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【特集】カナミックN Research Memo(1):2018年9月期第2四半期は大幅な増収増益、クラウドサービスが順調に成長

カナミックN <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

カナミックネットワーク<3939>は、医療・介護・子育て関連情報サービスをクラウドで提供する会社である。キャッチコピーは「人生を抱きしめるクラウド」、子育てから介護までをICT活用により生き生きと活性化させたいという思いが込められている。経営理念は「超高齢社会の地域包括ケアをクラウドで支える」。そのサービスの特徴は、特定地域の中で、医療と介護の枠を越え、法人や職種の枠を越えて情報共有できるプラットフォームを提供している点にあり、国が推進する地域包括ケアの具現化に不可欠なものである。現在701地域※で導入されており、地域全体のプラットフォーム導入数では圧倒的な業界No.1である。2016年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場した。

※厚生労働省が想定する地域包括ケアの人口3万人程度の「中学校区」


1. 事業概要
同社が手掛けるサービスは、「カナミッククラウドサービス」と「コンテンツサービス」と「その他サービス」の3つに分類され、主力のクラウドサービスが売上げの8割以上を占める。同社のクラウドサービスは「情報共有プラットフォーム」と「介護業務管理システム」の2階層から構成され、相互に連携して地域内での医療・介護連携を支援する点に特長がある。東京大学との共同研究により開発され、千葉県柏市の地域包括ケアで実証されたモデル(柏モデル)の中で磨かれてきたという点、特許「介護支援システム及び介護支援プログラム(特許番号4658225号)」を取得している点で、この仕組みにおける実効性及び独創性は折り紙付きだ。クラウドサービスは、典型的なストックビジネスであり、売上げが安定して積み上がり、損益分岐点を超えた現在、収益性が非常に高いことが特徴である。現在、既存のクラウドサービスを基盤としたプラットフォーム化が進行中であり、AIやIoT等を含むシステム連携、FinTechとの連携、シェアリングエコノミーとの連携が描かれている。

2. 業績動向
2018年9月期第2四半期の業績は、売上高が前年同期比21.0%増の762百万円、営業利益が同33.0%増の226百万円、経常利益が同33.1%増の226百万円、四半期純利益が同37.4%増の146百万円と大幅な増収増益となった。カナミッククラウドサービスの導入地域が前期末比85地域増え、有料ユーザーID数も5,875増えたことで、同サービス売上高も前年同期比16.7%増となった。経常利益の伸びは前年同期比で33.1%増と増収率よりもさらに高い。収益性の高いクラウド事業の増収効果が販管費の伸びを上回った。事業構造の特長としては、原価率が15.9%と低く、経常利益率29.7%(2018年9月期第2四半期)と収益性が高い。

3. 業績見通し
2018年9月期通期の業績は、売上高が前期比16.1%増の1,500百万円、営業利益が同9.0%増の360百万円、経常利益が同0.4%増の332百万円、当期純利益が同3.0%増の230百万円と増収増益の期初予想を据え置く。売上高に関しては、主力のクラウドサービスが引き続き成長する予想。売上予想1,500百万円に対する第2四半期進捗率は50.8%に達しており、既存顧客の売上がベースとなるストックビジネスの特性を考えると、上振れが必至の状況だ。経常利益に関しては、中期的な成長のための投資・経費を見込んでおり、期初の微増予想を変えていない。開発面では、プラットフォームに関する各種開発や旭川医科大学との共同研究など研究開発にも投資を増やす。営業面でも、営業人員の採用を強化する方針だ。既に経常利益の第2四半期進捗率で68.3%まで達しているが、下期は投資を加速するため着地は予想数値に近づくだろう。

4. 成長戦略
同社は、2018年3月、国立旭川医科大学に共同研究講座を設置し、「IoTクラウド利用のグローバルモデル構築」を目指すことを発表した。旭川医科大学は以前から遠隔医療に取り組んできたこの分野の草分け。同社はこの研究に必要な遠隔医療・看護支援等に関する新たな情報共有項目や支援システムに関する研究開発の役割等を担う。旭川医科大学の課題は、日本の地方都市に共通しており、今後の横展開の余地が大きいモデルとして期待が高まる。

2017年11月に外国人技能実習制度の対象職種に介護職が追加される法改正が行われ、介護現場に外国人が増え始めている。一方で外国人にとっても、介護事業者にとっても課題となるのは日本語の問題だ。同社は2018年4月に5ヶ国語(日本語、英語、中国語、ベトナム語、ビルマ(ミャンマー)語)に対応したタブレット型「介護記録システム」をリリースした。ボタンを選ぶだけで、日本人でも外国人でも国籍を問わず標準化・共通化した介護記録の運用が実現できる。同社の基本戦略であるプラットフォーム化が具現化した一例と言えるだろう。

■Key Points
・地域の医療・介護従事者の仕事を重層的に支えるプラットフォームをクラウドで提供
・2018年9月期第2四半期は大幅な増収増益、クラウドサービスが順調に成長
・旭川医科大学との共同研究で医療介護連携の地方型モデル構築を開始。多言語対応のタブレット型「介護記録システム」リリース

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)

《NB》

 提供:フィスコ

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