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【特集】移動手段もモノからサービスへ、「MaaS」可能性と関連株 <株探トップ特集>

100年に一度の大変革時代のなかにある自動車業界で新たなキーワードとして浮上しているのが「MaaS」だ。

―“モビリティ・カンパニー”目指すトヨタの動向など注目―

 自動車業界は、「電動化」「自動化」「コネクティッド化(常時ネットにつながる車)」といった100年に一度といわれる大変革時代を迎えている。こうした技術の進展は次世代の交通サービスを生み出す可能性を秘めており、例えば自動運転技術を活用したライドシェアの実用化に向けた取り組みなどが活発化している。既に起こりつつある移動手段の“保有”から“共有”への流れは今後さらに加速することが予想され、そのなかで新たなキーワードとして浮上しているのが「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」だ。

●MaaSがもたらすメリット

 国土交通省によると、MaaSとは出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念。具体的には、鉄道やバス、タクシー、レンタカーといった従来の交通サービスと、カーシェアリング、自転車シェアリング、配車サービス、自動運転などの新しい交通サービスを統合し、一つのスマートフォンアプリを通じてルート検索、予約、決済を行うことで利便性が向上するとともに、リーズナブルな移動ができる。

 総務省ではMaaS実現のメリットとして以下の点に期待している。事故や天候によって普段利用する経路での通勤ができない場合でも、すぐに別のルートを探し出して移動でき、毎月定額で指定範囲内の電車やタクシーなどが乗り放題になるサービスであれば異なる路線や交通手段を利用した際の精算手続きが不要になることを想定。また、駅から離れたところに住んでいる場合、自宅の前に自動運転車を呼んで駅まで行き、電車に乗り、駅から病院まではライドシェアで行くなど、高齢者をはじめとする交通弱者の外出も便利になるといったことも期待している。

 さらに、Maasによって膨大なデータが蓄積され、それがオープン化されれば、輸送サービスを提供する事業者間の競争を促し、マーケティングに活用することで個人の傾向や好みに合わせたサービスの提供が可能となる。また、都市への人口集中に起因する交通渋滞や排ガスによる環境悪化の改善につながる効果なども見込まれている。

●トヨタはモビリティ・カンパニーへ

 移動手段を所有する“モノ”で提供するのではなく、“サービス”として提供するという考え方は交通業界にイノベーションをもたらし、大きなビジネスにつながる可能性がある。政府は都市圏の過密化による弊害の緩和や過疎地の交通網維持策といった面からMaaSを推進する構えで、国交省は10月に「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」を立ち上げ検討を進めている。

 こうしたなか、自動車業界で積極的な姿勢をみせているのがトヨタ自動車 <7203> で、10月にはソフトバンクグループ <9984> と新しいモビリティサービスの構築に向けた戦略的提携で合意。両社は新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を設立して、18年度内をメドに共同事業を開始する予定だ。トヨタは“クルマをつくる会社”からモビリティに関わるあらゆるサービスを提供する“モビリティ・カンパニー”への変革を見据えており、19年初めには定額乗り放題サービス「KINTO」を始める計画を打ち出している。

 このほかトヨタ系企業では、豊田自動織機 <6201> が10月にMaaS事業を展開するシンガポール企業mobilityXに出資し、デンソー <6902> はMaaSシステムの技術開発を加速させるため、4月に次世代のソフトウェア開発を行うオンザロード(名古屋市)に出資。トヨタと関係の深いMS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> 傘下のあいおいニッセイ同和損害保険は17年に、フィンランドでマルチモーダルサービスを展開するMaaS Global社に出資している。

●鉄道会社なども積極姿勢

 鉄道会社の関心も高く、東京急行電鉄 <9005> は19年1月下旬から3月下旬にかけて国内初の「郊外型MaaS」の実証実験を行うほか、19年春にはJR東日本 <9020> と「観光型MaaS」の実証実験を実施する予定。小田急電鉄 <9007> は、4月に発表した中期経営計画(18~20年度)にMaaSへの取り組みを盛り込んだ。

 他の業界では、NTTドコモ <9437> と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が10月5日から12月10日まで、観光促進を目指した横浜MaaS「AI運行バス」の実証実験を推進中。電通 <4324> は8月に、群馬大学と「次世代モビリティ社会実装研究における産学連携協定書」を締結した。

●ディーエヌエー、ジョルダンなどにも注目

 このほかの関連銘柄としては、日産自動車 <7201> のカーシェアリングサービスにモビリティサービスプラットフォームを提供した実績のある日本ユニシス <8056> に商機。

 7月にMaaS事業に関する子会社を設立したジョルダン <3710> [JQ]、8月に傘下企業がMaaSなど新しい技術の進展を見据えた子会社を設立した萩原電気ホールディングス <7467> 、8月からMaaSのベンチャー企業を広く紹介するためのセミナーを定期開催しているイード <6038> [東証M]、10月にMaaS分野の技術開発を行う組織を立ち上げたディー・エヌ・エー <2432> 、日商エレクトロニクス(東京都千代田区)とMaaS分野での協業強化を視野に入れるエコモット <3987> [東証M]にも注目したい。

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