【特集】帰ってきた「原油高」――再びの上昇WTI、そして“恩恵銘柄” <株探トップ特集>
19日、NY原油は一時1バレル=69.50ドルをつけ、3年半ぶりの水準まで上昇した。2014年から16年にかけての、原油安の時代は終焉したとの見方も出ている。東京株式市場の原油高メリット株を探った。
―地政学リスク再燃が上昇に拍車、サウジアラムコIPO思惑も下支え―
原油価格 の上昇とともに、資源エネルギー関連株が再浮上基調を強めている。産油国間の協調減産により需給は引き締まり基調にあるほか、シリア、イランといった中東の地政学リスクの高まりが原油価格上昇に拍車をかけている。とりわけ5月以降、原油相場を巡る重要イベントが続き、原油市場は思惑含みの展開が見込める。株式市場には「14年から16年にかけての原油低迷状態は完全に終わり、資源エネルギー関連株は新局面を迎えた」との見方も出ている。
●原油相場は半値戻し達成、中東の地政学リスク強まる
原油価格が上昇基調を強めている。原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は19日に、一時1バレル=69.50ドル台と14年11月以来の水準に上昇。70ドル乗せが目前に迫った。14年から16年にかけ、原油相場はサウジアラビアなど主要産油国の増産を背景に「逆オイルショック」と呼ばれる厳しい下げを演じたことは、記憶に新しい。具体的には、WTI価格は14年6月の107ドル台が16年2月には26ドル台まで7割強下落した。しかし、その後、原油は着実に下値を切り上げ、今月には70ドル目前まで上昇。チャート上は、原油価格は下げ幅の半値戻しを達成した。
この原油上昇の要因として、「サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非OPEC国による協調減産が効いたこと」や「世界景気の拡大で原油需要が堅調なこと」、それに「米英仏によるシリアへの空爆やロシアへの経済制裁による地政学リスクが高まったこと」などを挙げる声が多い。
●イラン再制裁判断の5月12日接近、原油80ドル乗せの思惑も
さらに、足もとで高い関心を呼んでいるのがイラン動向だ。核合意に基づく対イラン制裁解除に対して、トランプ米大統領は修正がなければ合意から撤退する姿勢を示している。この場合、米国はイランへの制裁を再発動することが予想され、イランの原油輸出が落ち込むことが見込まれている。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「米国がイラン再制裁に踏み切れば原油高要因となる」と予測する。そんななか、トランプ大統領がイラン制裁を再開するかを決める期限である5月12日が間近に迫ってきた。米国がイランの再制裁に踏み切った場合、WTI価格は80ドル意識の展開となる可能性も指摘されている。
加えて、6月21~22日にかけてOPEC総会が予定されている。このOPEC総会では協調減産の行方が注目されそうだ。さらに、サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」の株式上場(IPO)に絡む思惑も依然くすぶっている。今年とも噂されるサウジアラムコのIPOに関して、年内の国外におけるIPOは厳しいとの見方がある。ただ、「時期は別にしてもサウジアラビアはサウジアラムコのIPOに向けて、原油価格は高めに維持しておきたいはず」(芥田氏)という。今後、夏場のドライブシーズンを迎えガソリン需要も高まるだけに、原油高に向けた期待は強い。
●LNG絡みで日揮、日バルカー、再生エネでウエストHD、グリムスなど
こうした思惑も背景に、市場には「相場シナリオも、70~80ドル台の原油価格を視野に入れたものに見直す必要があるのではないか」(アナリスト)との見方が出ている。国際石油開発帝石 <1605> の18年3月期の想定原油レート(北海ブレント)は57.3ドルに置かれており、これが19年3月期は60ドル台に見直されるだけでも増益効果が見込める。
石油元売り系では、JXTGホールディングス <5020> やコスモエネルギーホールディングス <5021> に加え、東亜石油 <5008> [東証2]、富士興産 <5009> などの値動きが良くなっている。資源開発絡みでは、大型LNGプラントに対する投資再開の動きが出ており、日揮 <1963> や千代田化工建設 <6366> 、それに東洋エンジニアリング <6330> といった大手プラント株は上昇基調を強めている。
LNG運搬船では日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> 、川崎汽船 <9107> など。LNG関連では、ニチアス <5393> やトーヨーカネツ <6369> 、新興プランテック <6379> 、オーバル <7727> 、日本バルカー工業 <7995> などにも注目。エネルギーに強い大手商社株への期待も膨らんでおり、伊藤忠商事 <8001> や住友商事 <8053> 、双日 <2768> 、第一実業 <8059> などに上昇思惑が強まっている。
さらに、原油価格の上昇は太陽光や風力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーには追い風となる。ウエストホールディングス <1407> [JQ]やサニックス <4651> 、フェローテックホールディングス <6890> [JQ]、グリムス <3150> [JQ]、エフオン <9514> 、いちご <2337> などへの再評価が期待される。
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