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【特集】始まった「5Gバブル相場」、恐るべきメガ上昇波に乗る“5銘柄+1” <株探トップ特集>

高速・大容量化、そして多数同時接続の命題をクリアする次世代通信規格「5G」。現在の東京市場には関連有力株がひしめいている。

―IoT時代のインフラとして不可欠の5G、アンリツに続く変身銘柄を掘り起こす―

 8日の東京株式市場は3連休を前に目先の買いポジションをたたむ動きが顕在化、日経平均は再び下値を模索する動きを余儀なくされている。米国経済は好調で、なおかつFRBが金融政策に柔軟な姿勢をみせても、今はそれがそのまま東京市場の高揚感につながらない。10~12月期の日米の企業業績を比べれば、明と暗のコントラストがくっきりと確認される状況にあり、買い方の気勢が上がらないのも無理のないところ。米中貿易協議の先行き不透明感も再燃している。しかし、日本株はそれらを織り込んでの“低PER放置”であったわけで、ここからの押し目形成は“拾い場の提供”と前向きに考えておきたい。国内企業の四半期決算発表を通過すれば見直し機運も訪れる。ここは、目先の地合いにとらわれず、現在の株式市場の最強テーマとなっている「5G」関連に照準を絞りたい。

●ケタ違いの高速・大容量で世界は変わる

  IoT時代の到来が言われるが、それをインフラ面から支えるのは次世代通信規格「5G」にほかならない。ビッグデータの普及や人工知能(AI)の加速的な進化と相まって、IoT時代に広がる景色は非常に魅力的なイメージがある。しかし、飛び交う膨大なデータをリアルタイム処理するインフラが存在しなければそれは画餅に帰す。2020年には500億個の端末がネットに接続されるとも試算されているが、その際に不可欠なのが5Gであり、現在の4G(LTE)よりもはるかに高速・大容量でなおかつ多数同時接続、超低遅延といった高いハードルをクリアする。

 通信の高速化の歴史をたどれば、今から30年以上前のモバイル端末(携帯電話)の普及初期段階では通信インフラは第1世代、いわゆる1Gであった。現行の4Gはその当時と比較してほぼ1万倍の通信速度を確保している。そして今、世界がこぞって商用化前倒しに動いている5Gは、ミリ波など高い周波数帯の活用により4Gの通信速度の更に100倍、10Gbps以上を実現する。加えて1平方キロメートル当たり100万台という多端末同時接続も4Gとはケタ違いで、これが今までは踏み込むことのできなかった新たなビジネス領域への扉を開くことになる。

●5Gの経済波及効果は30兆円以上とも

 5Gの実力を発揮するシーンとして最も分かりやすいのは動画配信サービスの高付加価値化だろう。これは「4K・8K」放送関連機器の普及に伴うデータ量増加とも融合する。このほか、世界の自動車メーカーやIT企業が開発を競い合う自動運転車ドローン、更に産業ロボットや建設機械、医療機器の遠隔操作などでも重要なインフラとなることは必至だ。

 この5Gは普及の初期段階では4Gと共存する形で高速・大容量化に対応するため、目に見える形での収益インパクトが見えにくい部分もある。例えば屋外基地局の場合、既存の4G設備に5Gモード対応の機器を取り付けるだけで足りるケースもあり、根幹からの全面的な設備更新が求められているわけではない。足もとの状況を近視眼的にみれば、今の株式市場におけるテーマ買いの流れは“思惑先行の5Gバブル”と揶揄される部分もないとはいえないが、肝心なのは将来のシナリオであって、これは決して単発的に人気が剥落するようなテーマではない。仮にバブル相場の色彩を携えるのであればまさに初動、緒に就いた段階といってよく、むしろここは追撃して買い参戦するのが相場巧者の技だ。

 AI・IoT技術とリンクする形で5Gがもたらす経済波及効果は絶大で、国内だけでもその効果は30兆円を超えるともいわれている。その最たるものは半導体需要の喚起だ。ビッグデータの普及で世界的にデータセンターの増設が活発だが、5Gの普及が本格化してくればこれが一段と加速することになり、つれて底上げ的なメモリー需要創出へと結びついていく。

●ファーウェイ製品の退場はチャンスをもたらす

 5Gの商用化に向けては、北米や韓国が先駆する形で世界の通信事業者や機器メーカーが一斉に動き出しており、スケジュール的にも20年の商用化が19年に1年前倒しする方向でコンセンサスが固まっている。日本でも安倍政権は東京オリンピック・パラリンピック開催年に間に合わせる形でのインフラ整備に傾注し、官民を挙げて突き進む状況にある。

 一つ注意しておくべきことは、中国の通信機器最大手ファーウェイなど中国製品を安全保障上の理由からか排除する動きが世界的に広がっていることだ。ファーウェイは現在移動体通信基地局向けシェアで世界の3割近くを占めるトップメーカーで5G分野でも主導的な立場にあり、技術力の高さだけでなく商品のコストパフォーマンスでも一頭地を抜いている。とはいえ「情報の安全」を主眼に置けば、ファーウェイ製品の排除は必然の選択肢であり、これが5Gの普及を遅らせる要因になるとの見方も強い。しかしながら、ファーウェイ製品の退場はNEC <6701> や富士通 <6702> など大手メーカーをはじめとして日本企業に商機をもたらす可能性があり、株式市場ではむしろ関連企業の株価を刺激する背景となっている。また、NECや富士通と取引関係の厚い部品メーカーソフト開発会社にも雪崩的に受注が舞い込んでくるケースも考えられる。

●5G象徴株として輝きを増すアンリツ

 5G通信システムの普及段階で不可欠な通信計測器を手掛けるアンリツ <6754> は以前から同テーマのシンボルストック的な位置づけでマーケットの視線を集めている。株価は1月末を境に青空圏を舞い上がるかのように急速に水準を切り上げた。週末8日こそ全体波乱相場の影響を受けて下押したが、前日の7日には2210円まで上昇しITバブルの余韻冷めやらぬ2001年6月以来、約17年8ヵ月ぶりの高値圏に歩を進めている。

 5G商用化に向けた動きがグローバルに進むなか、昨年12月には北米や韓国で先行的に5Gサービスがスタートしているが、年内にも5G対応スマートフォンの商品化が現実化することでアンリツのビジネスチャンスはさらに広がっていく。

 足もとでは、「米国のインテルやクアルコム、韓国サムスンといった大手企業向けをはじめ5Gチップセットや端末開発向け測定器などの受注が伸びている」(アンリツIR)状況という。同社は19年3月期の業績見通しについて、1月30日に今期2度目となる上方修正を行った。そして、この背景には「5G関連の売り上げが想定を超える勢いとなっていることで、その部分が業績の増額に反映された」(同)としている。株価はまさに正直である。同社が業績予想の修正を発表した後、連日の大幅高で市場関係者の耳目を驚かせたが、これは単なる増額ではなく5G向け需要が本格的に始動したことが主たる理由だったからこそ、これほどの急騰パフォーマンスにつながったわけだ。

 アンリツは既に16年に米アジマスシステムを子会社化しフェージング(電波の受信レベルの変動)に関するソリューションを強化して5G関連需要への対応を進捗させてきたが、この効果が結実する段階を迎えた。今後もアジマス買収効果は同社の5G開発の重要な歯車として機能していくことになる。会社側では「2021年3月期の時点でモバイルビジネスにおける半分は5G関連で占める」としている。直近は思惑先行で買われたようだが、決して行き過ぎて買われている感触はない。ここからは現実買いのステージが待っている。

●人気再燃の時近づく、ひしめく有望銘柄群

 このほか、5G関連株として有力視されるのは、高速データ通信向けなどで強みを持つ通信計測器メーカーのアルチザネットワークス <6778> [東証2]や通信制御ソフト開発及び通信網の保守サポートを展開するネクストジェン <3842> [JQG]、通信分野を中心としたシステム開発で実績の高いサイバーコム <3852> 、NECグループを主要販売先とするシステム構築会社で通信系コア技術に強いアイレックス <6944> [JQ]、IoT、クラウド分野を得意とし通信ネットワーク環境の構築を担うネットワンシステムズ <7518> など。これらは同テーマの常連銘柄としてマーケットの注目度は常に高い。

 また、半導体設備向けデバイスのほか、移動体基地局向けに温度調整部材も手掛けるフェローテックホールディングス <6890> [JQ]、通信・放送用アンテナのトップメーカーである日本アンテナ <6930> [JQ]、車載用アンテナではヨコオ <6800> や原田工業 <6904> 、半導体商社で通信機器向けFPGAを扱うPALTEK <7587> [東証2]なども要マークとなる。自動車やIT関連のウェブサイトを運営し「イード5Gモビリティ」という戦略ビジョンを推進するイード <6038> [東証M]なども異色の5G関連として活躍素地がある。インフラ整備で光ファイバー需要の喚起も予想されることから古河電気工業 <5801> などをはじめ電線セクターからも目が離せない。

●ここから注目の5銘柄はコレだ

【santecは光モニターで大出直り相場へ】

 santec <6777> [JQ]は2月に入り好決算発表を受けて大きく株価水準を切り上げたが、1100円近辺で売り買いを交錯させている現状は上昇第2波に向けた踊り場として強気に対処したい。同社は光通信用部品メーカーで光測定器やOCT(光干渉断層計)も手掛ける。足もとの業績は会社側想定を上回る好調な推移をみせており、1月末に19年3月期業績予想を大幅に上方修正。営業利益は期初予想の6億6000万円を8億円に増額し、小幅減益予想から一転2割増益予想に変わった。この増額の背景には、前出のアンリツ同様5Gが大きく絡んでいる。「北米通信設備メーカー向けに5G向け光モニターが好調だったことなどが主要因となって、全体利益予想の修正につながった」(会社側)という。「5G関連需要については、現段階では北米向けが主流だが、今後も国内外で創出される需要に対応して、業績に反映させられることに期待している」(同)という。株価は約1年前の昨年1月29日に1732円の高値をつけている。遡って17年10月にも1760円の高値をつけており、中期目標としてこのダブルトップをクリアする大出直り相場がイメージできる。

【アイエスビーは基地局向けDSPに新たな商機】

 アイ・エス・ビー <9702> は1800円近辺でのもみ合いを経て上げ足を強める展開となろう。ここからは本格戻り相場に向けた上昇第2ステージが待つ。同社は通信制御ソフトが主力で、携帯電話基地局向けで高い実績を誇る。クラウドやIoTなど企業のIT投資需要はもちろん追い風だが、5G関連としての位置づけが株式市場では定着している。会社側では「当社は通信基地局向けでDSP(デジタル信号処理用プロセッサー)など制御システムを展開しており、(案件確保は)通信キャリア主導でやや受動的な面もあるが、5Gの普及に際しては(更に需要が喚起されることに)期待を寄せている」としている。18年12月期営業利益は前期比34%増の8億円を見込むが、17年12月期に前の期比で利益を倍増させた後だけに価値がある。5G関連の基地局に絡む案件が伸びるなか、19年12月期も2ケタの利益成長が視野に入る。

【基地局工事の出番を待つミライトHD】

 ミライト・ホールディングス <1417> は1500~1600円のボックスから早晩脱却し、昨年9月27日の高値1988円を払拭して2000円大台に歩を進める可能性がある。同社は通信工事大手でNTTグループ向けを主力としているが、5G基地局工事について会社側では「まだ具体的な案件は出ていないが、期待は持っている。計画が具体化してくれば随時対応できる準備は整えている」という。また、「5Gはミリ波など高周波数帯域を使うが、4Gの時より直進性が増す。したがって障害物を回り込むようなことが難しくなり、その分だけ小規模基地局の数が増えることになる」(会社側)という。これは通信工事会社にとって収益機会の拡大を意味することにもなり、5G受注が本格化するとみられる20年3月期以降の業績に楽しみを残している。時価予想PER12倍は割高感に乏しく、テクニカル的にも75日移動平均線越えから戻り足を本格化させる公算大だ。

【Jストリームは動画配信ビジネスで5G効果絶大】

 Jストリーム <4308> [東証M]は400円台後半で売り物をこなし再浮上のタイミング。1月24日の戻り高値576円は単なる通過点に過ぎないだろう。同社は動画のストリーミング配信を手掛けており、ライブ配信は医薬向けが堅調なほか、他業種の需要開拓も進めている。オンデマンド配信でも需要を捉えているが、いずれにせよ5G時代の到来により同社の活躍舞台は大きな可能性を秘めることになる。直近同社は、松任谷由実VRライブなどの動画配信を実施、同時に360度カメラによるVRライブの配信を行うことも発表しているが、近い将来の高速・大容量化で動画配信の付加価値は格段に高まることになる。5G技術を活用したスマートフォン向けeスポーツイベントなど市場開拓余地は絶大だ。足もとは先行投資負担から利益こそ伸び悩んでいるものの、増収増益基調を続けており、特にトップラインの伸びを評価したい。19年3月期は14%増収の6億9500万円を見込んでいる。

【オリジン電は超割安で基地局用電源に思惑】

 オリジン電気 <6513> は2月初旬に上放れる動きをみせたが、直近は全体相場の急落に流されて反落。しかし、日足で大陰線を引いたものの25日・75日移動平均線上で踏みとどまっており、ここから再び切り返す可能性は十分。なんといっても時価はPER5倍台、PBRも解散価値の半値水準である0.5倍前後と究極の割安圏に位置している。電源機器メーカーで移動体無線基地局用の電源が収益に貢献している。5Gでは前出のミライトHDが指摘したように、その電波の直進性を補う形で小規模基地局の数が急増することが想定されるが、その場合、「基地局に使われる電源装置の需要も飛躍的に増えるのではないか」との思惑が株式市場には底流している。なお、会社側では、この件について「コメントすることはできない」としている。同社は8日の前場取引終了後に18年4-12月期の決算を発表、営業利益は前年同期比92%増の24億9100万円と急拡大した。対通期進捗率を考慮すると19年3月期計画の営業利益30億円は上振れする可能性を内包している。

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