【特集】緊急検証・日経平均“2万6000円到達”の確度――アベノミクス相場“頂点奪回”で起きること <株探トップ特集>
これは単なる年初来高値更新ではない――28日、日経平均は一時2万4286円まで上値を伸ばした。1991年以来27年ぶりの高値。アベノミクス相場の頂点奪回。デフレ相場との決別。歴史的フシ目を突破した東京株式市場の行き先を追う。
―消えた暗雲と走り出した外国人投資家、デフレ決別相場これから―
日本株市場に年明け1月の喧騒がにわかに戻ってきた。28日の東京株式市場では日経平均株価が一時500円近い上昇をみせ2万4286円まで上値を伸ばし、1月23日につけた2万4129円(ザラ場ベース)の年初来高値を上回った。これは年初来高値更新というよりは、アベノミクス相場における頂点奪回、さらに言えば四半世紀ぶり(約26年10ヵ月ぶり)の高値圏浮上という形容の方が的を射ている。26年10ヵ月前といえば、平成バブルの余韻冷めやらぬ1991年の秋。思い起こせば東京市場はそこから長いデフレ相場のトンネルに入った歴史がある。28日の日経平均の目の覚めるような上昇パフォーマンスは、まさにそのデフレ相場からの決別の朝を意味していると言っても過言ではない。
米国株市場ではNYダウ、ナスダック指数などの主要指数が過去最高値圏で推移するなど強気相場の極みにあり、相対的に東京市場の出遅れは際立っていた。しかし、トランプ米政権による保護主義色を前面に押し出した通商政策に対する警戒感も根強く、米中間の貿易摩擦をはじめ世界経済へのネガティブな影響を懸念する声が、日本株の上値抑制要因として立ちはだかっていた。今回、その重石を一気に取っ払うかのような株高が投資家のマインドを大きく改善させている。
●日本株は壮大なる割安是正相場へ
市場関係者の意見もさまざまだが、基本的に先行きに対し強気な見方が優勢だ。その根拠となっているのはグローバルでみた日本株の割安感だ。
SMBC日興証券投資情報部部長の太田千尋氏は「ひとことで言えば世界の運用ニーズが高まるなか、グローバル資金が出遅れ顕著な日本株に買いを入れたということ。日米間の貿易摩擦問題についてはEUと同様に当面は“棚上げ”ということで、悪材料とはなっていない。足もとドル高・円安が加速しているが、日経平均と為替との連動性が高い点も今の強調相場を後押ししている。今後スピード調整は当然あろうが、外国人の買いは初動でこれからも続くだろう。彼らがクリスマス休暇に入るまでに日経平均はどれだけ上値を出せるか、というイメージだ」としている。くしくもこの日、9月第3週の外国人売買動向が現先合計で1兆4700億円の大量買い越しだったことが判明したが、これは太田氏の言葉を裏づけている。
ここ強気な見方を一貫させていたブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏も日本企業のファンダメンタルズに対する評価不足をポイントに挙げる。「これまで売られ過ぎていた、その修正が起こっている。全体相場が動意づいた9月第2週の時点でTOPIXベースのPERは12.8倍だった。過去を顧みると、2016年1-2月の世界同時株安、同年6月のブレグジット・ショックの時ですら13倍近辺でとどまっており、アベノミクス相場においてPER13倍は大底圏を意味する。あとはキッカケ待ちだったが、9月中旬のトランプ米大統領による対中2000億ドル分の追加関税発表が、目先の悪材料出尽くし感から買いのトリガーを引いた」(馬渕氏)としている。
●2万5000円は通過点に過ぎない
さらに、日経平均の当面の上値について、2万5000円ですら単なる通過点となる可能性があると指摘するのは松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏だ。全体相場が好調な場面でも過度に強気に傾かず、常に冷静な視点でマーケットを見る窪田氏の意見だけにインパクトがある。「(日経平均の上昇は)スピード感からは確かに行き過ぎに見えるかもしれないが、株価指標面からは全く“行き過ぎていない”。前日時点の日経225採用銘柄ベースのEPSは1733円。仮にこれを15倍すると2万5955円。つまり2万6000円ラインにほぼ到達する。15倍ではやや割高感も意識されるが、時価は2万4000円ソコソコの水準だ。仮にあと1000円上がってもファンダメンタルズ面との比較では依然として評価不足だ」という。
そして、こう付け加えた。「株式需給面から言えば、足もと個人投資家は空売りを上乗せしている状況で、逆に言えばここから踏み上げが始まるケースも考えられる」(窪田氏)。今回の上昇相場に乗り遅れた投資家にしてみれば、むしろここは売りで入って取り戻したいと考えるのが人情ともいえる。ただし、今の東京市場は“まだ割安圏にある”ということを念頭に置いておく必要はありそうだ。
●米株市場の輝きと円安のフォローウインド
現在の日本株の割安感もしくは出遅れ感は、何よりも米国株市場という強力な星が輝いているからこそともいえる。では、この米国株市場が崩れることはないのか。米国経済に詳しい第一生命経済研究所主任エコノミストの桂畑誠治氏は「10月中旬以降、米国企業の7~9月決算が始まるが総じて好調が予想される。貿易摩擦による影響をこなしての好決算となれば、株式市場にとっても業績相場継続に向けた強いシグナルとなり得る」とする。そして米株高だけでなく、ドル・円相場についても「日米の金融政策の方向性の違いは明確でトレンドとしての円安は続きそうだ」(桂畑氏)としており、米株高・円安を両輪とした日本株上昇シナリオを肯定している。
そして、強気派の筆頭は何といっても東証証券ストラテジストの大塚竜太氏だ。「目先は確かにCTAなどのトレンドフォローの高速売買で値を飛ばしている部分は否めない。しかし、本質はそんなことではない」と言い切る。大局的にみて2万4000円突破は上昇トレンドの一里塚と主張するが、その理由についても歯切れがよい。「安倍首相の念願は憲法改正、そのためにはトランプ米大統領ではないが経済政策で報い、国民の支持を得ることだ。したがって、ここから政策を総動員して日本のデフレからの完全脱却に舵を切る。個人的には来年秋の消費税引き上げも見送る可能性が高いと考えている。そして、外国人投資家も安倍首相3選をみて、おそらく同じように考えているはずだ」(大塚氏)としている。
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