデバイス「Cygnus(シグナス)」を使った製造業向け生産工程管理システムが、トヨタ自動車 <7203> 系の豊臣機工(愛知県安城市)の本社工場に導入された。トランザスは今後の戦略として、各業態向けに「Cygnus」を活用した汎用性の高い標準ソリューションの開発を進めている。
また、1月に子供向けウェアラブル市場への参入を表明したキムラタン <8107> や、4月から企業向けにメガネ型ウェアラブル端末「b.g.(ビージー)」の納品を開始する予定のビジョナリーホールディングス <9263> [JQ]、音声認識に特化したウェアラブル端末「AmiVoice Front WT01」を展開するアドバンスト・メディア <3773> [東証M]、新世代ウェアラブル検品システムを手掛ける大興電子通信 <8023> [東証2]などにも注目したい。
●大有機化、太洋工業、平河ヒューテなどにも注目
ウェアラブル市場の拡大で恩恵を受けるのが部品や技術を手掛ける企業で、第一精工 <6640> は匂いセンサー「nose@MEMS」を開発中。マクセルホールディングス <6810> は18年10月にウェアラブル機器用電源に適した高出力高容量のボタン形二次電池を開発したことを発表し、太洋工業<6663.T>は今年1月に高伸長FPC(フレキシブルプリント基板)を開発したことを明らかにした。
これ以外では、伸縮度の高い導電性アクリル樹脂を販売する大阪有機化学工業 <4187> 、伸縮性ひずみセンサー「C-STRETCH(シーストレッチ)」を手掛けるバンドー化学 <5195> 、ウェアラブル機器の小型化に寄与する極細線ケーブルを提供する平河ヒューテック <5821> 、温度センサーなどに強みを持つSEMITEC <6626> [JQ]、子会社が透明導電性コーティング剤「デナトロン」を展開している長瀬産業 <8012> などのビジネス機会拡大も期待される。
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