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【特集】NYダウ最高値に接近! 株高誘導する投資ファンド戦略の実態とは <株探トップ特集>

東京市株式場の方向性は米国株市場の動向に委ねられる部分も少なくない。その米国株市場は極めて上値指向が強く、NYダウは昨年10月につけた最高値を視界に捉えている。ここからのNYダウの展望と今の株高の背景に何があるのかを探った。

―「リスク・パリティ」が株価を左右、米中首脳会談で変わる潮目を読む―

 米株式市場が最高値を視野に入れてきた。米中貿易交渉の進展期待を背景に、NYダウ は昨年10月の最高値に近づいている。トランプ米大統領が対中追加関税の引き上げ延期を決めたことが背景だが、その一方、米国や中国へ景気後退懸念は根強く囁かれている。そんななか市場には、この米株高はヘッジファンドなどの買い戻しがもたらしたとの見方が少なくない。日米株式市場の行方を左右する投資ファンドの戦略とは何か――。

●対中関税引き上げの延期を好感、日米中の株式市場に株高期待も

 25日の米株式市場はNYダウが前日比60.14ドル高の2万6091.95ドルに上昇した。一時、2万6200ドル台にまで値を上げており、昨年10月3日に付けたザラ場ベースの最高値2万6951.81に近づいた。トランプ米大統領は24日、中国との貿易交渉で「十分な進展があった」として3月2日に予定していた中国製品の関税引き上げを延期することを表明した。これを受け、市場には「当面の最も大きな懸念要因が後退した」との見方が浮上。25日には日本や米国株式市場が上昇し、中国の上海総合指数 は5%強の急騰を演じた。

●中国の産業補助金問題が焦点、結果次第で関税の部分的引き下げも

 米中首脳会談は来月下旬にも開催される、とも伝えられている。米中交渉の具体的な内容に関しては、まだ不透明部分が多いものの、貿易不均衡の問題は米国からのLNGや大豆の購入という形で中国側が歩み寄る見通しだ。ただ、市場の関心は知的財産権や産業補助金の問題にどこまで踏み込んでいるかに向かっている。特に、中国政府による産業補助金の問題は米中の隔たりが大きいとみられている。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「もし交渉の結果が、産業補助金まで踏み込んでいれば、追加関税の部分的な引き下げがあってもおかしくない」と予想する。その場合は一段の株高期待も膨らむ。

 ただ、米中摩擦の抜本的な解決は簡単ではないとの見方は多い。いちよしアセットマネジメントの秋野充成上席執行役員は「両国による覇権争いの面があり根は深い」という。そのなか、NYダウは昨年末の安値から直近高値まで2割近い上昇となったが、このNY株高をもたらした要因のひとつが、「ファンドが採用するリスク・パリティ戦略によるところが大きいだろう」と秋野氏は指摘する。同戦略は、株価の変動率が上がるとリスクを自動的に落とすが、変動率が下がると株式の組み入れを増やすものだ。

●VIX指数の低下がNY株高を演出、株の買い戻し要因に

 「恐怖指数」と呼ばれる米VIXは昨年12月26日に36.20まで上昇した。しかし、年初からは下落基調を続け22日には13.51と昨年10月初旬以来の水準に低下した。このVIX指数の下落がリスク・パリティ戦略を採用しているファンドによる株の買い戻しを呼んだとみられている。25日はVIX指数が朝方13.44まで下落したが、引けにかけ14.85まで上昇した。このことが、NYダウの上昇幅を縮小させたともみられ、市場では、VIX指数の動向が高い関心を集めている。

 目先は今晩と明晩のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言や28日の米GDPの発表などが注目されている。しかし、焦点は来月にも実施される見通しの米中首脳会談であり、そこで材料出尽くし感が出るかどうかだ。前出の桂畑氏は「米企業の業績には不透明感もあり、景気動向を含め状況を確かめる必要がある。NYダウは米中首脳会談の前後まで高値圏での値動きが続く可能性もある」という。

●「米株ロング・日本株ショート」が上値抑制、今春以降の出遅れ是正に期待

 気になるのは日本株が米国市場などに比べ、出遅れ感が強いことだ。その日本株にとって、中国・上海総合指数の上昇が続けば追い風となる可能性がある。サクソバンク証券の倉持宏朗チーフマーケットアナリストは「海外投資家は中国株下落のヘッジ売りを日本市場で出している。中国株の上昇は日本株にとってヘッジ売りの減少につながる」と指摘する。

 また、秋野氏は日本株の出遅れ要因として「米国株買い・日本株売りを仕掛けているファンドの存在がある。このロング・ショートのポジションが解消されないと日本株の出遅れは続く」という。同氏は日本株が上昇基調を強めるとすれば「機関投資家が本格的に動き出す5月の10連休以降ではないか」とみている。

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