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2018年05月24日18時00分

【特集】「自転車シェアリングが公共交通手段に成長したわけ」 ドコモ・バイクシェア 清水貴司取締役に聞く! <直撃Q&A>

通勤で自転車シェアリングを活用する人が増えている。
 企業や個人が所有する場所や乗り物などを、不特定多数の人々とインターネット上のプラットフォームを介して共有するシェアリング・エコノミー(シェア経済)が、さまざまな領域に広がっている。消費スタイルの変化による“所有から共有へ”の流れはカーシェアリングや民泊にとどまらず、最近は自転車でもシェアをする光景を多くみかけるようになった。公共交通手段といえるまでに成長した自転車シェアリングにおいて、国内の先駆者でNTTドコモ<9437>子会社であるドコモ・バイクシェアの清水貴司取締役に、需要が拡大している背景や今後の展開などを聞いた。

Q1 自転車シェアリング事業に乗り出した経緯を教えて下さい

清水 携帯電話事業で培った技術やノウハウを活用した事業ができないかを検討するなか、環境・エコロジー事業の一環として2010年頃から自転車シェアリングの取り組みをスタートしました。

 レンタルサイクルなど従来の自転車の貸し借りは、有人の窓口を設置するか、ドッグ型といわれる機械に返すものが主流で、フレキシブルに設置することが難しく、また設備投資や維持費の負担が大きかったため、ほとんどのサービスが自転車を借りた場所に戻すモデルとなっていました。そこで通信で使われるツールや技術を生かして貸し出し・返却の仕組みを実現することで、いつでもどこでも自転車を気軽に借りられるシステムを提供できるのではと考えました。当時、自転車シェアリング事業者を募集していた横浜市と共同で11年からサービスを開始し、その後、各自治体などと連携するかたちで事業を拡大、18年3月末時点でサービスの提供エリアは全国25拠点、サイクルポート(貸し出し拠点)は約700カ所、自転車の台数は約7300台、登録会員数(直営分のみ)は34万人に達しています。

Q2 サービスの特徴および強みは何ですか?

清水 自転車シェアリング事業を行ううえで重要なことは、放置自転車問題の観点から必ず決められた場所に確実に自転車が返却されなければならないということです。これを実現するために、ブルートゥースを使った簡易設置型のビーコンをサイクルポート側に設け、自転車側にはアンテナを装着することで駐輪管理をしています。これはブルートゥースの通信が成立した場合にのみ自転車が返却されたと認識する仕組みで、GPSに比べて高い精度の駐輪管理システムを確立することができます。

 ユーザーの利便性という点で、登録した交通系ICカードやFelica(フェリカ)対応の携帯電話をかざすだけで開錠し、自転車を利用できる方法を取り入れています。また、万が一の事故に備えて保険会社と保障の仕組みを開発し、料金体系のなかに組み込んでいます。これにより、いつでもどこでも自転車を気軽に安心して借りることができ、人を介さなくても貸し出し・返却ができるシステムを構築しています。利用プランとしては、個人向けの1回会員(最初の30分が150円で、以降30分ごとに100円)や1日パス(1500円)、法人向けなど各種用意しています。(上記料金は東京の場合)

 このほか、工事不要で駐輪場の設置が可能なことも大きな特徴のひとつです。サイクルポートで使用する機材は電源を必要とせず、設置時の工事や配線なども不要なことから、イベント開催時などの際に臨機応変に設置・撤去することができ、最近はこうした需要が増えています。また、すぐに設置できるという特性を生かし、震災の時などには避難所にサイクルポートを設置し、多くの被災者の方に利用していただいたこともあります。

Q3 利用状況およびユーザーの利用目的を教えて下さい

清水 11年度にサービスを開始した当初は年間の利用回数が4万回程度だったのですが、17年度には470万回と前年度比200%以上のスピードで成長しており、この需要を生み出しているのが通勤での利用です。通勤での利用といえば、これまでは自宅にある自転車を最寄り駅まで乗っていくという使い方が一般的でしたが、自転車シェアリングでは会社の最寄り駅から会社まで利用する方が増えています。タクシーなどに乗るほどではないけれど、歩くには少し遠いぐらいの距離を移動するのに適したサービスとして浸透しつつあるようです。

 通勤での利用は朝夕に集中しますが、日中ではビジネスでの利用が増えています。企業が営業用などとして自社で自転車を保有する場合、購入費用や保険代、メンテナンスなどが必要となりますが、自転車シェアリングを活用するとこうした負担をなくすことができます。また、決まった場所に返却する必要がないため、帰着地を自由に選ぶことができるといったメリットも注目されているようです。例えば、クライアント先に機器の修理などで訪問する保守業務や、フードデリバリーサービスでの配達の移動手段として利用されています。

Q4 訪日外国人旅行者の利用も増えているようですね

清水 主な要因としては、ホテルのフロントでの1日パスなど各種利用券の取り扱いや、旅行会社のツアーパッケーにあらかじめ組み込まれているケースが増えていることが挙げられます。また、訪日向けサイトなどを運営する企業と業務提携するなど、訪日外国人をターゲットとした自転車の利用促進に向けてパートナー企業との連携拡大に取り組んでいる効果などもあるとみています。

Q5 ソフトバンクグループ<9984>やメルカリ<4385>など他社の参入をどうみていますか?

清水 ライバルとなるので楽観視はできませんが、それよりもむしろ知名度の高い企業が参入することで、自転車シェアリングの認知度向上や市場拡大など業界の活性化につながるとみています。海外と比べればまだまだサービスとして広がっているとは言い難い状況なので、他社と切磋琢磨しながら成長していければと思っています。

Q6 今後の事業展開を教えて下さい

清水 地域に密着したサービスとして各自治体などとコミュケーションを図りながら、サイクルポートの設置場所を開拓し、既存エリアでは自転車の適正な配置を行うことで、利用回数を伸ばしていきたいと考えています。また、親会社であるNTTドコモが手掛けるサービスと連携するかたちでの取り組みなども進めていきたいと思っています。

 東京五輪に向けて訪日外国人がさらに増加することが予想されるなか、外国人にとってもっと簡単に使いやすくするための方法や認知度のさらなる向上は今後の検討課題のひとつです。さらに最近では商業施設や民泊施設などからサイクルポート設置の問い合わせが増えており、こうした需要にも対応していきます。

(聞き手・三宅和仁)

<プロフィール>
●清水 貴司(しみず・たかし)
 取締役経営企画部長。1998年4月にNTTドコモに入社し、営業部門で携帯電話に関する販売企画や代理店営業、また経営企画部門や宣伝部門において提携案件等を担当。2017年より現職において経営戦略全般やパートナーとの協業案件等に従事。

出所:みんなの株式(minkabu PRESS)
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