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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「需給相場の扉が開く、復活のキラ星7銘柄」

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

 米中貿易摩擦の問題が売り材料として勢いを増しています。これは今後想定される米国と他の主要国との通商問題も含め、前途多難な道程を想起させ、株式市場でも買い方の立場としては“心が折れる”状況に陥りやすい場面。裏返せば、先物を絡めた売りで全体相場の下げで利を取ろうと考えるのが、普通の発想であり、事実そういったポジションを取る投資家も少なくないと思われます。相場では買いが正義で、売りが悪という区分はなく、上値がどうにも重ければ売りから入るのはひとつの投資選択ともいえます。

●大勢トレンド弱気転換への瀬戸際だが…

 ただし、既に大勢トレンドは長期下落トレンドに入ってしまったのかといえば、そうとは言えないと思います。確かに日経平均株価の週足は13週・26週移動平均線をマドを開けて下に放れた矢先で、強気にはなりようがない局面です。しかし、今年の相場は最初から上下にボラティリティが高く、目まぐるしく地合いが変わるのが特徴。今、目に見えている風景で弱気に宗旨替えするには時期尚早といえます。足もとは、週足一目均衡表では2016年11月以降の上昇相場で初めて雲に突入していますが、ここを下に抜けてくるかどうかがカギを握っていると考えています。日経平均2万1000円前後まで下げれば雲を下抜けることになり、全体相場は目先その水準を意識しての売り方と買い方のせめぎあい、という構図です。

 個別株投資も難しい局面が続きますが、行き過ぎた悲観に支配されないよう注意したいところ。文豪ゲーテいわく「今これ以上骨を折っても無駄だ。薔薇ならば花が咲くだろう」。これは株式投資においても至言で、いい意味での開き直りが必要な時もあります。貿易摩擦の問題は一朝一夕に雲散霧消するような類いのネガティブ材料ではなく、その意味では大変厄介ですが、この問題がくすぶる限りずっと相場は下値模索、ということにはならないのです。2018年相場は基本的にリスク管理も含め短期売買で臨むのが実践的であると主張してきましたが、投資のコンセプトとして忘れてならないのは、時の流れに任せる勇気も勝ち組投資家の重要な資質であるということです。

●株安の根源は貿易摩擦問題ではなく需給悪

 今の相場が厳しい向かい風に晒されているのは事実とはいえ、本当のところは外部環境が下落相場を主導しているのではなく、株安の根源は株式需給悪によるものです。待てば海路の日和ありといいますが、待つのは“貿易摩擦問題の落としどころ”ではなく、“需給悪の改善”です。したがって、これから先にもしセリングクライマックス的な動きがあれば、短期的にそこは敢然と買い向かって正解となるはずです。

 7月6日から米国は輸入する中国製品500億ドル相当のうち、340億ドルを対象に制裁関税をかける計画、そして中国側もこれに対抗して同日、同規模の報復関税を米国産大豆や牛肉などの農産物などにかける方針です。さらにトランプ米大統領は、中国側がその気なら喧嘩上等といわんばかりに、これに追加して新たに2000億ドル相当の製品を対象に関税をかけると強硬姿勢をみせており、マスコミ的には貿易戦争勃発という絵図が浮かび上がります。

 このまま両国間の争いがエスカレートしていった場合、共倒れとなることは明白であり、7月6日の件は回避できないとしても、その後の関税合戦についてはどこかで落としどころを探るシナリオが現実的と個人的には考えています。しかし何と言っても米国第一主義のためなら、太陽不在の北風オンリー政策を貫き通すトランプ大統領のこと、妥協点が見つかる蓋然性は必ずしも高いとはいえません。

 つまり、外部環境的に株式市場の風向きが追い風に変わることは当面ないと考えた方がよさそうです。繰り返しになりますが、相場のカギを握るのは需給。今年の東京市場は、地合いが悪化しても追い証(追加保証金の差し入れ)発生に伴う投げが出る寸前でギリギリ立ち直るパターンを繰り返してきたのが特徴ですが、それが荷もたれ感につながり吹っ切れない相場の要因ともなっていました。当コーナーでも投資スタンスとして腹五分目、半身の構えを推奨してきたのは、キャッシュポジションを高めておくことで、投げ売りが発生した際の仕切り直し相場に対応することを念頭に置いたもの。“トランプ通商問題”が横たわっている以上、今後もそのスタンスは維持するべきと思います。

●魅力的な銘柄はまだ数多い、やはり需給がカギに

 「買いたい銘柄がなくなったら売れ」というのが古くからマーケットに伝わる格言。すなわち、内容は素晴らしくても株価に既に織り込まれていて伸び切った感のある銘柄ばかりになってしまえば、業績相場の色彩は失われます。しかし、今の株式市場を眺めて魅力的な銘柄が見当たらないかといえば、全くそういうことではありません。ここから上値追いがイメージできる銘柄はたくさん存在しています。

 ここでの銘柄選別の要諦は、全体相場が需給悪なら個別には需給面で優位性のある銘柄に焦点を絞るということです。例えば、今の地合いは信用取引の買い残の重い銘柄が売りのターゲットとなりやすい。逆の見方をすれば、買い残が軽い銘柄もしくは売り買いが拮抗している銘柄については、物色人気化する素地が通常よりも高まっていることになります。

【マネックスは信用取組に着目、上値に可能性】

 前回6月20日配信の「トランプ乱気流、個別株“最強の選択肢”は」で取り上げた銘柄では、マネックスグループ <8698> が商いを膨らませ一時690円台まで上値を伸ばしましたが、まだまだ上昇余地を内包していると思います。株式市場低迷による月次の売買代金減少という逆風は意識されますが、同社株の場合は仮想通貨関連での展開力が株高の原動力であり、押し目形成場面は拾い場となるケースが考えられます。仮想通貨交換業者の「コインチェック」を買収し、仮想通貨分野に積極参入したことが手掛かり材料。特に、金融庁が改正資金決済法に基づく業務改善命令を仮想通貨業者に相次いで発令するなかで、逆に同社の安定感が輝きを放ちます。

 金融庁は規制する法律についても、現在の改正資金決済法から金融商品取引法に移行することを検討しているとも伝えられ、これを経て仮想通貨ETFの誕生となれば一層追い風は強まるとの思惑もあるようです。株価的にはやはり需給面がポイント。信用取組をみると、6月29日申し込み現在で売り残・買い残とも減少したものの、信用倍率は1.28倍と依然として拮抗しており、日証金では株不足状態にあります。需給相場の素地十分です。

【買い残カラカラのFTグループと夢の街】

 また、法人向け中心に電話機などの通信関連機器やLED照明などを販売するエフティグループ <2763> [JQ]が強力な上値追いトレンドを構築。ここにきて値を飛ばしていますが、この異質の強さには続きがありそうです。中小企業向けでは時流を映して監視カメラなどが伸びているほか、個人向けでは光回線などネット接続サービスが収益に寄与しています。なお、同社の筆頭株主は光通信 <9435> です。業績面では19年3月期営業利益が53億円と前期比2ケタ伸長を見込んでおり、3%強の高配当利回りがポイント。信用買い残は枯れた状態で直近は10万6000株に過ぎず、1日当たりの売買高がこれを上回る状況でほとんど重荷とはなっていません。

 夢の街創造委員会 <2484> [JQ]も急激な切り返し局面にあります。同社株も買い残が枯れ切った状態にあり、売り残がこれを上回っていることで信用倍率は0.3倍、日証金では逆日歩がついています。ネットを経由して飲食物の出前を受け付ける“出前サイト”を展開するほか、ネットスーパーも手掛けており、働き方改革による時短ニーズなどを背景として収益環境は中期的な追い風が意識されます。18年8月期第3四半期累計(17年9月-18年5月)の営業利益は5億6000万円と前期比2ケタ減となりましたが、これは広告コストの上昇によるもの。トップライン(売上高)は前期比5%増と堅調であり、出前事業は加盟店の拡大が続いています。株主優待も魅力のひとつです。

【オリンピックは信用倍率1倍、まんだらけに意外性】

 Olympicグループ <8289> は6月中旬に連続ストップ高に買われ、その後は800円近辺を下限に売り買いを交錯させています。同社傘下のサイクルオリンピックが販売する電池不要の「FREE POWER」がテレビ番組で紹介されたことが突飛高の背景。マドを開けた状態でのもみ合いは、買いで入るにも機動的な売買が求められ神経を使うところですが、29日申し込み現在で信用倍率は1.12倍と売り買いほぼ同水準で需給相場の思惑。有配企業でありながら、PBR0.8倍弱とバリュー株としての側面も有し、注目しておきたい銘柄です。

 マーケット目線ではノーマーク銘柄ながら、まんだらけ <2652> [東証2]にも意外性があります。日々の売買高を見る限り流動性には乏しいものの、信用買い残はほとんど積まれていない状態で売り圧力は限定的。PER10倍、PBR0.6倍台は純粋に割安感が際立っています。漫画の古書販売を手掛けるほか、キャラクターグッズや玩具販売も手掛け、ネット通販分野を開拓しています。訪日外国人による日本のレトロ玩具に対する人気は引き続き旺盛のようで、インバウンド関連の切り口も見逃せません。ジャパニーズ・サブカルチャーの中軸に位置している銘柄ともいえ、中期的な成長期待は強い。世界80ヵ国を超える国に通信販売を展開している「まんだらけSAHRA」が業績を支えています。

【材料満載のリネット、ネットワンは国策銘柄】

 このほか、リネットジャパングループ <3556> [東証M]の時価近辺は買い場となっている公算が大きいと思います。今年5月以降は上げ下げを繰り返しながらも25日移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動を形成しており、このトレンドが続きそうです。ネット専業の中古品買い取り・販売を展開しており、メルカリ <4385> [東証M]の上場でリユース関連銘柄に視線が向くなか、同社株にもフォローの風が吹いています。店舗、ネットを合計した国内リユース市場の規模は既に2兆円を上回っていると推定され、今後もフリマアプリの成長が牽引役となって、さらに拡大基調を強めることが予想されます。

 同社は経済成長著しいカンボジアでのファイナンス事業にも注力、SBIホールディングス <8473> と連携して金融、自動車、人材への投資を推進している点がポイント。直近では東京都内の約66万事業者向けに、業務用の使用済パソコンなどの宅配便回収サービスを開始したことも発表しています。

 最後にネットワンシステムズ <7518> を取り上げます。ネットワーク環境の構築に強みを持ち、ソリューションサービス提供や、セキュリティーを重視したクラウドシステムを展開し、IoT時代の到来で業績飛躍の可能性を内包しています。サイバー攻撃については、年々深刻の度を増すなかで世界的にその対応が喫緊の課題となっており、やや遅れ気味の日本も今年度はサイバーセキュリティー に727億円の政府予算を投入、産官学の連携を強化して向こう3年間を見据えた次期サイバーセキュリティー戦略を推進する構えにあります。そのなか、同社は民間企業だけでなく、官公庁や自治体からの受注実績が豊富で、有力関連株としての認識が市場でも進みそうです。株価は5日・25日移動平均線が収れんする1870円近辺で売り買いを交錯、ここは強気に対処したいところです。

(7月4日記、隔週水曜日掲載)

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